迷宮組曲/第3楽章/黄昏
遊佐




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暮れ急ぐ空の半分は明日の為のもので
残りの半分が今日と昨日に残した物を映しているのだと、
お互いに主張して譲らない青と赤が、譲り合い一つに溶け合ったなら紫色を生むのだと、天の切れ間には黄昏を織り、飾り付け
空の下には夜を導く為のカーペットを敷くのだと、
誰に教わる訳でもないのに
帰りを急ぐ貴方と、それを待つ私の間で子供達は知るのです
そして彼等も帰るべき道を急ぎ足で辿って行くのです
昼を終い、夜を迎える為の幕間は
気忙しくも緩やかな、名も無き劇団の小さな舞台の上のパフォーマンスにも似て
繋ぐことの大切さを教えてくれているのかも知れないですね


 *
昼は明るければ明るい方が良い
喩え夜が果てしもなく暗くても
眠りに身を委ねる子供達の枕元に
また明日を夢見る心を育んでくれるから…
夜の闇は
疲れたら休むことも必要なのだと教えてくれる
そして彼等も
無駄もまた大切なんだと知るのでしょう

貴方が私達の待つ家を目指すように
私が貴方達の帰りを待つように
昼は夜を目指して西へと傾き、夜は其処で昼をいつも待っている

暮れて行くことの寂しさの中にも
穏やかで欠かせない物が在るのだと知って欲しいのです
無限に繰り返される営みの中に
生命の儚さを感じるのであれば
黄昏を想い、人生に準えて欲しいと願うのです

夕陽は沈むのではなく明日を迎える為に眠るのだと
そう信じて生きて欲しいのです。





自由詩 迷宮組曲/第3楽章/黄昏 Copyright 遊佐 2009-06-28 21:27:10
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