チョコレートにリキュールで
モーツァルトらしい
モーツァルトを聴かせて作られた
蔵粋らしい
酒にモーツァルトを聴かせたものらしい
くらしっくと読ませるらしい
生きてる間に聴くも ....
水沫の上に
都市が建ち始めた
人が溢れ出すと
歴程のいくつかは消えていった
句読点が住んでいる一画には
本日もそぼろない風が吹いていて
生きることは疲れるね
生きることは美しいね ....
初めて贈った
お手紙には
何を書いたか今となっては
たぶん初めて化粧をしたときのような
恥ずかしさと酸っぱい胸の
はつ恋
それから何年もあと
さみしく笑うから
暗がりを求めて
....
街が目覚める頃
電車に詰め込まれ
肩が触れ合う
一瞬の繋がり
それぞれが抱える
一日の憂鬱や希望
窓の外には
刻々と変わるビル群
プラットホームに
爆破したみたいに
飛び出す
そ ....
あなたにとってのひと刹那が
わたしにとっての100光年かもしれません
わたしの声がとどいていますか
あなたの風景の一小節として
夜はきらいです
たくさんのことを思いだすから
恥ずかしく ....
五線
5銭
いちどの付箋、口笛
付箋、聴こえた
スマホのアラーム、ペットボトル、天井、壁
冷蔵庫、玄関、手袋と靴、ドアから階段
ゴミを捨てた息白く
つながる、つながらないか
....
早贄みたいに残された
だれかの祈り
吹雪きの中
目くばせする
硝子のような時を隔てて
木の実を爪繰る
指先に
小鳥の心音
あなたの長い舌が
耳の奥まで入って来ると
つめたい ....
[郷愁]
昔
小学校の理科の時間に
習った
雨は
空にある記憶の破片ひとつひとつに
水蒸気が付着し
それ自身の郷愁の重さに耐え切れなくなったとき
地上まで落ちて来るんだと
....
月に貴様、爪先に傷。
つきにきさまつまさきにきづ
声のキツそうな嘘吐きのエゴ。
こえのきつそうなうそつきのえご
善い島。同感が疎ましいよ。
よいしまどうかんがうとましいよ
....
川口の方へ
バスではこばれていると
ひかりに透かして
平熱の町が浮かんだ
病院前駅では
うかがい知れないおもいに黙るひとたちが乗り
次の駅で降りるボタンを
別のひとがつよく押す
一様に ....
ずっとむかしの
波しぶきの化石を並べて
もう聞こえない声の数々は
糸を曳くように飛び交う
白く露出した骨は
もう痛みを感じないから
少しずつ折り取っていく
日記みたいな作業
遠 ....
石ころになりたかったんです
道のはしっこで
誰の目にもとまらないように
ときどき蹴飛ばされても
誰のことも恨まないような
ちいさな石ころになりたかったんです
たいせつな物は思い出の中に ....
三輪車コロコロ転がして
ゆるやかな坂を下る道、
わづかに小石遊ばせて入る
梅林
手の届かない
白くかすんだ花
ちらつき始めた小雪が
桃色のカーディガンに降り
いつ ....
背中で赤いやつが暴れてやがる
一生消せねえ黥の幽鬼だあ
酒と博打で女房は消えちまった
寒空に震えても、背中はいつも火達磨よ
地獄の鬼が暴れやがる、燃えやがる
のたうち回って転がったって
....
舌から舌へ
鈴はころがった
光は溶けた
音は影のよう黙っていた
あなたは三度
わたしは二度
相槌みたいにまばたきして
天蓋がはぎ取られると
屈葬にされた白骨が二体
愛は愛という ....
あなたの知らない星にいる
わたしは昨夜ないていた
どれだけ涙を流して
声を上げようと
知ることのない
あなたは
わたしの知ることのない星にいる
思い出せばついさっきのよう
なのに
....
テレビの画面上の竜巻警報
思わずギョッとする
表示したかと思えば消え
また表示されてから数秒で消える
「そういえば」
私は思い出す
職場の昼休み
ランチを食べに行った帰り
職場玄関 ....
冬の窓辺に立つ
枯木立の間から
キラキラ笑いながら
転がり出てくる子供達
寒そうな雲間を
名前も知らない鳥が
矢印になって渡っていく
冬の窓辺に立つ
だぶだぶの
....
{引用=
夜の終わり、ねむり、やがて抱き合って半透明になりながら夜空へと浮遊してゆく存在たち、存在たち、灰色の雲の膜を張るように、あの輝く満月に一つになりながら覆いかぶさってゆく、覆いかぶさってゆく ....
冷気を嗅いで手繰り寄せる
黒い焔 死せる舞踊者
太陽との距離を測りながら
夢を滾らせる
からだは形を逃れ
こころは殻を得た
重なり溶け合う
不可分の同一
全感覚でまぐわうように
世界 ....
財布の中に右耳を見つけた
最近コインの音ばかりするな
と感じたのはこれだったのか
お金を取り出して
代わりに草原を入れておいた
これでいつでも
風にそよぐ草の様子を
聞くことがで ....
裾に吹雪をあしらった
むらのない雲をまとい
忽然と 瞳に降り立った
白き盲者 太陽は
この網膜を滾らせて
まぶたには収まりきらず
毛糸の手袋にくっついた
固い玉状の雪の欠片が
あた ....
破壊と再建の繰り返しで
歴史は編まれている
恐怖 ショック 残念
悔しさ 闘志 アクション
様々な編み方が共存しながら
延々と編まれ続け
時点時点の結果がそこにある
今日は三 ....
眼に泳ぐ精子たち
電子を帯びたきみの姿見
幾数年もわたしの前を歩いている
ひとりごちに浴する勝手が ....
冬日さす
湖面を西風渡り行き
岸の石垣でひとり聞き入る
しづかな波の音
水鳥が、あちらこちらで
織部色の小々波についと潜り
また現れて陽を浴びつつ
光っている
冠 ....
人生を捻じ曲げる、
まっすぐに終わりへとむかう
ひどく短絡的な直線を
乱暴にぐいっ、と曲げる
きっと皆は、この僕が
まっすぐ進むと思っていただろうな
でも突然、進路を捻じ曲げたから
....
口に出すほどのことでもない
君たちに大事なものが
わたしにも大切に思われる
そんな時もあるだけ
よこを歩くひとりのあなたを
きいろい満月みたいに見ている
足もとには銀河が広がって
わ ....
こたつに眠るねこを
羨みながら 外に出る
今日もあなたのいる場所へ向かう
小雨が 雪に
ここは山だから
どんどん降ってきた
強い風に消えそうな灯しびを
手でふさぐ
あわてて落ち ....
君が去って行った方角から
雪の匂いがする
さようならと引き換えに
雪雲を連れて来る
笑い合った日の空気は
すっかり消えてしまった
どんなに懐かしんでも
現実に戻ることはない
儚い夢のよ ....
かわいた月は夕間暮れ
水気をとりもどす
井戸底に 灯る骨
白く鳴り
つめたく響く 唇は
もう血肉を夢見ない
かつては跳ねる想い
着物を乱し帯を解き
胚芽から
鋸状の風が渦を巻いて ....
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