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朝風呂が好きだった
その朝もおまえは
俺たちの小さな家の小さな風呂に
窮屈そうに仰向けになって
顔を沈めて
水の中で
目は見開いて
くちびるが
SEE YOU って
....
マリーゴールドと
マーガレットの区別がつかない
ツバキとツツジを間違えて
笑われてしまう
アヤメとカキツバタにいたっては
はなっから諦観の境地で
でもそれはちょうど
パスカルとサルトルを ....
手のひらに虫の息
丸い黒曜石の瞳は虚ろ
彼の本分は
飛ぶ事ではなく
鳴ききる事だからか
若草色の翅脈を透かした羽は
すり切れる事もなく
黒い前胸に刻まれた金糸も鮮やかに
腹の手風琴も今 ....
あなたがいなくなってから
私の書く詩は
あったかくなったと
ひとが言う
あなたに向けられなかった
優しいきもちは
今になって
紙の上に溢れている
滝のように
伝えるべ ....
頭の上に
鳥が卵を落としていった
やがて卵は孵り
駅が産まれた
列車が到着しても
人のざわめきもない
さびしい駅だった
かすかに潮の香りのする
海沿いの駅だった
その重さで首 ....
落ち葉の中に
紛れ込んだスズメは
保護色の枯葉を
ホームグラウンドとして
はしやぎ回つてゐる
いくら喚いても
掻き鳴らされる
落ち葉の
大仰な音には
自分の声すら聞 ....
僕は犬です、わんわん
しがない犬です
一度主人を失いました
僕はもう仔犬ではなかったから
僕は犬です、わんわん
しがない犬です
先日野良の一員になり
金属に怯えるようになりました
....
女にふられたので、
好きで好きでたまらない女にふられたので、
砂漠へ行って死のうと、
そのままとかげとかハゲワシだとかに、
食われてしまおうと、
十月の運動会で俺は考えた。
町内会のかけっ ....
コンクリートの塀に
一匹の蝶が来て留る
この目の覚める艶やかさは
一体どこから来たのだ
これがこの世の反映だなんて
私は信じない
むしろこれは世にないものだ
....
ぼくの母さんは世界の果てで
アイスクリンを売っている
センサスによれば国道999号の平均交通量は
過去最高の1万台に達したらしい
世も末だねと母さんは顔をしかめるだろう
これほど ....
日曜の午後
立川のカレー屋で行われる結婚式で
新郎新婦に贈る小さい花束を傍らに
大船駅から乗った東海道線に揺られている
向かいの席に座った空色の服の女は
携帯電話を鞄の上に持っ ....
ぼぼ
ぼぼってなんだか
可愛らしい
でも
ちょっと恥ずかしいことば
りんご
秋は実りの季節だね
りんご
とか
いい感じ
りんご
って禁断の果実
アダ ....
今日、貴方はこの世界を旅立ちました
それでもこの世界は何も変わらない
万人はこの答えに直面して受け入れてきた
若くして病で旅立つ人もいれば自ら望んで旅立つ人もいる
数十年前に一人になっ ....
4コマポエムを作ってみました
斬新すぎたかなぁ…
緩やかな曲率で
道は行き止まりまで続いていた
そこより遠い場所を
知らなかったので
墓標はその岬に、と決めていた
漁火の整列する底には
冷たい海流があって
行き止まりの
もっと向こ ....
容れ物のように穴のあいた胸に
こっくりと深い紅の薔薇を生けた
晒されて焼けついた
空の心を
かざりたてた
胸にあいた穴が底をうがつ時が
いづれくることを予想 ....
・
ひとあし歩くごとに
わたしの身体からは石が落ちます
からからに乾いた石は
薄い色をしています
わたしはそれを
さらさらかちかち と踏みしだき
疲労し続けましょう
名 ....
割れた爪をぱちんと切る 君の音と
呼び鈴の音がかさなる。
そんな一瞬って、永遠になるかもしれない。
描かれた以上に、物事は動いていた。
ベランダに干されていたストッキングも
風に迷い込ん ....
君が
君が夕暮れならいいのに
ゆるやかに
侵食される
雲の隙間ならいいのに
そうして
一瞬朱に変わり
再び閉ざされる
僕は夜
君は夕暮れ
夜は待つ
夕暮れがゆく
....
棍棒を
作った
オークの
頭四キロの
素振りを
ずっとしてた
だってお前が
怖がるから
引っ越した家は
夜少し静か過ぎて
お前が怖がるから
まあ実は俺 ....
駅前で兄を探していたら
母と会った
隣に父がいた
移動の最中だった
兄の居場所を尋ねると
二人ともよく笑った
私もいっしょになって
昔のように笑った
父が小さな扉を指差したので ....
淡い彗星到来
さわりぞら
沖網に掛かる
幾千の廃絶が決心を垂らす
鉱石の連鎖
明滅の香澄
二重のIラインが
悲しく咽び濡れ
散ったのはいつだ
散るのはいまだ
微 ....
嵐の去ったその森は
かろうじて残った者たちが起き上がり
皆で互いを確認しあい
それぞれがその生をいそしむ
弱きものは流される
自然の厳しい法則は
世界の大小に関わりなく
適用されてゆ ....
増大する人の世の悪徳に疲弊している私の
両翼は とうに抜け落ち
背中は
巨大な浮腫により
佝僂のように曲がっている
エミです
こちら はじめてかしら 今日よかったら また指名 ....
さみしいと
寄り添うくせがあるので
いつも
ポケットにウサギ
鼻先を
ちょこんと出して
ふさふさの
耳をたたんで
私があまりにも
にこにこしてるので
人は誰でも不思議そうに ....
心の中で呟いてみる
それは音にならない
透明な言葉
だのに君は振り向いて
どうしたのと聞いた
僕は嬉しくってさ
何でもないって言いながら
笑っちゃったんだよ
どうしたの
何でもない
たったそれ ....
職場の先輩が
強気な部下のOLに牙を向かれ
いじけてた
この日、日誌の僕は
書類をコピーしたら
紙が詰まった
事務所に行って
先輩呼んで
「 頼りにしてます、助 ....
笹薮の中の
一輪の百合よ
かぐはしくも
夢幻のやうにともつてゐる
白い灯よ
潤ひのない荒野に
花弁をひらく
おまへのその
ひそやかな立ち姿は ....
+
雨のような音がしていた
始終ずっと
雨のような音がしていた
よくよく考えてみると
それは雨の音ではなくて
誰かの足音だったのかもしれない
雨の音は段々近づいてき ....
目覚まし時計の電池を抜いて
針を止めてはみたものの
時間が止まるわけでは無くて
時間が戻るわけでも無くて
ぴかぴか光る文字盤を見ている
わたしはきっと
何かを後悔してるのかもし ....
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