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石積みの朝
陸橋はその歪んだ影を
路面に落とし
昨日までの工程を語り終えると
あなたは静かに
最後の生理を迎えるのだった
+
足音が擦り切れていく
あなたにとっ ....
きみが帰ってこないあの日から
砂時計の砂はさかさまにこぼれて、こぼれて、
しだいに、ちいさな子供になってしまう、夜
遠くで、つぶやくきみの言葉が、わたしの名前だといい
そんなふうにして ....
酒場でひとりグラスを傾ける女を見かけたら
ほっとくのがいちばん
そんなのは性悪女に決まってる
吸ってる煙草がタール7mg以上だったら
まず確実に性悪ね
子ども生んだことがなかったらなおさらね ....
こうして
外気の暖かさをできる限り
忘れるために
頭をのけぞらせていると
窓から見えない方向で
夜が
明ける気配がした
外に出たらきっと
向かいの家の窓に二、三十年
前の景色が
....
わたしたちは、
とても多くのものを、
知りすぎてしまったと思うの、
彼女は言った。
短い晴れ間に雲がさすこと
宇宙は青緑に澄んで
見えない星をあるものにした
わたしたち ....
なんで千切れていたのかな
あのバス停には、蝉のからだがおちてた
きっと、
もう何回も死んだのだとおもう
されるがままになっている時は、
「どうかあなたに触れさせて」と手を伸ばしてる気持ち ....
A fond, A fond,
もっと 振って もっともっと
どこか遠くへいきたいな
おねえさんがそうつぶやいたのを聞いた時
世界には
どこか遠くがあるのだと知って
突然、彼女はあこが ....
地下鉄の風に背中を押されて
階段を下れば
ホームの端を
黄色い凸凸道が
何処までもまっすぐに伸びていた
いたずらな風が
吹けば
すぐによろつく私だから
凸凸道の内 ....
半蔵門って何処だ
紫の帯の地下鉄が開通したとき
まず思ったのはそのことだった
銀座/丸の内/日比谷/東西/千代田/有楽町
方角を示す東西以外の路線名は
東京近郊で産まれ育った僕でも
....
ヒトのかたちを持たない
友だちが
殖えている
わたしのマイミクシィは
ついに五十をこえた
文字で言葉を話すから
人間なのだろう
とは限らないけど
ふと思う
彼らはた ....
私の頬から飛び出して
パソコンの光でキラキラと輝いている膿を指し
あなたは「うつくしい」と言った
プログラミングをまちがえてしまった
キラキラしたものがぜんぶうつくしくみえるあなたは
と ....
日比谷線のホームに
きみと立つのは初めて
一人で会いにきたよって言って
褒めて欲しかったんだよ
大好きだから名前を呼ばない
そんないじわるだって流して欲しかったんだよ
流線型の街が私と ....
この街でいちばん美味いという
来々軒のラーメンを食べていたら
いつまですすっても麺が途切れない
適当なところで喰い千切ると
あなたはひどい人だ
という声がした
たぶんメンマが言った ....
あれは 炎と 誰かが言ったが
つかむものはいなかった
祖父は 過去へ向かい
一閃に 死体を 乗せていく
それらに 名がつく事はあっても
私の 怒りは 極めて 加工される
抑揚を知らない ....
命をわけたシャボンが
あまねく広がる田の空を
おもむろに這いのぼる
シャボン、シャボン
あなたを見上げて
遠く咆哮を響かせます
置いていくなと、低く
低く唸るのです
大地を ....
三日月のポーズで夜を待つ
指先から足先まで
血のめぐる音が聞こえる
無音の闇に呑み込まれぬよう
しなやかに たおやかに
三日月のポーズで夜を集める
U字磁石みたいに
N極とS極が ....
ひき肉を買った
何だか退屈な日常を少し変えたくて
冬のわりには暖かく
スーパーは少し込んでいる時間帯で
特売ってわけでもなかったけれど
料理レシピのサイトでふいに思い立ち
ひき肉
....
ねえ、ごめん、
なさい目の痛みがないのは、
まっすぐ見た、見て、いる、はずなのに。
ある、ひ、かり、に、
踊るように広がって、白く、
飛んでいる、魔法、に、なって、
触れたもの全部 ....
夏の午後 影は濃く
姿勢の正しいあなた
まっすぐにねむる
貝殻のボタン
ひとつ失ったまま
くんと伸ばしたつま先から
夏が逃げてゆく
砂がはらりと落ちる
そして落ち続ける
傾い ....
野良猫たちよ、死ぬ前に教えて欲しい。
お前たちが、何処で死ぬつもりなのか。
住宅地の陰から黒猫が姿を現す。多分、
その旅の、途中ではない。びっくりして逃げ出したから。ーあまりの僕の不幸さに。 ....
あなたがそばにいるだけで
まわりが海に変わる
ほんの少しだけ夜のような
ほんの少しだけミステリアスな海
このまま小さな魚になって
あなたのまわりを漂っていたい
あなたは私の梢を揺ら ....
電車の座席に揺られると
素知らぬ顔で睡魔が襲ってくる
この瞬間も手が止まって意識が飛ぶ
気が付くと携帯電話のバックライトが消えて
真っ黒の画面が虚しく光る
(この機種はどうしてこんなに早 ....
口語の時代はさむいがその寒さの中に ※2
自分の裸をさらすほかない時代
ひとつの恐ろしい美が生まれた ※3
三角さん、錯覚しなければ ....
東京タワーに陽が刺さる時分に煌々と輝く
窓から漏れる明かり 色とりどりの街灯 魅惑のネオン
徹底的に破壊的に光の砲撃は闇に報復する
茜色の夕雲はつかの間の闇の扉であった
それは遠い遠い昔話
....
あなたとはもう何回も
っていう気がするから
しない
例えば三年前
あなた会社の後輩だったわ
あんまり可愛かったからつい
五年前のときは
友達の結婚式の二次会で
あなた新郎の友達だったで ....
モラトリアム、
という響きの甘甘しさ
ポストに届いた
夕刊には
今日一日のこまごまとした出来事が
刷り上がっています
口にふくんだドロップが
とけてしまわないよう
息をとめまし ....
「冬だからね」
ああ 冬だからね
花が咲くには寒すぎるから
フラワー団の悪事もめっきり少なくなった
怪人水仙男との対決はすませたばかりだし
先日は駅前で一般人に果実を根こそぎもがれて ....
眠っているうちにどこかで何かが季節のトリガーに指をそえ
明確な透明さでもって入れかわっていく空気 大気
凍てついた日々はよくしたもので
人々には何かと集う理由があり
入り組んでいる関係と熱気が ....
忙しい日々から逃れ
疲れた体を暖めようと
平日の{ルビ人気=ひとけ}少ない温泉で
頭の上にタオルをのせて
露天風呂に沈んでいた
ゆげの立ち昇る
水面に
現れては消えてゆ ....
信号待ちの車の中
ふいに
シチューの匂いが
忍び込んでくる
こんなに濃厚なシチューを作る
幸せな家はどんな家だろう
と思うけれど
走り出した車の中
すべては押し流され
....
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