庁舎の旧館は通風が悪い
 配席の奥まっている課長のデスクまで
 冷気は届かないから
 窓を 通常開けておきます

 出張先からまだ還らない課長に
 明日午後の会議の資料を机上へ置きに来た ....
 朝のスープの
 セロリの香り

 悲しかった様な気がする昨夜の夢を
 おぼえていない 朝の靄
 一匙ごと かるくスプーンを動かしていると
 一口ごと すくいとられて胸の中へ流れこむ

 ....
 六月はもう
 むし暑く
 医療用コルセットを巻くと
 腹部が汗でむれる

 窓の外を見ても
 空はどんよりと深い水の色
 濃すぎる緑に
 むせ返りながら
 ものうく

 大気は ....
 ある晴れた日に一軒家の庭で
 赤い五枚の花片をしっかり開く大きな花を
 母と見たのは昔の話
 花の名前が思い出せずに 覚えた小さな胸さわぎ

 茎が真っ直ぐに伸びた葵科の花
 「この花は ....
 
 仮設足場組立工事が始まると 
 いつの間にか ダークグレーな防音シートは 
 しのつく雨に暗く、まるで
 封建制度の時代にたてられた牢獄の様に
 そびえていた

 からだのモヨウが ....
あこがれとあきらめは一本の棒の両端だ
わたしはあきらめを手に取って
虚空の真中を指し示す
逆ではだめだ 間違っても
あきらめこそがあこがれを純化し
手遅れだからこそ輝きは増し加わる
処刑台 ....
おふとんとわたくしの
さかいめがおぼろげ

すなのこまやかさで
ぬりこめられて

まぶたをきちんと
とじたまま

きょうのしごとについて
まとはずれなだんどりをくりかえす

お ....
 会社の敷地内にある貯水池に
 六月の雨が
 ひたすらに降る

 ヨシが競いあって緑茂らせ
 水中は水草の藻やアオコで光も遮断された
 濁った水面に 呑みこまれていく雨の音

 空もな ....
起床してシャワーを浴びながら30秒でイク、ブレインテック AV を観た
着替えるとレンジグリルで冷凍のモーニングセットを温めながら
エスプレッソマシンでカプチーノ・コン・カカオを淹れる
マネクサ ....
はじめ 波に生まれた感情
つのり 膜をゆっくり震わせた
音は 太古の海を あたためるような
音楽となり いのちを紡ぐ

例えばそう
ひかがみ、おとがい 耳朶 耳穴
それら座標が 定めにく ....
 
 熱帯植物のあでやかな緑生い茂る中に
 消えていった友人の後ろ姿
 
 呼吸の度 緑の香が私の心染めてゆく

 樹々の名前など知らない
 私の身体中が
 心中が
 熱帯樹のしめり ....
 水面を埋める
 蓮の葉が
 大きな葉っぱばかりでなく
 伸びた茎の先々で
 小さな葉も立ちあがり
 陽を透いて
 静かになびいている

 まるで{ルビ摩周湖=カムイトー}の様な水辺に ....
子が産まれる、とわかって、
しっかり喜んでみたのだが、
まだ、わからないのよ
そうか、まだわからないのだ
無事に産まれてこない胎児たちもいる

産院の、陽がよく入る待合室
お腹の大きな妊 ....
路上に散らばった散弾銃の薬莢を拾いながら朝早くから昼過ぎまでずっと歩いていたんだ、それが本物かどうかなんてことはどうだってよかった、サバイバル・ゲームに使われるチープなものだって全然かまわなかった .... 夜の雨は何かを伝えようというのだろうか
泡立つように一つの感覚が芽生えてはうなだれ
いつもように日々が過ぎていくのを
僕は目を少し開けては眺めている
昨日少し生まれ変わり、風の子供の歌を聴いた ....
 輝いた肌を白シャツで包み
 黒い目を持ち
 広い肩を持ち
 その人は今日
 目の下や口の周りに軽い擦過傷があり
 絆創膏を貼っていました

 柔道部に所属していて黒帯なのは知っていまし ....
 僕の隣に立つ女は長身でショートカット
 切れ長の吊り目が奥二重
 パーマのかかった短いまつ毛
 手に布製のブックカバーを持っている

 ああ、どうして彼女は
 こんな下地の色に淡雪の様な ....
 
