あのひとは
とうとう
「すき」
とは言わなかった
すき
が大切なことと考えるひとだったのか
それとも
舗装された道路は
どこまでもつづく
中央線
見つめて
音楽は
....
手首の傷も やがてきえる
まん中はねらえなかった
だけど
甘えてただけなんておもわない
誰にも触れさせない
9階からみた地面は
おもったよりも近いようで
なみださえでなかったんだ ....
白いかがやき!
光のなかで 男は
悲しみに暮れる。
薔薇はまっすぐに
男へ 伸びる。
救いの手!
その茎には棘がある、
まるで女の指のよう。
天空に 咲き誇る ....
青い目の太っちょネコは、ちいさくまあるい眠りからさめると、
弓をひくような格好で伸びをしたまま三日月になって、
別れをつげることなく真夜中の空へのぼった。
ぼくは満足 ....
鍋を洗うのと
お風呂のふたを洗うのが
あんまり好きじゃないです。
風がふいた
ふうわり さあ さあ
草がゆれた
君をみつけた
「なにしてるの?」って聞かれたらなんて言おう
風はまだ ふいていて
さあ さあ さあ
僕 ....
透明な筆箱につめた夢は
いつも僕のポケットに入っていた
どこへでも持って行ったし
どこででも開く事が出来た
だのにいつの間に
筆箱を使わない年齢になったんだろう
気が付くと筆箱はどこに ....
うたたねをして目覚めると
一瞬 {ルビ黄金色=こがねいろ}のかぶと虫が
木目の卓上を這っていった
数日前
夕食を共にした友と
かぶと虫の話をしていた
「 かぶと虫を探さなく ....
清い流れに
私のかいなを浸す
ふり向くと
そこには笑顔のウテナがいた
流れは岩を削って蛇行している
僕らが竹笹の舟を流したら
海までたどり付くかな
僕ら
まるで子どもみたい
....
真夜中のコンビ二エンスストアに
いそいで駆けこんだら
あたたかい、垢じみた
猫の毛の匂いがした
うす茶色の肌とうす茶色の目をした
店員の青年がこち ....
冷たい
クリーム
なのがヤバイ
夜に忍び寄る
密やかな欲望
今日は買わなかった
だって我慢ができなくなるから
冷凍庫を何度も覗き込み
ため息をつく
頭の中はそればかり
ああどうして ....
パンに トマト ぬるぜ
カタルーニャ式 だぜ これ
オリーブオイル かける よ
バージン エクストラ です よ
たまご も 焼いちゃう
べーこん イベリコ豚 だよ
....
僕が天文学者だったら
と
その星帯の向こうの
カロンを指差しながら
あたしを見た
あたしは
冥王星のあなたの側で
足をぶらぶらして
そんなに遠いんか
と
笑 ....
夜になると風が出て
{ルビ毬栗=いがぐり}は落ちてゐた
次々と
加速されて
硬く冷たい実が
ぱらぱらといふよりは
すぽすぽと黒土にはまりこむやうに
降つてゐた
流 ....
昆布の匂いがする、と
おんなの言うままに
おとこはそっと確かめてみる
漁師町で育ったおんなは
季節ごとの海の匂いを
知っている
おとこは
ただなんとなく海がすき、とい ....
今日の夕日は
今にも落ちそうな
線香花火のよう
ポッテリふくふく
ジラジラ燃えて
せみしぐれ
ピタリと止まる
どこかで指揮者が合図した
庭の緑がそっと揺れ
ああ暑さも少し楽に ....
空間が歪んでいる
時間が熔けて耳から流れ出る
血と肉片の雨に刻印された地に生えた
悲願の樹の歌を聞く者がいない
欲望の風が吹きすさび翼は折れそうだ
叡智 ....
金魚のいなくなった水槽
水だけが循環している
もともと
おしゃべりな生き物ではなかったけど
少しだけ部屋が静かになった気がするのは
名を呼びかける
右上がりの私の声
青く発光する ....
その墓には同じ苗字を持つ男女の名が記されていたどちらもJr.でありきっと兄妹だったのだろう二人は同じ日に死んで同じ墓に入ったのだからずっと一緒に長く暮らしたのだろう、しかし奇妙なことに父親と母親の名は ....
夕暮れ近くまで二人は水浴びをしていた浮かび上がる黒い影と真っ赤に染まりながら滴り落ちる水。
水を浴びるたびに鳥肌がたったけど嫌な感じではなかった外は生暖かくて夕焼けは燃えるように真っ赤。お父さんが雌 ....
放課後には、
音楽室から聴こえる
ソプラノが
一日の中で一番
しっくりはまる少女、何処か夕暮れに似た、
朝には
誰にも触れられていない、
まだチョークの匂いすらしない教室でひとり
....
鈍よりと 鈍くうねる雲が 晴れた日の青空を見ないように
目の端々に次々と映っては消える発電所や川や小さなアパート群を幾つ越えても
君を見ることは叶わない
言葉殺しの使い魔が 次々と僕の口 ....
長い間
{ルビ棚=たな}に放りこまれたままの
うす汚れたきりんのぬいぐるみ
{ルビ行方=ゆくえ}知らずの持ち主に
忘れられていようとも
ぬいぐるみのきりちゃんはいつも
放置され ....
やがて空から
金平糖が降り始めました
おんなのこ達はうれしそうに
てのひらを広げ
中にはスカートですくっているこもいます
王様は銀のスプーンで少しずつ口に運ぶし
乞食は必死に袋につめていま ....
ピアニストの繊細な指だ
白い鍵盤をすべってゆく
まるで水鳥の夢見る羽ばたきにも似た
あるいは
まだ見ぬ色彩を生み出す画家の
狂おしいまでにあざやかな指先
{ルビ天地=あめつち}を踊る風の曲 ....
地球を動かして
昼夜のスイッチは目まぐるしい
窓から眺めてた青空が不意に宇宙に変わったり
天体を流れるエーテルに頬が湿る
この時は加速しているようで
ほんとはもう止まっている
どこ ....
とうきょうの ひとすみでまつ アラビアの
まほうみたいな あなたのことを
溺れるブルー
ムーンブルー
波間に歌うイルカは液体になり
わーぷして あいにきたんだ し くるしい
....
紫蘇濡らし髪を濡らして女かな
鐘の音がひときは澄んで響いてゐる
高原の牧場
風は爽涼として
日は明るく照つてゐる
ここに一頭
健康優良の乳牛がゐる
乳が溜まつて乳房が張るものだから
たまらずク ....
あ
味のしない
味のしないチューインガム
味のしない味のしないチューインガム
味のしない味のしない味のしないチューインガム
味のしない味のしない味のしない味のしないチューインガム
味の ....
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