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軋む
一歩ごと
軋む
心ごと
逃げ込んだ森は
甘美な瀞が満ち
わたしは愛しい景色を
凍る爪先で犯してゆく
痛む
一言ごと
傷む
一夜ごと
明日を司る月が
昨日 ....
追いかけている背中は
とても遠いもので
積み木を崩されるだけが
この街のすべてじゃない
あなたを追いかけているようで
僕に追いつきかけている
手をのばせば繋いでいるようで
もっと違う ....
さようなら さみしかった世界
忙しいたましいたちが
3丁目のスクランブル交差点の上をやたらゆきかう
空耳のクリスマスソング
誰もたすけたりできないな
とかいう目でみたから世界は
「誰か ....
今日も遠い北のはずれでは
北風がつくられている
私は妹の手をとって歩きながら
「ごらん、あれが北風だよ」と
すり切れそうな雲の端を指さして言う
すると雲は
少しずつ形を変えなが ....
この世界の本当の姿は
色のない絵本
赤い花が咲いている
赤い花は本当は青い色が好きなんだ
色のない世界に
虹色の光がさして
みんなは好きな色を奪い取って
大切にしまってしまう ....
猫のミーが
窓から初雪を見ている
たんぽぽの綿毛よりも
静かで美しいそれは
いつか別れた母親の
しっぽの色だった
ミー
君の耳も
同じ色をしているよ
それでも朝は来るので
わたしはまた生まれてしまう
約束されていないことなので
途方に暮れている
わたしは手を持たないので
仕方なく
眺めている
ふりをしてみる
鳥の不思議な動きを少 ....
オレンジからあふれる香気。
呼吸するように光る朝。
満ちる朝の空気のなかで
わたしは
透明な部分となって小石のように転げ落ちる。
覚醒するとき
海はともだちだ。
水色の水平線に遠く浮かぶ ....
幾日か後
妹の手を引いて
池まで降りていった
石畳は少し先の
見えないところまで続いていた
水面には遺影に良く似た温もりがあり
生き物たちの息継ぎまでもが
今ならわかる気がした
....
ここは
いつも広くて
息が白くて
冷えてて
がらんとしていて
音は全て霞んだ帳の向こうから
聞こえて
私は
怒っていたし
恨んでいたし
頑張り過ぎてたし
叫びたかったのに ....
plain damageをなんて訳そうかと思い悩みながら師走の
群衆のなか歩いていた
とおもっていたとき
からっかぜが吹きすぎたプルトニウムのからっかぜが
あそこから60キロ半径にあるすべ ....
空がきれいに青くて
たくさんの色々な形の屋根が続いた向こう側に
機嫌の良い雲がたくさん
そこはちょうど海の上
僕の町から ずっとまっすぐ下って行くと
海に出る
空と海が大好きだから ....
私たちは死ぬまで生き続ける。
幽霊は死に続ける。いつまで?
さまよえる幽霊が躓いた。その幽霊は
浮いているはずじゃなかったの?と、
困惑した表情。悲しいのかもしれない。
死んでいるのに? ....
父ちゃん泣いた 母ちゃん泣いた
じいちゃん泣いた ばあちゃん泣いた
じいちゃん泣いた ばあちゃん泣いた
お前が泣くから みんなで泣いた
みんなの涙は海になる
どんどん溢れて肩まで来たら
....
どうしてこんなに冬は寒く
こうして身体をふるわせる
秋をくるんだ
あの真っ赤な太陽は
暮れゆく一日に束の間の
焦がれる時をくれたではないか
降り散る枯葉のひとつにも
哀れを誘う言 ....
ピカピカの靴は汚れると思ったからすぐに下駄箱へしまった
思いついた嘘は嫌われるのが怖いからすぐに引き出しへ詰め込んだ
毎日毎日僕はあらゆるものをしまっている
しまっておかないと溢れ出 ....
天圃ラニ路井戸のミ(U)ズ 薔薇ックから農夫ラミンゴ-兎ランプの燃焼と刑期ニ青いカーゼ
6咲き柘榴園-℃-レースの温室エラーに澄む黒猫ト蛇ぐring-Oの大樹/ピラー土るfinの髪
虹ム眼界ニ火 ....
時速80kmの車窓
次から次へと景色は流れる
ホームの階段をひたむきに駆け上がる
パリッ!とスーツの新人サラリーマン
けっつまずき 宙に浮く {ルビ縮=ちぢ}んだ4本の手足
車窓から消え ....
こんな気がする。
書きつけるぼくらの身の上は怠惰で、
ありふれた人に、靴下の夜に、
まるい、まるい気持ちを。
ぼくには、いざというときはないからだ。
とるにたらぬ ....
僕らには何らかの足と
時間があるのに
階段はいつも
非常口の奥で
しんとしている
「何階ですか?」
機械のゆみこが訪ねると
「トナカイです」と
どこか遠くか ....
いま この傾いた陽の中で起こる
出来事を讃えよ
祈りは虚しく 鳥撃ち落し
霜の降下は 胸患いの効果を現す
空にかかる花は 萎れ 枯れ果て
この寒気にふさわしい 闇が
笑いを噛み殺して ....
日曜の正午
レストランの店内には二人の若いウェイトレスが
できたての料理や空の器を運んで
客のにぎわうテーブルの間をひっきりなしに動いてる
20分前に頼んだ和風{ルビ手捏=てご}ねハンバー ....
「あなたはね。
卵から生まれたの。
それはそれは痛くって、
とっても大変だったのよ。」
それが母の口癖だった。
嬉しいことがあったときも、
悲しいこと ....
傷ついた
というより
どうしようもなかった
話がある
洗濯物をたたんでいく
パンツ
シャツ
ヨーロッパ
僕の無器用さは消えない
どうしても嫌なことは嫌といってしまう
言 ....
満水の夜に
感覚をとぎすませながら
無数の魚が泳いでいる
距離と、位置と、
上昇する体温と、
そういうものを
止めてしまわないように
蛇口に口をつけて
あふれ出すカルキを吸うと ....
世界が眠る だぁれもいない
刹那の時刻に ポツネンと
舗道の敷石 そっと外したら
空と海が キスしてたよ
僕は 君を傷つけて
君は僕を忘れかけた
そうしたくてやったんじゃないって
隅 ....
見えないところに
化石が出来た
柔らかかった
良い匂いがした
叩いても
撥ね返される
または
粉々に
割れる
水をかければ
ふやけたりせず
溶けて流れてしまう
....
試験管の中に
夕陽を詰めてみたりしている
幸せなときほど
言葉少なになって
おじいさん
人はみんな子供だったはず
だよね
聞こえなくてもいいけど
僕もそこまでたど ....
ある日突然神様が現れ、僕にストレスをプレゼントしようといった。
ありがとう神様。
でも、神様。僕は知っている。あなたに、罪はないことを。
(2004)
公園へと続く夜道の街灯に照らされて
{ルビ百日紅=さるすべり}の木は裸で独り立っていた
枝々に咲かせた無数の桃色の花びらを
過ぎ去った夏に{ルビ葬=ほうむ}り
樹皮を磨く北風に じっと口を ....
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