恋をしている
が
窓をしている
に見えて
そっちの方が素敵だと思った15歳
青春の炎がみちみちて
いなかった
家の壁が
へっこんでいるので
女ばかりのこの家で
誰がそんな乱暴ち ....
この糸のほつれをそっと咥えて
赤錆びた握り鋏はその蓮の手の中――
信仰と諦念の{ルビ臺=うてな}に眠る 享年「 」
景色の皮膚を剥がした
耳は遠く
階段を上り下る
橙色の帽子 ....
人は反射する鏡なのです
だれかをよわいと思うとき
わたしがよわいのです
だから感じることをやめなければならない
わけではない
人はほんとうには
神器そのままではありえないから
....
隣人は透明な猫として現れる
薄明の線路の上を
囁きながら 死者を乗せて
一本の列車が発車する
台風がそこまで迫っていても
わたしたちの窓は 安全だ
有刺鉄線に蔽われた東京の空を
....
雨に囲まれた待合室に坐っている
だいぶ長いこといる気もするし
そうでない気もする
入ってくる人もいる
出てゆく人もいる
以前もここで
待っていたことがあるような気もするし
ないような気も ....
アスファルトゆらり
とけるように
燃えるように
人波ゆらり
おちる汗
夢の中をさまよい
歩みを進める
一歩 一歩が幻
都会のジャングルは
熱 帯 夜
カラフルな花
咲き乱れ
....
青い裂果
光の手中に墜ち
さえずる鳥 ついばむ鳥
文字へと変ずるか 黒く蟻を纏って
大気に溶けだす肉体は祈り
小さな動物の頭蓋のよう
未満の種子 生を宿すこともなく ....
私の名はライザ143527055@a
もうしわけありませんがあなたを容認できません
ときどき小鳥が窓辺に遊びにきます
名前はないという小鳥です
私の名はライザ143527055@a
....
このからだのなかに
ながれているものが
うそ
にならないように
てをあわせます
ことしも
まだなんとかひととして
いきてます
あなたのとなえも
こころからであれと ....
――水脈を捉え ひとつの
薬湯のように甘く
饐えて 人臭い
廃物の精液
輸入された
どれだけ銭を洗っても
どれだけ子を流しても
....
マダ ツカナイノカ ネー
かぼそい声の
母は 床ずれをした背中を
不自由によこにする
白いベッドのシーツから
石鹸のにおいがする
アア エキ ....
離別すること
それははじまりである
丸い空が
しわがれ声をあげて
許しを乞う
そのとなりで
友はしずかに
そして
激しく雨になる
空がにわかに
なまりを
たくわえてく ....
あなたは一体
何処から来たのでしょう?
あなたは、あの日
たった一粒の種でした
一粒の種の中には
「他の誰でもないあなた」という設計図が
小さく折り畳まれ
ぎゅっ ....
風のグリッサンド
娘たちのうなじ
蜜蜂の囁きと遠い銃声
耳の奥 深く 深く
雨のアルペジオ
素早い波紋のダンス
生まれ 出会い 干渉しあう
飛べなくなった蜜蜂は冷たい
....
十代の恋は幼く
大人びた香りがした
あの夏の日暮れの
夜が落ちてくる手前の街を
指を絡めて歩いた
あなたの指は
ほそくしっとりとして
引かれるまま道を歩く
足取りはひどくゆっく ....
高潮がとどかない
岸の家
朝霧につつまれて
素描のようにかすれている
ざわめきがとどかない
途切れた鉄路、廃石の丘
みすてられた彼岸に
まぼろしめいて建って
此岸の水面のかがや ....
空の青さが濃くなる日
木の葉も緑を濃くしていた
さくらこぶしりらこでまりなど白っぽい花が終わり
赤いサルビアが揺れる頃
濃い血の色をしたワインを飲み干し
ラベンダーの香りが漂う
....
1
水のせせらぎのかぼそく落ちてゆく音の
さらさらとそよぐ 細い川が立っている
あるいは川面に映る 黒髪のなびく樹木の体幹
水面を揺らす風の冷ややかさでつるりと象られた
細ながい球 ....
{引用=おーさまーのみみはろばーのみみー
あれじゃなんにもきこえない きこえやしない
らんらんらんらん らんらんらん らんらんらん らんらんらん
みんなでうたおうらんらんらん らんらららんらんら ....
わびしい 町はずれでも
僅かばかりの音がする
野鳥の羽ばたきもきこえる
太い音は佇んいる
細い声は蹲っている
青い風は歩いて ....
いつか死の床で吹く風は、さらさらとして
すべての記憶をさらうでしょう
むせびないたかなしみは
いずれ天にのぼって雲になり雨とふる
信じているうちは遠ざかるものは
なにもおもわなくなるとき ....
その美の真中に隠された荒野に
どうか 花ひとつ
植えるだけの土地を譲ってくれませんか
血の滲んだ足を隠して走り続ける旅路のどこか
ほんの一歩か二歩
見守る場所を許してほしいのです
....
マスターに会った
仕事帰りの立ち寄った100円ショップ
たまたま見かけて追っ掛けてきてくれたようだ
グリーンのパジェロミニ
助手席にはkさん
マスターと一緒に
お店を切り盛りしてきた
....
飛魚が跳ねた
決して飛んではいないが
それを目で追う切っ先
閃光と刹那
汗を振り切った海面
四ミリメートル違った心
真空をまた飛魚が跳ねる
飛ぶことはないはずが
生きてこそ
その三六 ....
繰り返される日々の中で
身も心もすり減ってゆく
紫陽花が咲く坂道を駆け下りる
雨色の風が頬を撫でる
ここまで生きてきた
どこまで行くのか
わからぬまま
歩く
蛍火はなつかしく揺 ....
夕日が地平に没しても
なお 街々の西の空が
かすかに明るみをおびている
足を止めて
やや赤みがかった
仄白いものを
見ていると
無性に泣きたくなっ ....
言葉でも
抱擁でも 違わなかった
はず
薔薇に囲まれた
木製のベンチでも
暖炉の前の 刺繍の施された
英国製のクッションでも
違いはなかった
はず
禁断の欲情を交わすには ....
動かない水の上に
架かる小さな橋に
枯葉が一枚一枚
落ちる
たびに
思い
出してしまいそうになる
地図の上に屹立する白い
直線 とか
影
だけが見えた猫の
鳴き声 とか
煤 ....
{引用=どうかあなたという揺るぎない現実に対して
絵空事のような恋情を描くわたしを許して下さい
これらの時代錯誤で大げさな言い回しは
詩人気取りの馬鹿な田舎者がそれでも言葉だけ
精一杯めかし込 ....
皮脂で汚れ切った車窓越しに
遠ざかる
街の灯を眺めている
真っ当に生きて
正しく幸せになることが
こんなにも簡単だと気付くまでに
随分と
遠回りをしてしまった
....
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280