ブルーレットおくだけが落とす
ブルーレットみたいな色の汚れが
必死にこびりついている
待っている次の人が
お母さんも含まれている列
お父さんも含まれている列
お母さんにたく ....
私たちは独房だ
私たちはセルロースの
薄い被膜で隔てたままの
私たちが抱き合ったり
やわらかな場所
探し当てたり
セル
私たちは独房だ
世界は私を番号で呼ぶ
間違いではなく
....
この季節になると思い出します
行きも帰りもバスでした
山奥の芋煮会場に着くと
澄んだ風が吹いていました
肌が乾いてなつかしい気がしました
網目になった体を
すうすう吹き抜けてい ....
ページをめくると、150にも及ぶ短編が並んだ入り口に立たされる。
題名はなく整然と数字が打たれた下に展開される世界は、まるでエッシャーの騙し絵に迷いこんだようだ。
5 女の正体が実は額縁で/ ....
{引用=
僕のアパートは猫が飼えない
窓から見えるのは隣の物置と、アルミのベランダの裏側だけ
コンビニのビニール袋が 風にふかれてカサカサ笑い
忘れられた洗濯物が 雨に打たれてしおしお泣いてる ....
お正月
母の実家から見える
山脈の麓にスキー場があった
数キロ続く田の先にある
駅前の街のそのさらに数キロ続く
田の果てに
スキー場が見えていた
とても遠いところなのに
....
ケータイで
挟んで潰したカナブンの
そのおやを持つこの気持ち
赤いチョーク
のようなトンボが
風をひっかきひっかき
ぼくの背たけを測っている
ぼくは大きくなっただろうか
朝ごとに
ぼくは生まれる
よろこびとかなしみの
草の中から
....
おもたい買い物を持ってあげて
へいきだからと
買い物帰り
小学生
おかあさんの背のはんぶんで
同じ量を持ってあるく
わたしはわたしをおもいだす
何も言わないけど
じんわりや、おもいだす ....
きみをのせているシートは
みどりいろの
初夏が青々として
もしくは はんとうめいの
生はるまき
包むライスペーパーのよう
じかんのベルトコンベア
同じむきにしか
すすまないけど ....
橙色に照らされた木造二階建てのアパート
蹴飛ばせば簡単に壊れてしまいそうな垣根から
紅色の白粉花がその艶やかな顔を出す
やがて来る闇に飲み込まれてしまう前に
黒くて固い種子をてのひらに ....
・
私の本当の名前はスマコというらしいです
だけど父も母も兄弟もみんなスマと呼ぶので
いつの間にか私はスマになってしまいました
ときどき本当の名前について考えます
コというのはどういう漢字な ....
海より遠い、
安曇野を思う
穂高の山々を
わさび田の清流を
あるいは
ただその空を思う
閉め切った窓の硝子に反射する、
ピアノ曲に誘われ
ふっと解けた封印は
気付けばとっくに ....
ねじが切れると
メロディは
ゆっくり
終わりを
始める
それは
寂しいけれど
唐突ではないあたりが
優しくて
たぶん
わたしの一生も
こんなふうに
終わりを始めるの ....
きみの言葉
岸辺の水草
抱き合った夜のまるい小石
わたしの言葉
艶やかな泥
探り合った分だけ{ルビ嵩=かさ}んだ枯れ草
ひとつずつ拾い集めて
一年間を歩いていく
ほら、
晴れだと ....
手のり森ちゃん
そう言って
蟻が両手を空に向けてそろえると
森は
いつも
にこっと笑って
ちょこんと座ってきた
森は
蟻の両掌にすっぽり納まる
いとおしいこころをしており
その ....
黄色くてでかいストローハットを
ふたりでひとつかぶって
お話しをしよう
ほら今は青空だって見てない
ひまわりだって のぞきこまない
僕たちはわかすぎるから
明日までの宿題も
占いとか ....
遠くから見ると
家々の灯りが山裾に
へばりつくように
つらなっているのが見える
あれらの灯りは私ひとりの
いのちよりも長く生きるだろう
ひとりが斃れふたりが斃れ
世代の交代があったと ....
http://www.youtube.com/watch?v=xYJEzzhvj0E
このドラマ、知ってますか?
僕が子供の頃、とても好きなドラマでした。
こういう懐かしいも ....
眩しい舗道に
蝉、おちた
鳴くのをやめて
飛ぶのをやめて
褐色の羽根に
ちりちりと熱が這い上っても
黙って空を仰ぐ
湿った真昼をまとい
木陰にくっきり分けられた ....
ひさしぶりに
裏庭を見ていた
貝殻や
魚の死骸が
たくさん漂着していた
いつのまに
海が来ていたのだろう
命はまだ
こんなにも
満ちているのに
干潮の砂浜を ....
川は流れる
四季がめぐるように
花のしずくは落ち
あらたに芽吹くときも
唯ぼんやりみていても
まよいごとに刻まれていても
その音は捕えることのできない
川は流れる
もえて煙 ....
この腕に
守れるものなど少なくて
そのくせなにかを
守ってみたくて
だから
たとえば
波打ち際で
きれいな貝殻を
探してる
きみは
きれいな貝殻を
よろこぶだろうから ....
・
幼いころ
妹はお風呂が嫌いで
兄は爪を切られるのが嫌いで
わたしは歯を磨くのが嫌いだった
だからそのころのわたしたち三兄弟ときたら
妹は髪から極彩色のきのこを生やし
わたしはのどの奥 ....
天気はさまざまなものを
当たりまえのものであるかのように
人に見せる
そうして見せながらも黙っている
黙っているから人は勝手に騒いで
動き回ってくれるのだ
道の真中過ぎに
坐っているもの ....
日没を追い越したくて海岸線
灯台よ、まだ闇を告げるな
たき火して語り合う手の缶ビール
温んでいくのはだれのしわざか
まっさきに真っ赤に落ちてしまうのも
....
欄干のすぐそばでゆれていた緑の長い葉を
頭上でちぎって歩くと
いつの間にか橋は終わっていて
下り始めるその道のはじめに
モリヤ商店はたっていました
コーラを買ったり
買わない店の奥の暗 ....
一学期の終わりに盗まれた一本の鉛筆の
HBの日々の夕刻にサラサラと落下した
「ばいばい」の落書きみたいなひとり言には
いつだって行間が無かった
下校時刻だった、タ、タ、タ
無 ....
かたまって凍った重装備の人形
だらりだらり
とけて失っていく
あしあとは蒸発して
絶えない あくびと同化する
空のなかに白いハネ
をした雲
むねに刺せないくらい
おおきくて
....
除光駅では星たちが手を繋ぎつぎの太陽がくるのを待っている。
惑星になった気分で飛び乗ってなのにここは居場所じゃない気分。
降りる勇気もないのにつぎの駅つぎの ....
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