ぱたぱたとひるがえるちいさな二足のズック靴
幼稚園への近道で
つないでいた手を離し
走ってもいいよというと
かならず笑い声をあげながら
細い坂道を駆け下りていった
その弾む後ろ姿を
おぼ ....
娘の担任の先生から突然メールが届く
件名は娘の名前
かすかな心臓の高鳴りを覚えながら
本文を開ける
文字が目に飛び込んでくる
“She had an accident!”
アクシデント!? ....
?公園に女の子が八人いました。
さらに後から男の子が何人か来ました。
全部で子供は十五人になりました。
公園に男の子は何人いますか??
レスリーは両手の指を曲げたり伸ばしたりしている
....
努力は人を裏切る
努力は人を麻痺させる
努力とは
麻薬だ
努力したことに
陶酔して
努力のための
努力を求め
気づけば
残っていたものは何一つない
憎しみは人を強くする ....
先生が僕を卑怯者と呼んだ
その名前はおでこに貼りついて
やがて
僕の皮膚になった
月日が過ぎて
周りが誰も気づかなくても
僕の耳には
先生の声が時々聞こえた
先生 僕は先生のよ ....
知らない人が記念写真でピース
しゃぼん玉をつくる作法をだれもが
忘れてしまった時代
みずうみにうかぶ
背泳者と油分の分離されない光景が幾日もつづいていて
土手から飽きもせず眺めている人に
私は丁寧に包装した小石を ....
朝の近くで
鳥はそうそう、何ごともなかったように
空の下 奏でている
わやくちゃになった己こころ
沈めたいともがきつつ
ただ座っている
朝が近づく
やっと明ける不安からのかいほう ....
今週の『サザエさん』は一家で福島に旅行する話だったそうだけれど、具体的にはどんな内容だったのだろう? あいにく私はいま異邦人として暮らしているので日本のテレビを見られない。しかし福島第一原発の原子炉 ....
若手漫画家の登竜門としてCOM並びにガロはぼくらの教科書だった。
その女流の中でも異彩を放っていたのがこのやまだ紫氏と岡田史子氏だったと記憶する。
やまだ紫さんはもともと詩人だった ....
「ねぇ、この本の表紙知らない?」
彼女は読み終えた本をわたしに見せる。
その顔にはどうしてないのかわからない、不思議でならないと
いった表情がありありと浮か ....
駅前の連絡通路では南米のバンドが花祭りを歌いながら民族楽器
ケーナとかを売っている
大宮は今日もサンセットFMNAC5でグルーブする街並みは
ソフマップのあるアルシェビルから発信され ....
混沌とした水が透けるとき
言葉を釣り上げる喜びといったら
あぁ、まだ詩をやめられそうにないよ
四月
夜来の雨が軒を叩いて
やんだかと思うと強まって
千の靴音を撒き散らすと
再たふと空のどこかに引っ込んで
猫のように耳を澄まして
南の果てから吹く風の
雄々しい声を聞くようで
....
重大な任を負うときがある
日替わらないランチ
密談の海を冷酷にすすんでいた
感情の海に難破船がゆれていた
黒雲がわれ光の束がさしている
嵐のあとの静けさは自由だった
終わりが始まる
裏切りと
切実が連環する ....
作っても作っても作れない
愛しても愛しても愛せない
中途半端な極道は哭くことさえ許されていない
言葉だけがすくいだった
孤独の淵から這い上がる力をくれたんだ
遠くにある星 ....
口溶けしないチョコレートが
不思議だ
口から 5ミリ四方の
サイコロ状を
舌で押し出すように手のひらに
転がしてみる
やはりチョコレート色のチョコ ....
私は父親の顔を知らない。
けれど私の顔は、父親にそっくりだと
ある日酷く私を殴った後、母が吐き捨てるように言った。
腫れて赤くなった頬を氷で冷やしながら
私は鏡を覗いていた ....
老夫婦が
買い物袋を提げて
楽しそうに歩いて行く
幸せは案外地味な装いで
まだ冷たい風の中
首を竦めて待っているのかもしれない
知らん顔して
何度も通り過ぎて行った
それは自分 ....
雪が僅かに消え残った海岸に
揺れているのは去年のススキだ
長く厳しい冬の間
雪に埋もれて立ち続けていた
ススキはいつ倒れるのだろう
既に枯れているのに
命の抜けた穂を振って
いつまで風に ....
今年はじめて モンシロチョウを見た
まだ畑には雪がかなり積もっていて
道路や地面で アスファルトや地面が
見える所はあるけれど 花は咲いていない
蜜はまだないよ
ひらひらと 春めいた陽射 ....
晴れた眼差し
明るい歯並び
踵の擦り減った靴が喜んでいる
コンビニまでの三百歩の散歩
晴れた声色
明るい口答え
言葉はうっすらとシュガーコートされて
許容範囲が拳二つぶん広がる
....
みんなが難しい事を言っている
時々、僕はそう思うんだ
そんな時でも お星様は回っているし
太陽も月もせっせと動いている
足を止めて、口ばかり動かしているのは
きっと、人間 ....
フェルマータがまばたきした
殺人罪はない
トラウマ
”trauma”
心的外傷
夢とも
傷から滲む
エッセンス
覚めない
連続が
眠りを眠らせぬ
目覚めている様に
表皮と内奥に
....
湿った手のぬくもりや
かかを探して泣きだす姿
そんな幼子の始まりが
泣きたくなるほどいとしくて
この腕に抱きしめる
弟が、壁に短い線を引いている。
それをくりかえしている。
何を書いているの、と訊ねる。
雨、と答える。
わたしは傘をさす。
テレビは激しい雨音。
大雨、洪水、注意報。
誰かが言った。 ....
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