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立て続けに何杯も
水を飲んだ 若い頃は
いつも
だがもう
そうはいかない
コーヒーを入れる時間が わたしの
呼吸の長さである
いつもの あなたのように
コーヒーメーカーは たどたどしく ....
穴を掘る
私たちは穴を掘る
深く
硬い地面に埋もれた
季節の輪郭をなぞるように

穴を掘る
私たちは穴を掘る
さらに深く
地中を飛ぶ鳥たちの
淡い心臓に届くように

手紙を拾う ....
向こうの林の梢の上に
三角からすを止まらせて

昨日のぼくの ろくでなし
あしたに恃む すべもなし

雲にまかれた梢の陰に
三角からすを潜ませて

(三角からすっていうのがいるんです ....
もうすぐ学校は終わりになる
十何回目かのチャイムが鳴って
生徒たちは むやみな言葉を散らばして
風が 折れたラケットを転がして
そしてもうすぐ学校は
終わりになる
終わりだよって 誰か 言 ....
山峡から雲がほどかれて
青空の薄い隙間に流れ込んだ

寺の境内のジャングルジムの上を
白球は大きく弧を描いて巡り
泥田の中に澄んだ影を潜ませ
その影の中にぼくらは遊んだ
風は風のように木 ....
柱時計の六時の針が
伸びたり縮んだりしている
途切れ途切れに
夕暮れの鐘の音を聞く

濃い水色の闇を滴らせ
裏庭を
引きずりながら運ぶものがある
木戸を開けて尋ねると
お前が見よとい ....
お線香をひとつつまんで
おばちゃん ごめんねと
ぼくはいった
ごめんね

あら いたるちゃん よくきたね
おまえはしんでからだと
よくおいでになるね
いきているうちは 何か不都合でもあ ....
今日は土手を歩く
土手を歩いて風を数える
おまえと 僕と
懐かしい春の風を行進する

川面の丸い光を
後退する四角い針の葉の林を
居眠りする土手の潅木の列を
風はまんべんなく揺らして渡 ....
前の家のばあさんが死んでしまった
腰より低く背を曲げた八十いくつのばあさんだ
息子夫婦は遠くに住んで
干からびたみたいな平屋に一人で住んでいたが
隣近所に迷惑のかからないように
死んだら近親 ....
水をお飲みなさい

彼女は言った
黄昏の重い扉の手前に立って
指先をしっかり伸ばして
振り返りながら

水をお飲みなさい
と 彼女は言った
この町は
たっぷりの水が流れていく町だ ....
る の形の漏斗へと滑り落ちていくように
ぼくは明るい駅へと吸い込まれる
窓に青蛙が張り付く
濡れた松葉が張り付く
滲むいくつかの家の灯りが
黒い木立に十字を掛けて
すいと横に流れたかと見る ....
【アカマきつね】

そのお社は
今は大きなスーパーの駐車場になっていて
たくさんの乗用車が窮屈に並んでは
ふうふう息をついています

(アカマきつねです)

蝉の声が木々に焼き付く田 ....
だれかぼくに
長い手紙をくれまいか

すっぽり暗いすり鉢の空の底
吹雪のあけた だだっぴろい広場に
まんべんなく雪は敷き詰められて
だれかが夕暮れの紅いろうそくを吹き消す
すると
取り ....
ぼくが生まれた日
今年のように
雪が物憂く降っていた
崩れかけた柱の根
巻き上げる夢の枝先

曇った窓に頬杖つくと
埋もれる氷の柱が
幾本も並んでいた
ぼくは泣かなかったけれど
指 ....
ばあちゃんを乗せて
じいちゃんを見舞いに行く

ゆく道の傍らに
塀越しの柿の実が鈴生りだ
ひとつぶずつに
千年と千日の
日差しがはね返る

 小太りの猫が座ってたじゃないか
 毛の ....
五月の橋の上で
生まれ変わったら
何になりたいと聞かれた

ねことか
とりとか

雨の日の林の中の
きのこ
なんてどうかなあ
ぷつぷつとうたうたう
春の腐植の土たち
立ち上がろ ....
ぼくはずっと眠っていた
家並みの混んだ路地の奥
細い電線が空に絡まる保育園の
二階のしわくちゃな布団の上で まんまるに

