すべてのおすすめ
無邪気であり
かつ残酷でもある少年は
少女にはわからない遊びに夢中になったりする
原始の森から続く通過儀礼のように
せみとり くわがた かぶと虫
昆虫標本
はばたくために作られた軽い羽 ....
元々無口だった相方が
緘黙症を始めたので
普段は週末にしか行かない川までドライブ
口は利かないが運転はしてくれるので
平日の深更に夜ドライブ
昼間の言葉の行き場がなくて
叫ぶ場所と ....
二十五年前のある日
おとうとの幼稚園の授業参観に行った母が
苦笑いしながら帰ってきたことがあった
なんでも恥をかかされたらしい
その日のテーマは
「お友達に手紙を書く」というものだったのだけ ....
蟻だ
物凄い数の蟻だ
僕は
涎を垂らしながら
テレビのニュース映像に
釘付けになっている
パレードだ
角砂糖の数珠繋ぎだ
僕は
指をくわえながら
熱狂と陶酔の蟻の行 ....
天を仰いでなんど君の名を呼んだことか
だが、君の麗峰まで声は届かない
君は雲に隠れて、姿を見せない
君は、雲を従え、引きこもる
湖畔で、日が暮れるまでひとり君を待っていた
夜が来た
....
テッポウユリではないのです
今頃の季節
花期をたがえて咲く白い花
例えばアカザやブタクサ
夏草でいっぱいの四角い空き地の真ん中に
丈高く唐突にすくっと一本だけ
細葉の形と付き方が
....
今日の新聞の隅々まで読む
いまここでなにが起こっているのか
私の足元を確かめる
外に出て
花に木に雲に空に
あらためて挨拶をする
ありがとうと
よろしくを
私 うまれたよ
....
土の匂いがした
草の匂いがした
木の匂いがした
日陰ばかり歩いていたら
人間も虫になった
鳴くこともできず
飛ぶこともできず
交尾の仕方もわからず
それでも人間は
虫になれた ....
いまだに焼かれている
真夏の紫外線に焼かれている
皮膚を失ったその石積みが
角質化した褐色のコンクリートが
汗ばむのは
放射熱、反射光
白いテントで防げないその閃光に
遠く台風雲を浮かば ....
わたしね
びっくりして
バスブーツのまま外に出ちゃったの
そう
カビとりしてたから
そうしたら外は
一面、お風呂
だから
バスブーツでおでかけ
バスブーツで
遠くまでおでかけ
....
まだこれからも
咲いてゆくのだと思って
種を蒔く人がいる
空がこときれたように
雨がとつぜんやみ
後には思い出のように風が流れていた
大地もしっかりと
流れていて 古い
しきたりの中で ....
昼の
冴えた青い空
さらの白い厚い雲
夜は
深き濃紺
星の欲する空の闇
くり返しくり返す
するとするどく
光っている、見えないものが
見得ないけれど
見られるものが ....
樹は伸びる
樹は伸びる
樹は掻き分ける
樹は伸びる
樹はかき分ける
樹は押さえつけ
樹は伸びる
樹は向かう
樹は向かう
樹は進む
樹は伸びる
樹は押さえつけ
樹は掻き分ける
....
ほんの、ひと握り
どの
手のひらにも
負えるくらいの
ちいさな
ちいさな
身の丈で
ほんの、ひと握り
ねがいを載せて
せせらぎましょう
いついつまでも
....
鳩時計といっしょに3時をお知らせする
春の日は、光のさざ波をうち、
夏の日は、黒いみどりとなってよどんだ。
秋の日は、木枯らしと荒れた波が流れを遡った。
冬の晴れた日は、凍る清み渡った水面に銀河を描く。
冬の雨の日は、河も空も ....
おかあさん
おかあさーん
わたしを産んだ日は
晴れていたと聞きました
満開のサクラ
初夏のような西陽のなかで
汗をかきながら
わたしを産み落としたと。
産院の名前を覚えています ....
まるごとわたし、なつごもり
こんな季節なので
あなたと顔を合わすのもおっくう
真っ盛りに教室漬け
教科書ノート参考書の順で
男子と女子が、かたちもなく
見えない上下運動をくりかえす ....
追憶の
夏は幾重に
折りたたまん
遠花火
ひとつふたつと
過去があり
朱に染まり
空を制覇す
きみとぼく
抜け殻が
抜け殻を生み
夢さめぬ
この ....
いろんな事情があるのだ
いろんな切実があるのだ
賞味期限ぎれの調味料にも
フローリングのペットの毛にも
散らばったコンビニの袋にも
飲みかけの缶ビールにも
やさ ....
昨日とおなじものは
いらないのに
明日になったらやっぱり
おなじもの?
君はかわっても
ぼくはかわらないのかな
いくつになっても?
うん。
将来のゆめを語るひとでいたい
九十 ....
褪色したかこはモノクロ
セピアのくすむ
鉄錆の
あかがね色
ふくざつに入り組んだそら
四角い工場群がある昭和のはじめは卵の
ちいさな箱
筒状のえんとつ
....
固く強張った叫びの表面から
水が剥がれる
一枚の皮膚のように
音もなく
樹齢千年の眼差しに救われて
水は
季節の波紋を揺すり
懐かしい演奏を軸とする
流れと
陽光の到着を待ちなが ....
鳴るように
色付いて
はばたくように
ふれあう
それは
ひどく
不器用な鳥たちが
抱きあい
落下する 夕暮れ
おばあちゃんが言った
ふりかえっちゃいけないよ
茄子の牛に乗って空へ帰る人たちを
見てはいけないと言った
だってさみしくなるだろう
送る方も
送られる方も、さ
藁を燃やして送 ....
まりまりと育った
踏みつぶされて死んだ
夕方の河原で妹たちが裏白い顔で揺れている
剥がれない瘡蓋
喉元を細い波線が貫いて
噴き返る血流と漏れ出す呼気の
擦れ合う音
こ ....
現実が見えない速度で流れゆく
見えずとも流れゆくのは
時間と河の佇まい
喉を切り裂く
その 刹那
声にならない
悲鳴と絶望の渦の中に
また 流されてゆく
小さな小さな ただ
....
朝
コップ一杯の水を飲む
夜の間に
水分が失われた細胞が
目覚めていくのを感じる
八月六日の朝
同じように水を飲む
最期の言葉は
ミズヲ クダサイ
この水は
私の水 ....
うなじに貼りつく蝉の声を
拭ったハンカチの上に
炎天下の用水路に浸した
素足のこそばゆさを重ねて
最後の線香花火が消えた後の
かすれた火薬の匂いの上に
水着の跡 ....
おひさまに干されたふとんは
懐かしい匂いがする
平屋建ての木造家屋
屋根より高く育ったヒマワリ
リュウノヒゲにふちどられた細い通路
赤いバラのアーチでは
テントウムシがアブラムシを食べ ....
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