人にかける言葉の
優しいひとを選びたい
選んでどうするのかと
問われても明快な答えもないが
そうなんだ僕たちはそんなには曲がってはいないはず
規定するあなたがたの定規はどこまでも ....
星屑のそれこそ屑だらけの海を泳いで
ようやく海から這い出たような
じんわり、と、重い。
私を裏返してでてきたものを
両手でかき集めて
ひとつひとつ灯の光に透かして見てみると
とてもきれいで ....
掌編
夜、蚊取り線香の匂いがする路地を歩き、近所のスーパーマーケットまで焼酎を買いに出かけた。
店内の豆腐売り場で、五年前死んだ友人のコバヤシが身を屈め、神妙な横 ....
毒があるんです そういって
その花は泣いた
拭っても洗い落としても
緑の茎を伝う紫の雫
花びらの裏側に
にじみ出てくる薄暗い素性
どうしても許せないという
戸惑い 悩み
毒などない振 ....
{引用=とある一}
――――――それは
俯く若葉のこらえきれない涙
朝には珠となり蜘蛛の糸を光で撓め
――――――それを
誰が量ったか
人も地も飲み切れず地も人も飲み込むほどに
問う ....
浅い眠りがぷつぷつ切れて
各駅停車の鈍行便
どこまでも続く雨音
霧のかなたで零れる警笛
深く
時間の底を潜っていく
ナイフのように黒光るレール
見覚えのある景色を切り割き
鈍く軋む
....
蜃気楼
その名で呼んだ色街に
架かって照れてる、夜の虹かも
その過去の
醜聞まみれで死ぬ人生、
夜のうわさの拡散する街
このなみだ
風の奏でる優しさで
洗い ....
あなたから
教わったのは
こころの殺しかた
海に染み込んでいった夕陽は
逆さまの血のしずく
波にたゆたう血の油
何度も殺しました
あなたに気に入られようと
あなたに見つけてもらえ ....
図書館で君は少し死んでいる
少し死んだ体で雑誌を読み本を選ぶ
本は死んでいるから
本を欲する君も少しだけ死ぬ
僕も図書館では少し死ぬ
少し死んだ体で本を借りるとき
僕たちこんな死んだ部分で ....
「詩人になれたら死んでもいい」
と、みかちゃんが言った
「あたしは詩人になれなかったら死ぬ」と言い返した
あんなにあたしたちがなりたかった「詩人」て
なんだったんだろう
私も彼女も
自 ....
琥珀色のぬらりとした
リボンのようなハエトリ紙を
白い壁の間借りした部屋に垂らす
夕焼けに光るそれはまるで
蜜をたらふく蓄えた大樹のようにみえて、
懐かしい実家の情景を誘って ....
{引用=*}
時間もその都度仮面を変える
あなたの役どころに呼応して
悲劇には悲劇の
喜劇には喜劇の
だけど時折場違いな仮面
ピエロの場面に憂いの真顔とか
隠した心を見透かすように
....
{引用=むかしばなし}
幾千幾万の囁きで雨は静かに耳を溺れさせる
まろび出た夢想に白い指 {ルビ解=ほど}く否かためらって
灰にならない螢の恋は錘に捲かれて拷問されて
透かして飲んだ鈴の音も夜 ....
蒼いインクを流し込まれて
世界は行き暮れた
やがて長い夜が明け
暮らしの屋根から細く立ち上るかまどの煙や
打ち寄せられた農具さえ
インクの色に染まっていた
それでも 鐘の音を聞くと ....
今日も真夜中の向こう側から
たくさんの「タスケテ」が届く
本気もあればウソもあって
見分けるのはむずかしい
だけどアタシはとりあえず
見つけた全部の「タスケテ」に
「ダイジョウブ」って ....
雑文
傘と云うものに偏愛がある。
わたしも大昔、滑り台の上から傘を広げ飛び降りた子供だった。
ロートレアモン、北園克衛、アレハンドロ・ホドロフスキー、彼らの ....
祖父の無線アンテナが世界中から不幸を手繰り寄せていた
朝はもう昔だ。ツユクサやイヌノフグリに覆われたあの土の
盛り上がった一角、あそこが祖父を埋めた場所だと、誰から
教えられた訳でもなくずっと ....
今朝も歩いて
一キロ先の氏神さんを
ひとりでお参りする
石段を上り
小さなお堂の前で
鈴を緒でガラガラ鳴らし
気持ちをチャリンと投げて
手をぴったり合わせて
住所と名前を言い
あ ....
やさしいことばで君をえがく
長い髪の、
今は
とても みじかく切ってしまって
君が泣いている
君が笑っている
でも本当は、
ひとり静かに怒っている
縁側でひざを抱いて座ったまま
....
夜空に手が届いたなら、星を触ったなら、
どんな感覚だろう。当たり前に恋をして、
幸せ、そうかな、君のためなら、地球が、
逆に回って日の出で止まる、そのせいで、
星は見えなくなって、それが、幸せ ....
イタドリ
への呼び掛け
イタドリ
からの応答
脳内に再現を試みる
すると現れる
囚われる
熟語
観念
の
繁茂
群生
侵攻
旺盛な生命力
厄介者
文字を消去して ....
歩き疲れてベッドに横になった
からだがスライムみたいに
ひらべったくのびて
平面と化していく
目も鼻も
どこにいったかわからない
耳だけはラジオの音をひろう
手も足もシーツの端から
ゆ ....
どういふことだ
まだ
ひとのかたちをして
星の上にゐる
急がなくてはいけない
廃村のはずれの小さな草むらに
菜の花が咲きはじめてゐる
……風にゆれてゐる
やさしいやうな ....
そう、
僕たちはいつも現場にいる
破片
最低の言葉遣いをする低脳だ
たとえ親が死んでも現場にいるし
無縁菩薩の教えなんてしらないし
5百ミリリットルのお茶が欲しいなんて
誰に ....
隣家の屋根から翼のような雲が見える
朝の微睡みから覚め
膝に居座る悪夢が霧散するまで
蛹の時間
軒の氷柱の光の粒は
瞼につめたいやわらかな真珠
木々の梢を半ば強引に愛撫する風
その風に ....
旅
こころは
しらないうちに
旅に出る
笛のねに さそわれて
むかし 人びとがすんでゐた
海辺の村で
潮風にふかれてゐる
いつになつたら
かへつてくる ....
吹雪はやんだ
静寂が深々と夜を沈めている
遠くで
プテラノドンの悲鳴が響く
ただ一度だけかすかに
電車の警笛のふりをして
吹雪の中をどれくらい歩いただろう
自分の足跡を見つけた時
....
けして、色づく
ことのない実りを空が
見下ろしひとつ残らずあおく
透かして終うから
こころ細く磨りへらして研がれた
ひとみは
ぶあつい掌に覆われて、あめが
しずかに、雪に ....
*
青空ではなく あおそら と
くちびるに纏わる
透けた胎児 月のように
発芽を奥ゆかしくも留め置いた
――エバの種
見上げる大気の透過した青
見下ろす海の反射した青
....
遅い初雪が降った朝
地面は乾き
空は薄雲に覆われて
空気は張り詰めている
刈り残された秋明菊の平たい葉が
上を向いて受け止めている
クリスマスローズの広い葉も
とける事を忘れた雪 ....
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