ぼくの夢の上を白茶けた紙飛行機と
たくさんの紙の砲弾が行き来した
 ....
曲がったネクタイを直して
身だしなみをきちんとして
それから 二人で
青空を見に行った

白いけむりが立ったので
裏の丘へと登っていった
あなたの腕のような
楓の木々のあちこちに
朝 ....
銀のアルマイトのおべんとに
ちょっと焦げたハチミツ入りの卵焼きと
ちょっと焦げたウインナと
焦げてないきゅうりのお漬物とバナナをつめて

ピクニック

ようちゃん
自慢できるものはある ....
車のドアを開けて
アスファルトに降り立ち
ゆっくりと
夕焼けを踏む

夕焼けについて書こうと思う
古びて傾いた夕焼けについて
それは人通りのなくなった街道の
傍らに立つ廃屋の壁に
擦 ....
欄干のすぐそばでゆれていた緑の長い葉を
頭上でちぎって歩くと
いつの間にか橋は終わっていて
下り始めるその道のはじめに
モリヤ商店はたっていました

コーラを買ったり
買わない店の奥の暗 ....
庭に日の差す縁側で
かげろうにゆらりと手をかざす
つかめないな
銀のコップが透き通って
細く光る指先の丸み

着られなかった
紺の制服をまとって
うっすらとたなびくおまえ

好きだ ....
天井から
夜が下りてくる
お父さんは四十年生きて
長かったなあと思う?
布団の中の息子が
息継ぎに顔を出す
しみじみする口のまるい形
「ささやかなこの人生」とつばを飛ばしてナカジマは歌い ....
胸まである雑草を分けて歩いた。
蒸し暑い夜だった。
夜だったが妙に明るい。
藪を抜けて
野球場に出た。
グランドに白い照明があたっている。
白いシャツの男達が集まっている。
新しい野球チ ....
目覚めると泣いている
車窓を過ぎる色の落ちた看板
路地裏のひまわり
僕が僕から立ち去ろうとして
ふと吹き込むふるさとがある

立ち枯れた楓の根元にしゃがみこみ
裾を引くふるさと
囲炉裏 ....
未有花さんのオイタルさんおすすめリスト(25)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
コーヒー- オイタル自由詩418-6-9
穴を掘る- オイタル自由詩6*17-1-7
三角からす- オイタル自由詩9*15-11-28
学校が終わる- オイタル自由詩2*15-3-8
ぼくたちは静かに遊んでいた- オイタル自由詩3*14-10-12
夕暮れに運ぶもの- オイタル自由詩2*14-10-7
おばちゃんごめんねとぼくは言った- オイタル自由詩5*14-7-5
土手を歩く- オイタル自由詩4*14-3-19
前の家のばあさん- オイタル自由詩7*13-6-1
水の町の女にさようならを言われる- オイタル自由詩1411-12-27
お帰りの少年- オイタル自由詩4*11-9-3
きつね_二題- オイタル自由詩6*11-8-9
ぼくに手紙を- オイタル自由詩11*11-2-10
ぼくの生まれた日- オイタル自由詩12*10-12-31
ばあちゃんを乗せて- オイタル自由詩5*10-12-4
五月の流れる水の上で- オイタル自由詩9*10-5-27
ぼくは眠っていた- オイタル自由詩10*10-2-20
白いけむりが立ったので- オイタル自由詩4*09-12-12
ピクニック- オイタル自由詩4*09-9-21
夕焼けについて- オイタル自由詩12*09-9-19
きつねの辻- オイタル自由詩5*09-8-21
庭に日の差す縁側で- オイタル自由詩9*09-4-15
ここに魚を- オイタル自由詩6*08-11-29
夜を歩く- オイタル自由詩6*08-11-14
目覚めると- オイタル自由詩3*08-11-4

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