盛夏
nonya


うなじに貼りつく蝉の声を
拭ったハンカチの上に


炎天下の用水路に浸した
素足のこそばゆさを重ねて


最後の線香花火が消えた後の
かすれた火薬の匂いの上に


水着の跡をたどった先の
夜明けの気だるさを重ねて


自分の無力を思い知った
午後の酷い西日の上に


年を経るほどにおしゃべりになる
煙になったはずのあなたの背中を
何度も何度も重ねて


てんこ盛りの夏が往く


平たい日常の皿の上に
極彩色の記憶の干し果物を
これでもかと盛りつけて


てんこ盛りの夏が往く


均された想い出の上に
悔いと痛みを利かせたルーを
嫌というほど盛りつけて




自由詩 盛夏 Copyright nonya 2012-08-04 13:57:40
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