ハレムの女たち
楽恵

千夜一夜
回転しながら
浮き沈みするリビドー。

スルタンの青い宮殿の奥深く
幾重もの厚い石壁に隠され
永遠に閉じ込められた
千人の女たちが抱く
太陽の宝石
飽くなき欲動。
薄いヴェールの下に隠された
果てしのない情動。
新月が射し込む暗い影。

閉めきった扉の内側には、硝子のタイルで
輝くコーランがはめ込まれている。

戦利品である獣の毛皮と
密に織り込められた絨毯のうえを
白い素足で歩く
女から女に向けられる
砂嵐のように熱い瞳
美しさ、羨望。
若さ、嫉妬。
微笑と魅力。
黒服の宦官が厳重に管理する、情念の園。

たった一人の男の愛をめぐる
千人の女たちの
陰謀と野望。
千の夜を語り続ける
眠らない欲望の物語。
リビドーの夢。

いつの時代も、
女たちの心を占めているのは、
女と女と女と、男。




自由詩 ハレムの女たち Copyright 楽恵 2010-02-24 20:03:26
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