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冬雨吟
誰知凍蝶愁
誰解盲猫夢
夜雨両心寒
酔吟同苦痛
冬の雨に吟ず
誰が知る凍蝶の愁ひ
誰が解く盲猫の夢
夜雨 両心寒からん
酔吟 苦痛を同じうす
冬の雨 ....
左目の水晶体に封じ込められた
淡い翡翠色の少年人魚は
ぴくりぴくりと蠢動しつつ
お前を挑発しつづけるだらう
覚えておいで
人魚は七回脱皮することを
そのたびに
空は蒼く痙攣するだらう ....
にゃっ、にゃっ
にゃっ、にゃっ
窓の外から子猫の鳴き声
にゃっ、にゃっ
にゃっ、にゃっ
遠慮深げな、物問ひたげな
「先生、夜分に恐れ入ります」
子供の神妙な声がする
「母が ....
「今日のやうにじめじめしてゐますと出ますので」
晩秋のたそがれ刻、男は陰気に呟いた。
「この榎の根元によく出ますな」
出るかと聞くと、出ると言ふ。今まで何度も見たと言ふ。
「誰でも初めは茸と間 ....
紅珊瑚のゆりかごの中で
柔らかな月が眠ってゐます
美しい薔薇が月にキスして・・・
(カステラの香り!)
薔薇に棘などありません
棘は一つ残らず
詩人の心臓が受け止めましたから
柔 ....
公園で野良猫と遊んでゐたら、見知らぬ爺さんから声をかけられた「こんにちは!」
軽く会釈だけ返すと、満面の笑みを浮かべながら、また「こんにちは!」
孫と思しき青年が、私に何度も頭を下げてゐたが、爺さ ....
毎週末、私は長期入院してゐる祖母を見舞ふ。
今朝の祖母は、あまり調子が良くない様子で、口数も少なかった。
私は、いつものやうに、ポータブルトイレの処理をしたり、入れ歯を磨いたり。
一通り世話 ....
湯せんにかけて
やはらかくなった冬の月に
銀河のアラザンをちらし
薔薇色の粉砂糖をまぶし
僕がひとかじり
君がひとかじり
微炭酸の夢が
恋人たちの舌の上を
ゆるりゆるりと ....
或る若き詩人に
§
意味のある人生とは何でせう?
食べて、仕事して、セックスして、寝る。
これこそが、意味のある人生です。
詩は無意味です。
詩なんか、なくとも生きてゆけ ....
ショッピングセンターの、ひとけの無い屋上駐車場に、子どものすすり泣く声が響いてゐる。
・・・と言ふと何やら怪談めいて聞こえるが、そんなロマンチックな話しではない。
誰が泣いてゐるのかと思へば、可愛 ....
冬めきてラディゲ読む夜の重さかな
幻滅と悔い残してや恋の冬
この星に我ひとりなり冬の雨
黙々と落ち葉掻きやる白痴かな
吸ひ殻と誇り捨てたり枯れむぐら
老媼の叫び響くや空ッ ....
「ちょっとお聞きしますが・・・」
生まれて初めて職務質問を受けた。
近所にある、簡易郵便局に寄った帰りのことである。
先日、防災用のごく小さな貯水池で、子供が溺れて死んだのだと言ふ。まだ、事件か ....
先達て、めづらしくチャットをした
WEB詩人の集まりだった
しばらく話してゐたら、かう言はれた
「三州さんは病気ぢゃないから」
ちょっと待てよ
だから何だ?
詩と、病気とは、何の関係も無い ....
月がポキリと折れてゐる
誰かが失恋したやうだ
静粛に!
静粛に!
詩人が失恋したぞ!
あいつめ、どんな詩を書くだらう?
恋が終はりかけると、きっと彼が現れる
優美なアンドロギュノ ....
公園の大きな吊り橋を渡りきったところに、イカの握り寿司が一貫置いてあった
ちょこんと、二ツ揃へて、地面に置いてあった
そりゃ好物だけどね
せめて小皿に載ってりゃな
しゃがみ込んで、つついてみる ....