翳りゆく線路
within

もうすぐ
何も書けなくなるかもしれない
春の暁を迎えることもなく
散っていく
桜の木の下で眠る
モンシロチョウの卵のように
冬に埋もれて
全てを白灰に戻し
あなたのことを忘れ
木偶でくのように
呼吸をするだけの
狂人になるかもしれない

どんなに思いを
言葉に込めても
受け取ってもらえなかった
破片たちが
眠るぼくの上に
牡丹雪のように
柔らかく降り積もる

ぼくはいつか狂人となり
あなたの目が届かない
冷たい城に幽閉され
ただ生きている
それだけの
一匹の家畜になる

会うことも
叶わなかったけれども
あなたの楽しそうな笑い声が
ぼくの耳元で
木漏れ日のように
小さく微笑んでくれる

徐々に狂って
死んでいく者の絶望

薄暮の線路

ひとり暗黒の城に
連れられてゆく

悲しいけれど
ぼくの生は
こんなもの

しかたがない
人間に生まれてきたのだから
どうしようもない


自由詩 翳りゆく線路 Copyright within 2010-02-13 04:09:32
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