 日の傾いたまち角で
 ふと立ち止まってながめ見る
 昼顔
 香り無く素っ気ない素振りに見えた薄ピンクの
 一日花

 そのアナタが一瞬だけ、わたしへ
 ふるふるっ と 照れくさそ ....
あ、風くる、風くる、土曜日の公園で急に磁石のように方角をかえて真鴨の黄色いクチバシのように極端に長い、先の尖ったヘルメットが思わずぼくの眼球にぶつかりそうになる。そんな被り物をした一人の中年のメガネ男 ....  灰色の空に
 厳しい線を画いている古城の天守
 何百年の年を支えてきた様に
 あなたは私へ
 愛を 支えようとしてくれている

 それなのに
 私は人の心を
 見つめられ
 ない
 ....
駅前で少し遅めの「朝定食」を食べる。
ご飯、焼鮭、大根おろし、味噌汁、生卵、漬物という定番だ。
客も少なく静かなテーブルに座り、ゆっくりした朝を過ごした。

バス停がある時代を生きている。僕は ....
過去も未来も
遠いところなんてものもなくて
ほんの少しの場を
くり返し くり返し
生きているのかも

眠るたびに
改ざんされる
フロッピーディスクほどの宇宙
私は何にでもなれるし
 ....
 熱いゆげをわけて
 ちりれんげですくって
 ふう ふう 吹いて食べるのです

 舌の上にのせた豆腐が
 かすかに香って崩れる時
 ふと時間は逆戻り

 勤め帰りのスーパーで
  ....
夕方、アイロンをかけていると
背中のすぐ後ろまで
海は来ていた
昔と同じ懐かしい波音が聞こえる
泳ぐことは得意ではないけれど
波打ち際で貝を拾ったり
足の指の間にある砂が
引いて ....
 さっきから私の背を追ってくる
 オヤジ節の様な咳払い
 切れない痰のしつこさに男はどんな顔しているのだろう

 振り返り見ず 歩く私の前にはさっきから
 くるくる回る
 まぶしい笑顔のデ ....
CERNそれはちょうど赤い夕暮れのうつりこんだ道路の水溜まりだった。道路わきの草むらにはおそらく子供たちが忘れていったであろう白い野球ボール、水面にはちょうどあのときのCERNたしかにこんなあかい夕暮 .... 窓を開けると五月の風と一緒に
校長先生が入ってきた
自分で握ったんだよ、と
おにぎりを食べてみせ
そのまま駅のプラットホームに並んだ
太陽の高さや空気の感じなどで
今日が午後であることはわ ....
 京都駅構内のアスティロード商店街を抜けて
 おもてなし小路を行くと連れの彼女が独りごちる
 「うわ、六百十五円やて!」

 何事かと 彼女の視線みると
 老舗珈琲店の店先ショーケースにはり ....
 電線に冬の風がやって来た夜
 その女と逢いました
 赤い上衣も黒いスカートも
 くたびれて見えました
 デブッチョの男の腕にすがりながら
 女はキャラキャラと笑いつづけていました
  ....
幼い頃から崖があると
覗き込む癖がある
特に興味があるわけではなく
崖の下に何があっても
それはそれでよかった
街中
路線バスの中
会議の最中など
崖はいたるところにあって
時々 ....
そらの珊瑚さんのおすすめリスト(8382)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
ひぐらし- リリー自由詩3*23-6-9
ひとつの歌- リリー自由詩4*23-6-8
身じたく- リリー自由詩4*23-6-6
紅葉葵[まち角4]- リリー自由詩6*23-6-4
ニュータウン[まち角3]- リリー自由詩4*23-6-3
転生の樹- ただのみ ...自由詩2*23-6-3
おふとん- 日朗歩野自由詩13*23-6-3
蛙の王様- リリー自由詩3*23-6-3
ちんぷんかんぷん- atsuchan69自由詩4*23-6-2
ひとつの音楽- soft_machine自由詩223-6-1
温室- リリー自由詩5*23-6-1
蓮の葉- リリー自由詩2*23-6-1
羊水- fujisaki自由詩723-5-31
誰かが遠くで笑ってる- ホロウ・ ...自由詩3*23-5-29
動けずにいる- 山人自由詩8*23-5-29
銀紙- リリー自由詩4*23-5-29
グラデーション[まち角2]- リリー自由詩6*23-5-28
昼顔[まち角1]- リリー自由詩6*23-5-28
サンドイッチマン- 本田憲嵩自由詩1023-5-28
曇天の城- リリー自由詩3*23-5-27
通行人1- 空丸自由詩923-5-27
睡眠- 日朗歩野自由詩5*23-5-26
湯豆腐- リリー自由詩9*23-5-26
背中に海- たもつ自由詩423-5-25
- リリー自由詩3*23-5-24
CERN- 本田憲嵩自由詩3*23-5-23
失投- たもつ自由詩423-5-23
アップルパイ- リリー自由詩8*23-5-23
寓話- リリー自由詩3*23-5-22
夜空を見上げる理由- たもつ自由詩623-5-22

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