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酸性雨が降り
森が枯れて
花は身じろぎもせず
こっそりとあぶくを吐く
内なる情念を
笑った眉尻にはりつけて
澄んでゆく
影
道草が過ぎたので
傘をなくしてしまった ....
春に
桜花ほころぶように
夏に
青葉の目映いように
聞こえる
声なき声に
心はおどる
あなたにそっと
触れたくて
秋の
時雨に濡れるように
冬に
....
ある日神様が降りてきて
すべての半分を君に与えた
しかし残りの半分は
自分で何とかしなさいと言われた
数日は、いや一年くらいは
与えられた半分のもので
飽きずにすんだ
けれどもまだ半 ....
叶いっこないと言いきかされて育った期待が破れんばかりの心臓をおさえつけ
明滅する。おまえなんかいないほうがいいのだと言い聞かせて育てた期待が、
かじりつこうとしている一〇〇〇円ばかりの分け ....
夏の空気、風が過ぎる
爽快感
空と海が地平線で溶け合って、一人
浮遊感
夏の空に沈む、忘却
素肌に触れる抵抗、
不自由な呼吸、
優越感、
全てが心地よい、幻想
....
(削除)
警官をしている先輩が言う。
沖縄サミットは ほんとにヒドい目にあった って。
わたしの好きな先輩。
今朝も早くから暑いのに 泥だらけの軽自動車で
沖縄のオジイとオバアが野良仕事に出かけ ....
王冠で すくおうとして
おびただしく こぼれる
純血のひとの うしろのほう
丘のうえに 月が
座礁している
今日も京都でしゃかりきコリキ
わっと叫んで場外乱闘
露悪的惑乱状態
テケテケテケテケ、take it、take it!
今日もトーキョで一心不乱の一輪車
ワッと喚いて乱痴気騒ぎ
....
左手で捕え右手で 半分の{ルビ翅=はね}を{ルビ毟=むし}る
風に棄てる
尾に紐をくくる
これでもうきみは 速く飛ぶことなんかできない
これでもう 高く飛べないよ
いつもそうだ ....
一家全員がそろったのは
昨年の正月以来だろうか
兄嫁が妊娠したという話を聞くと
父はたいそう喜び
押入れからアルバムを取りだし
いつもの昔話をする
それは色あせた一枚の集合 ....
アイスバーンの道を
一人むなしく歩いていた
いつもの風景いつもの時間
いつもの場所なのに何故か
ちがう世界に見えた
ガラスの瓶を拾って
思いっきり地面にたたきつけた ....
なにもかも狂ってしまった
まず
僕の頭が狂ってしまった
そして
犬が政治家になり
たぬきうどんが跳ね回り
タンスはものまねをはじめ
財布の中にあったコンドームが ....
真夜中に目が覚めて
水道の蛇口をそっとひねると
そこから
海の匂いがする
喉が、渇いていたので
それでも飲み干すと
いろんないちにちが
搾り取られるように抜け落ちていく
冬の海はな ....
凍える桜の枝を煮る
花の色に染まる
記憶のひとひら
なくしそうな
砂のらくがき
ため息で
消して
あなたの指した
電柱の奏でる擦弦楽の季節
手をさしのべても
触れるもの何も ....
女の声が頭の中に響く。澄んだ高い声。日に日に声は大きくなるような気がする。声を聞く以外、わたしには何もできない。偏頭痛がしそうで頭を振る。空き地に捨てられた車がある。栞を座席の上で見つけ、車の中に入 ....
たくあんで涙を食べた
ひいじいさんは欠かさず買い物についてくる
子供の裾を握りながら
足がないから、疲れないよと
祖母に笑って冗談を話す
デパートは同級生で一杯
ハバナで戦死した敏 ....
ねこや青空や荒野を
ねこや青空や荒野と
なづけたひとにあなたのなまえを
なづけなおしてもらいにゆくのなら
てぶらで部屋を出て
ふいにバスをとちゅうで降りる
もう二度と帰らない旅行へ出かける ....
るる は ねじ式
ぎこぎこ
いぜんは そうじゃなかった
いくない魔法使いめ
しどいめに あわせるじゃあにゃいか
ぎこんぎこん
鼻をかじったぐらいでなんだい
あたちはあ ....
わたしには女の声が聞こえる。誰にも似ていない声。でもひとには話さない。話す相手もいない。流木の散らばる砂浜。わたしはひとりで波間を眺める。ジーパンの後ろポケットに突っ込んだ神話の文庫本。もう何度も読 ....
むかしね
月経の血を集めて
煮詰めて
お薬を入れて
人間を作ろうとしたんだって
あれは本当よ
そしてできたのがわたし
上手くできたでしょ
さあここにも入れてみて
どんな具合がする ....
無事故で改革 大化の改新
バラバラに刻む前の貝殻ばかり足の裏に当たってきて冗談みたいだ
砂粒はこれ以上細かくならないって知らない人が
一面を海にして
背中を反らせたから
太陽光はここで乱反射 ....
鎌倉駅の通路の壁に
寺へと続く石段の写真が展示されていた
門の向こう側の境内には
不思議な光が満ちあふれ
そっと上げた足先を写真に入れると
体ごと吸い込まれた僕は
気が付くと
石段の ....
規則的に並んだ 長方形の、
石の上に横たわる
やわらかな、暗室
腕をまっすぐ 前に伸ばして
星座の距離をはかる
おや指とひとさし指で足りるほどの
遠さで
わたしを見下ろしている
....
家の近くで見たのは野良犬の親子
道路をわたるときは子犬のほうが先で
親犬はあとからついてゆく
一見普通の光景だけど
親犬は眼が見えない
だから子犬が前を歩き
親犬はその匂いを頼 ....
私が生まれるより前に
戦地に赴き病んで帰って来て間もなく
若い妻と二人の子供を残して世を去った
祖父の無念の想いがあった
私が生まれるより前に
借家の外に浮かぶ月を見上げて
寝息を立 ....
1999年8月某日
午前七時起床
朝食後、心理テスト
当てはまると思うものを○で囲む
それからこのテストを作った奴が俺よりちゃんと世界を観ているのか
どうかということが一時間に一度くらい ....
スパイスきょうじゅ
スパイクはいた
スパイクはいて
スパイスのんだ
いちめん ひろがる
じゃがいもばたけ
おくさんうめたの
だれでしょう
*
あさ うたたねをしていたら ....
(ゆーきや、こんこん…)
めずらしく降った雪のおかげで
妹は
はじめての雪だるまをつくりました
あんまりまるくないところが
妹の性格と似ていて
思わず笑ってしまったことを
今でも ....
黄昏時に 影が伸び
逢魔が時に まどろむと
冷たい風にさらされた
まかりいでたる 紅マント
不気味に微笑む白面に
口をふさがれ さらわれて
茜の空に 舞い上がる
夕焼け雲か 蜃気 ....
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