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窓を開け
口笛を吹くと
僕の小さな銀色の飛行船が
やってくる

僕は窓から飛び立つ
菫色の大きなたそがれの下に
輪郭だけになった街が広がる

街の一角から
空に向けて放たれ回るサー ....
一面銀になびく草の原を
未明の馬が駆けてゆく

どこからどこへ駆けてゆくのか
ほこらかな そして不思議にしずかな躍動で
一面銀になびく草の原を

駆けてゆく未明の馬は
そうだ きっと
 ....
君の生まれた十月の国で
うたうように眠りたい

銀木犀のしずかなかおりが
漂う夜気に包まれて

丘を木立をぬって流れる
川のせせらぎを聞きながら

  幼い君が 少年の君が
  夢 ....
いくつもの風が過ぎた
いくつもの雨が過ぎた

いつ結んだ思い出だったろう?
   僕の地平をゆく青い旅人に
   君の塔に棲む白い少年が手を振る

日と月とがめぐる 星座がめぐる
幾重 ....
夜明けの人よ
この胸の彼方の青い丘に立ち
おそらくは私を待っているのであろう
夜明けの人よ

あなたのもとへと
私は行きたい
けれどそれにはまだ
私が過ぎ去らねばならぬもの
私を過ぎ ....
雨のむこうから
無造作に青空
緑のつややかな木立の陰から
ほら 少年たちが
幾重にも幾重にも生まれてくるよ
君の髪を肩をすべるように
きらきら きらきら
光たちが降りこぼれるよ

逃 ....
世界の尖端に
詩人のようなものが引掛かっている
重いカーテンをどんなに引いても
夜の窓から三日月がはみ出してくる
夢の過剰摂取の副作用が
紫色に垂れ込めてくる
中空には透明な旗が翻る
誰 ....
白い部屋 白いベッド
時計の針だけが 静かに動いてゆく
私は此処に
囚われている それとも
護られている

開くことのない窓から
中庭を見やる あかるい芝生に 木洩れ日が
揺れている  ....
夢が 微睡んでいる
緑の葉陰ものうく揺れる
やわらかな午後を

その瞼を 胸もとを つまさきを
うすい風が吹きすぎる

夢は そうして 自らを
夢みている あえかに甘やかに
その夢の ....
岬の白い道を歩いてゆく
突端をめざして一歩一歩
五月の空は
高らかに晴れわたっている

風が吹く
記憶が吹く
波が聴こえる
記憶が聴こえる

岬は細く長く
なかなか突端にはたどり ....
窓から見おろす午後の広場を
満たしているのは
{ルビ懶=ものう}い閑雅と
ほんのわずかな挑発

とりどりのチューリップの咲く
花壇のそばのベンチには
一対の恋人

彼の心臓は水晶製
 ....
ひとり夜を歩く
頭上には
ペガススの天窓

自分の足音が
なぜかしら胸に迫る
何を思えばいい
何を どう思えばいい

道は暗くしずかに続いている
心をどこに置けばいい
心をどこに ....
身のまわりの色彩が不思議と淡くなる夜
胸のうちに浮かぶ
いくつかの
花の名

鍵盤をやわらかに歌わせる指たちの幻

夢のうちを
あるいは予感のうちを
あえかにかすめていった 星のよう ....
観測所には誰が居るんだ?
あの夜に僕らがはじめて気づいた
色とりどりの破綻は
今もまだつづいているんだ
君のあるいは君たちのともした火
砂漠の向こうから送られるシグナル
忘れられた庭園の扉 ....
ほの甘い色の胞子が降りしきる午後
小さな昏い紫の遊星の影が
君の瞼をよぎってゆくのを見る

チェス盤のうえ
気まぐれに並べられた駒たちのあいだを
七角形の記憶がすり抜けるように踊っている
 ....
わたしたちは 底悲しく
わらいあう
そして指をつなぎあい
小径をゆく

菫の花がそこかしこに
ふるえるように咲いている

わたしたちは 歩きながら
優しげに 言葉を交わす
でも気づ ....
暗示は歩いてゆく
眠りをめぐる回廊を
重ねられた便箋のあいだを
どこかためらいがちな
静かな足どりで

誰ひとり知り合いのないような
それでいて誰もに挨拶をしているような身ぶりで
暗示 ....
練習船
黒い尖塔
木馬の何頭かを失ったまま
メリーゴーラウンドは廻転している

空はいつでも鋭角
時折少年が墜落してくる

旗竿の上で
燃え尽きる旗
その下でそれでも昏い宴はつづく ....
場末の小さな店を出ると
もう真夜中のはずなのに
不思議とあたりは白っぽく明るい
街灯もひとつもともっていない
しかし明るいとはいえ太陽がないので
なんだか昼間とはちがった
さびしい明るさだ ....
壁を自在に移動する窓
持ち歩き可能な窓

心臓に取り付けるための窓

蜃気楼だけが見える窓

窓硝子に詩を書くための窓
叩き壊しても何度でも再生する窓

脱け出すためだけの窓
忍 ....
僕の黒いノートの表紙に
ときどき
窓が出来ていることがある
その向こうで
君のかなしみが
淡い落下をいつまでもつづけている
(背景はいつも夏の
 {ルビ誰彼時=たそがれどき}か
 {ル ....
未有花さんの塔野夏子さんおすすめリスト(21)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
サーチライト- 塔野夏子自由詩6*22-6-9
未明の馬- 塔野夏子自由詩5*21-12-7
うたうように眠りたい- 塔野夏子自由詩7*11-10-31
僕らの日々- 塔野夏子自由詩7*11-6-29
夜明けの人- 塔野夏子自由詩9*11-3-3
真夏がはじまる- 塔野夏子自由詩6*09-7-27
透明な旗- 塔野夏子自由詩8*09-7-17
asylum- 塔野夏子自由詩4*09-7-5
夏に至る- 塔野夏子自由詩4*09-6-19
- 塔野夏子自由詩5*09-5-3
春_景- 塔野夏子自由詩2*09-3-3
ペガススの天窓- 塔野夏子自由詩6*08-12-5
ひそやかに- 塔野夏子自由詩9*08-11-9
きらびやかな兆候- 塔野夏子自由詩8*08-6-13
春の桟橋- 塔野夏子自由詩7*08-5-11
菫の小径- 塔野夏子自由詩9*08-2-21
暗示は歩いてゆく- 塔野夏子自由詩11*07-12-11
Quest- 塔野夏子自由詩9*07-9-29
明るい真夜中- 塔野夏子自由詩11*06-12-27
窓のカタログ- 塔野夏子自由詩15*06-12-17
黒いノート- 塔野夏子自由詩21*06-11-19

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