いつか見えていたはずのなにかを見失って
何者でもない私は
何者にもなろうとしない
乾いた空のカップと
虚無を食らい続ける秒針が
私を生きることにあきらめた私に
無限に重 ....
春を待てば
冬を追いかけることもなくなる
空が白い
雪も
ことばもどこか
白濁するような気がして
ガラスを磨くように
推敲してしまう
幾重にも層ができ
こころの内は形を失う
....
どれほどに恋焦がれしも
添えるか添えぬは
ひとには分からぬ浮世の定め
永久なる硬き契りを交わしても
いつかは千切れしこの世の定め
惚れて惚れられ来世も共にの
誓いし言葉も虚しきまほ ....
ぼくはポールマッカートニーだ
レットイットビーを聴くたび
いつも勝手にそう思ってしまう
解散したくなかった
みんな
遠い心になっていた
奔走したんだ
ねえ、母さん
ぼくは分かりません ....
ドビュッシーがながれる
そぼくな悲しみが
山のなかの
森のなかの
鏡のようなところに
妖精になって集まりだす
音楽は時間だ
時間のひとつの愛し方だ
コン ....
いつからだろう
わたしがわたしに
なれてしまったのは
やわらかなしかくい世界で
まるくなったとしても
とがってみたとしても
しか ....
なぜあなたは顔を少しだけ見せて
ほかの所へ行ってしまうのですか
諭吉先生は僕を嫌ってるのですか
聖徳太子はそうじゃなかったのに
僕に寄り添いつづけてくれたのに
聖徳太子は僕を愛してくれた ....
あなたは明るいけど明るすぎる
あなたは元気だけど元気すぎる
あなたはとっても素敵だけど
ちょっと疲れる
見ているだけで疲れる
弱ったわたしには
ごめんね
回復してから また話しをしま ....
夜行バスはどこをめざしてゆくのだろうね
彼女は旅行雑誌の安い旅先にのるのかな
闇はやわらかくひろがっている
人間はどこまで自分をつくりかえられるのかな
カルマ=人間の業は命 ....
子供の頃
ぼくは信じていた
何処か遠いところに
黒い湖があって
そこには首長竜が棲んでいる
(お父さん
黒い湖はどこにあるの?)
ぼくが尋ねても
お父さんは何も答えずに
....
新しいマンションに引っ越すため、
なにしろ、
家具はぜんぶ揃えなければならないのだから、
ひとつひとつ、
嫁と探しに行くのだけれど、
ぼくは内心では、
夢もあるのだ。
ひとつの部屋は書斎 ....
不幸の似合う女優さんって
近頃みかけないよね
それだけおんなが幸せになった訳ではなさそうだけど
ひたすら運命と向き合う生き方って
求められていないのかな
※
冬の日差し ....
買えません愛がどこかで売ってても お金が無いし働けないし
拾っては捨てる神しかいないのか次は死ぬまで愛されてたい
本なんて読んでる場合ちゃうかった正面の席美女座ってる
右腕にマリコ命 ....
Y 八歳の女子として親に質問した
「ねえ、どうして結婚したら赤ちゃんが生まれるの?」
返事はいまや失念
「ねえ、どこから赤ちゃんは生まれて来るの?」
「眠っていたからわからない」納得する
....
石がひとつ
広くもない池の真ん中に投げられた
その落下点を中心に水の輪が
ひとつまたひとつと
同心円となって広がっていく
きみのこころの池に
石を投げ込んだのはぼくだった
そのぼ ....
冬の朝
まだ暗い
しずかな夜
上澄み液みたいな夜
冷たさが柔らかい
鼻先が
頭が肺が
きよめられてゆく
激しい闘争とは縁遠い
曲解への苛立ちとも縁遠い
あくびをすると目が冴える
....
今夜こうして詩を書くけれど
世界中にある様々な不条理や
悲しみや痛みを知らない訳ではない
この国を覆う様々な矛盾も
今こうしている時にどれだけ多くの人が
不安に慄いているかも
ただ今夜 ....
彼女はこっそりと
自分の部屋のクローゼットの中で
自分だけの神様を祀っていた
一般に、である
神だとか 宗教だとかは
全く馬鹿馬鹿しい物で
馬鹿馬鹿しい物を本気で信じる人間は
奇異の ....
「寝てる姿と食べてる姿がかわいいってずるいよね。」
男友達が昔の彼女に そう言われたんだって
嬉しそうに話していた友達
今でも信じられない信じたくない
友達は たぶん 一生病院の中で暮 ....
かける かける
鍵を かける
うみが 飛び出さないように
ひらいための まぶたの先から
うみが 飛び出さないように
....
早朝に
冷たい北風が吹き荒れて
庭の山茶花が散っていた
そこらじゅうに
真っ赤な花びらがてんてんと
血のように落ちている
家の鬼門には赤い色
魔除けに植えられた山茶花だった
色彩の ....
たとえば
想い出行きの列車の切符があったなら
僕は迷わず買っただろう
雷が鳴る雨の午後
胸のジッパーを握りしめて
心細さを振り切るように走った通学路
修学旅行の帰り道
玄関を開け ....
暗いそらのした
森の樹皮質のぬくもりが、
重さをました広大な冬の夜をささえている
不思議な安寧をやくそくされ
みちびかれるように 生きる
神々しく 雪をいただいた山のうちふところで
....
僕はジミヘンドリックスになりたかった
ギターがまるでおもちゃみたいにね生きるの
きみにあえないときもギターを弾いている
シェリルクロウのように歌えてエルトンジョンのよ ....
愛する哲学者は『神は死んだ』と
我等に告げた 我等に教えた
その言葉は間違ってはいない
哲学者の言う通りすべての神は死んだ
そうでなければこれほどに
世界が無秩序で残酷になるはずはな ....
車庫へ還らぬバスは
停留所にも停まらない
ただ辻々で
わずかな客を乗せて行く
代金は要らない
誰もが代償を払っているから
今日は五人だけ乗っている
眼鏡を失くした男と
手紙を置いて ....
はじめに
ことばはなかった
からだひとつで
うまれてきた
わたしたちは
いつしかことば
そのものとなり
やがてことばとともに
きえていく
夜とは本来暗いものであったということを
思い出す頃には
すっかりと目は闇になれ
波の形のいくつかをくっきりと認識できるようにはなっていた
釣りとは本来寂しいものであったということを
思い ....
どこか静かなところへ行きたくて
あなたは本を開く
ぼくはすでに
本当に苦しい時にしか飲んではいけない薬を使い果たしていた
時は残酷ではなく むしろ紳士的な優しさで
少しずつあなたを 分解 ....
真っすぐに投げ入れられた測錘――
それが判断であるなら
縦であろうと横であろうと
無方向でも
その力積が真っすぐでありさえすれば
縦となり緯は定まる
驚嘆すべきほどの前判断がその位置を得て ....
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