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真夜中に揺り起こされた
見知らぬ男が側にいた
男は声を潜めて、島を焼く、と短く言った
これから島を焼くのだという
どこへでも好きなところへ逃げろ、そう呟いて ....
７日に蛭木の浜に下りていき
ヨガをする。
足の爪先から、踵まで、ゆくりと着地する。
干潮を合図に背中を反らせ、アーチを模る。
オヒルギとメヒルギが
音をひらいて絡み合い
嘆いて赤土を溶 ....
今夜は神日和｛ルビ＝カンピューリゥ｝
神日和｛ルビ＝カンピューリゥ｝は物忌み
神日和｛ルビ＝カンピューリゥ｝の夜は家の外へ出てはいけない
村の年寄りは若者に諭した
けれど若者は
十三日の ....
鉄道都市にある高層ビルディングのてっぺんにて
皇帝ペンギンが一羽
光ったり消えたりしている。
（蛍みたいだ）
西方から見るといくぶん寂しげな東の巨人のなかで
光る皇帝ペンギンは真夜中の迷える ....
（月を黒い種に、太陽を色彩の影のない輝きの雨にして）
ほんのりと甘い、果物の匂いがした
乾いた風が吹く緑の丘の上から
眼下に広がる果樹園を見下ろす
頭上の雲から誰かに見張られていて
けれ ....
心はいつも溢れる洪水の岸にあるけれど
この身は独りモロッコの砂丘にある。
鳥が落とした棒切れを拾い上げ
星形の砂漠に
蜘蛛と猿の地上絵を描く。
砂紋を横切るように
てんてんと残 ....
気がつくと、俺は漂流していた
大洋のど真ん中に、俺ひとりだった
広い海は恐ろしいほど青く、そして黒かった
小さな板切れに横たわっていた
頼りなく波間に揺られながら
自分が置かれている状況 ....
青灰色に輝く海岸沿いに
小さな赤い屋根の家が立つ
その家には
ブラウニーの妖精たちが棲んでいる
小さな妖精たちは
茶色のボロ着を身にまとい
いつからかその家に棲みついている
....
出勤まえにアイラインを引く
鏡の向こう側で
いつも私の代わりに私を演じてくれているもう一人の私と目が合う
季節外れのプールみたいな彼女の眼球の中央に
黒い硝子の宇宙、
私の魂の出先機 ....
白く獰猛な太陽は
月面の果てしない砂（レゴリス）に生命を吸いとられるように沈み
僕の銀色の船は水のない海（マーレ）を
宇宙の闇夜に揺られながらゆっくりと航行する。
僕は今、雨の ....
「大事なのは、ギアがガチッ！と切り替わる、あの瞬間」
暗い真夜中の道路、車を走らせていく、
今夜は寝ないかもしれない
光る猫の目のように黄色いヘッドライト、
センターライン追いかけ ....
静かの海に来る前に、晴れの海に寄ったんだ
月の海、そうこの大きな穴ぼこ、クレーターは月の内部から湧き出してきた溶岩で覆われている
僕の銀色の船についている小さな窓からのぞいていると
ちょうど灰色 ....
波打ち際の流木に
白いワンピースの後姿
沖に向かって風が吹いたとき
彼女の瞳は
黒曜石のように輝き始める
白のスカートを翻して海を渡り
愛した故郷の港や島影が遠くなると
こ ....
