すべてのおすすめ
――油膜のような色なんだ、赤にも緑にも見える。
Tはテーブルの上のカップに視線を注いだまま
落ち着かない様子で呟き口に手を当てる
僕は僕で
冠雪して間もない山なみを窓ガラス越しに見ながら
....
にわかには信じがたい歌と指によって
けだものは のけものは 降って来る
目にあまるけだもの
手にあまるけだもの
首を差し出せば
からみつくけだもの
出た ....
棄てられた道のざわめき
野に沈んだ鉄の轍が
震えるたびに運び来るもの
蒼と紫の光が軋み
激しく小さな
数え切れない夜になり
雲を鳴らす音とともに
草の波をつくりだ ....
夜の灯りに染まり連なる
紅くにじんだ雲の前に
誰もいない建物がつづいていた
記憶と 事実と 交響と
淡く静かな流れに沿って
目に映る火と
映らない火の
か ....
午後に目覚めた双子の猫が
雨のむこうのはばたきを見ていた
夢の音から目をそらし
見つめた先にはばたきはあった
はばたきは薄く光を帯びていた
ゆっくりと近づく別の ....
魚の群れが夜を飛び
鱗と涙を落としては
何も無い地を焼いていた
火の端々が鳥になり
さらに暗い夜へと去った
雲と砂の波のなかで
魚は涙を閉じていった
白と ....
花が居て
狂いたい
と言った
なにもしてやれないので
川にうつる枝のなかに立ち
はらわたの森をひらき
ここにお入り
と 言った
蝶が来て
狂いたい
と言 ....
1.
海底にねセ氏120度の温泉を噴き出す海底火山があってね そこにはまっしろな蟹が住んでるんだよ なに食ってるかって硫化水素を利用して増えるバクテリアとかなんとかそんなものを食ってるんだけど ....
(曙)
薄暗い部屋の中
光のはしごがすうっとかけられ
それは
雨戸の隙間から漏れていて
僕はふとんから起き出て
手を翳した
掴むことはできない
ああ それでも
....
二十数年前
大量の醤油を飲んで自らの命を絶った科学者がいる
それが私の父だ
いったいどれくらいの醤油を飲んだのか
警官が説明しようとすると
母はそれを遮り
私の手を引いて長い廊下を歩き ....
にんじんの悲しみは ピュ―ラーで一枚剥けばはがされる
じゃが芋の苦しみは 包丁のかどで丹念に取り除く
芯が残らないように
これは ソラニンっていう猛毒なんだって
玉葱の恨みは じ ....
白い
白いブリーフ姿
白いブリーフ姿の中年
白いブリーフ姿の中年がベッドの脇で
準備体操
白い
白いブリーフ姿
白いブリーフ姿の小太りな中年
白いブリーフ姿の小太りな中年がマンガみ ....
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198