雪降る
神戸ポートアイランド
退院する夫を迎えに
土曜は
車が少ない
フロントガラスに
吸いこまれてくる
雪の花
淡く霞む
道も景色も
うんと広々
車線変 ....
距離を置いて見ると、停滞は、閉じ込められた珊瑚礁の内部で発する火花を象徴しているように、感じられる。
困難な技巧は、郊外で唇の一生涯を、夢想的には描かない。
暴露的な腐食が、私たちの遠くに ....
{引用=
みぞれと呼ぶには、儚い白い粒子
海峡を冬景色にかえる
流木の積もった雪をはらう
歩き始めた息子の手は、
疑いを知らぬ 温もりで
もう一人の赤子は、腕のなかで ....
陽のあたる
名前も知らない神社のわき道
側溝を覆い隠す熊笹の
枯れて葉の縁が白くなる隈取りに
春へうつろう植物の
地力を感じてたのしくなる
ぽつねんと浮かび
ふいに消 ....
日射しが強まり、ポタポタと雪が溶けて
ゆき、ようやく春がやってきた。
窓に打ち付けられた板を父が外したら、
部屋も目隠しを外したように、暖かい光が
入った。
土は肥料の臭いを纏い、
沢の ....
息子への詩
私から巣立った息子へ
母のこの思いを受け取れる日があるならば
君にたった一つ渡したい
そのたった一つをいつか君が
私の事を思い出して懐かしむ時に
心が温まるような
....
節分の豆まき用の
落花生
結局
「鬼は外 福は内」は
やらずに寝た
今夜
ウィスキーのアテに
落花生
パキッと割ると
左右に分かれて
一個ずつ
なんだか
悪 ....
学校帰り、町に一つしかない音が出る横断歩道を、
わざわざ渡って帰ろうとしたら、横断旗が誰かに
盗られて無くなっていたのでがっかりした。
通学路は神社の山を横に見て、帰る道には線路が近い。
金 ....
雨に打たれて
風に吹かれて
私は流れゆく時を
泳いで、泳いでゆく
なつかしい
夏の匂いのする
青魚の一匹
聴きたいことは
いっぱいある
なぜ
空は青いのか
なぜ
宇宙には星があるのか
なぜ
花は七色なのか
なぜ
世界はプリズムなのか
聴きたいことは
いっぱいある
....
漕いで漕いで。ブランコで妹と二人きゃあきゃあ言っている。
高いとこまで漕ぐよ。姉妹で遊んでいた山里の小さな公園の遊具は、
ブランコと滑り台だけ。
公園は枯れた草でぼうぼうになっている。
初 ....
風が金管の旋律になって
とうとうと胸を揺さぶり
東の空を見あげると
青白く輝くいちばん星
電線の陰が夕闇に消える
鈍色の舗道
星になれない
タワーマンションの窓 ....
朝、
スマホに
目玉焼きを
載せ、
すりおろした
人参みたいな気持ちを
他人事の
引き攣った笑いで
軽くはじく
寝癖のついた宇宙服を脱ぎ、
縞々の制服から
パジャマに着替える ....
ランチタイムを
だいぶ過ぎたお店
無性に
食べたくなった パスタ
語り合う
二人の女性のほか
誰もいない
海老と
ブロッコリー入りの
トマトクリームパスタ
だ ....
ほんの薄皮一枚で
世間と隔てられている
私の中の迷いの森では
樹々は喜びにさざめき
鳥は哀しみをさえずり
花は悩ましさをささやく
誰も見ることができない
私の中の迷いの森の
....
白い屋根にかき氷大盛り
盛り上がった白魔の峡谷
側に運び出す白熊をかき分けて
こんなところも道なのだ
人が動いている
冷たく濡れたトイレットペーパーが
次から次にちぎれ降ってくる
避けれ ....
布団ごしに
差し出された 夫の手
腕ずもうするみたいに
握ってみたら
涙が 溢れてきた
体の中で
飽和していたものが
やっと
機を捉えて
流れだした
そんな ....
わかい母の呼びかけに首を振り
父の実家のお座敷で小走る
ニワトリの様な女の子
おむつが外れてから
便意を我慢してしまうクセのついた子の
浣腸でひとそうどう
陽のあたる縁側 ....
名前のない
ゆらめく魂が
夜の端で
少しだけ、
寝返りを打つ
遠くで
赤い灯がまわる
火元はもう、
地図と一緒に燃えたのに
残酷な温もりだけが、
まだ配られている
....
祈ることはいつだって丁寧さに連結され、そして場合によってはさらにそこにけっして焦ることのない時間が上乗せされる。
たとえば某初代特撮俳優のドリップコーヒーの淹れ方。細口ケトルからお湯を一滴一滴。まる ....
地下駐車場を上がると
青空の下
広大な うずまく雲
──紛れもなく 雪雲だ
冷えた頭と
落ち着かない心臓
ただ
そう認識したと
ひとりごちる
突然の別れと
止ま ....
妹と
柩に入れる花束を
買いに行く
花束ができるあいだ
ふと
呼ばれた
すぐ横にあった
スイトピーたち
ピンクに
シアンの縁取り
鮮やかな染めブルー
淡い色たち
....
起きたらいつも暮れ
たたずめば
側道や新幹線の高架下
結晶が
交差点まで
しんしんと
稜線も
いつかの国境線だったように
揺れる椅子が揺れている
首がやたら凝って
ぐるりと回す
絶好調の日など
そういえば
そんなにない
夜中は必ず目覚める
本は読みづらい
夏に痛めた腰は不完全
不調が普通
なにかしら
携えながら ....
歌、豊かさが揺蕩う。
うたゆたかさがたゆたう
死んでたし、白馬を爆破した天使。
しんでたしはくばをばくはしたてんし
ダイバー狼狽えた、狼狽だ。
だいばうろたえたろうばいだ
....
膝を曲げて
地に根を張るように
ゆっくりと沈む
膝が爪先より前に出ないように
尻を後ろに突き出すと
太腿が熱を帯びる
できるだけ底で静止する
自分の重さを実感しながら
わずかに ....
夫は
思っているより
優しい人かもしれない
今朝
お椀をひっくり返し
自分のお味噌汁が
ぜんぶ無くなった
しかたない、と
食パンを齧る
不意に夫が
「ほい」
自分 ....
夕暮れ時になると思いだす
冬の岸辺にウミネコ一羽
死んだ魚をついばんでいる
大人しい子どもだった
保育園のころ いじわるな女の子に
毎日つねられたりしていたのに
それを口に出し ....
{引用=
雪でございます
ひとり男が、泣いておりました
昨日のそれは、
容赦のない吹雪 誰も、
その仕打ちを じっと
かみしめておりました
山の機嫌をそこねた
地吹 ....
私の苦悩を無視したリビングから
相撲取りに対する拍手が聞こえる
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