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いつつゆびさきがきみをみる
やわらかい皮膜の中は
どうしたってみずだから
つたってしまって
一本の
跳ねた
よわい針の先までが
とおくゆびさきの
たてるかぜにも
ふる ....
家族で豪華な料理を
食べに行った
お父さんとお母さんは
とても満足そうだったけど
ぼくは
おしゃべりしながら
家族みんなで分担して作った
カレーライスの方が
美味しいと思った
家 ....
バスに乗る
名前だけが剥がれていく
何かの間違い、というより
むしろ略式でも正しいことであるかのように
良かった、わたしたちは
バスに乗られることがなくて
席に座り
バスの一番 ....
こんな世界に眠れる夜なんかあらへん
目ぇ覚めんのか、覚めてへんのか、それとも冷めたんか
そんなこともわからへん
お前がおらんとあかんのや
山しかないようなとこやった
山の向こうに何あ ....
繰り返される福祉が、
新しく歓迎の声を受けて――、
福祉は、いくつもの、与えられた菓子を食べる。
なかには、埃を被っている、
国民精神総動員要綱も、
遠くに、ちらついて揺れている。
....
東京を越えてのどかな場所へ行こう
東京駅からなるべく遠くへ行く電車に乗る
初めは美しいコンクリートの建物ばかり過ぎていったが
だんだんと水田や畑がぽつぽつと見えてくる
終電に着くと ....
薔薇食む墓場のランタンと
タルトタタンを焼く釜戸
薫る薪の火泣く音色
ネイビー展がる夜のビロード
溢れる熱の鳴咽の煤で
すっかり黒く、染まる空飾る
六花の星座は地下の骨
墓場に響く言い得 ....
姫様は
長い長い
艶やかな御髪を持った
小町と呼ばれる姫様でした
『髪長小町』
私のお育てしたお姫様は
それはそれはお美しく
雪よりも透けるような白さに ....
ほたるがりしたら
おりひめとひこぼしをつかまえちゃった
うちではかえません
とママの怖い顔
しかたがないから
どうぶつえんにあげた
来園者数はうなぎのぼりで
....
玄関に傘が一本
ギロチンのように
あった
昔こんなもので
人が酷い目にあったのだ
と信じられないくらいに
静かな朝だった
やがて傘は
扉を開けると
仕事机のような格好にな ....
淡いかなしみの曇り空が
堪えきれずになみだを落とすと
紫陽花は青
束の間のひとり、を惜しむわたしは
思わず傘を閉じ
煙る色合いとひとつになりたい
街中の喧騒は
雨の糸に遮ら ....
どうせみんな
機械から生まれて
機械に繋がれて
死んでいく
ラヴ・マシーン
メキシコシティ生まれの農夫には
かえるところがない
八戸生まれの漁師には
かえるところがない ....
あの夏はもう過ぎてしまった
まだ子どもの頃
特に待ち合わせをしなくても
いつもの公園に集まって
そこから林に探検へ
入ってはいけないような場所に
金網をよじ登る
そうすることが夏だった
....
ドブの中からでも
星空は見上げられると誰かが言う
一人で見る星空はあまりにも遠く
それが屑星であるのかそうでないのかさえ
ドブに塗れて見えなくなった
ただ、あの輝きを
あなたと見つめら ....
真夏の砂浜の
パラソルの下の
ちゃぶ台に
貧乏な親子の
食卓があって
その隣には
サンオイルで
てかてかと輝く
若い女が
こうらぼしをしていて
やきすぎると
肌に悪いと思ったのか ....
タバコを吸うとヒゲがのびるのです
カミソリの刃はボロボロなのです
指に当てて横に引けば
悲しい痛みとともに血がこぼれだすのです
明日も明後日もこぼれだして
地面を赤くさせたとき、
私は ....
ぼくたちの先生はいつも
ぼくたちにはできないことばかり
言っていて
ぼくたちができないと
何をしてんだと
いつも怒ってた
隣のクラスは
優しくて人気のある先生
楽しそうに過ごしてる ....
人違いをした
人違いしたのは
はじめてではなかった
はじめて人違いしたのは
デパートのおもちゃ売場で
母親とまちがえて
知らない女の人に
おもちゃをねだったときだった
知らない女の人は ....
{引用=
くろ、ぼくら くろになる やまどりと まつばやしが
よるに のまれて しずみ ささやく 「いいか、めを その高音域の 大きな歌が
とじる かんかくを きく ....
橋の上を
こどもたちが
笑いながら歩いてる
橋の下を
川が笑いながら流れてる
あんなに笑顔で溢れていた橋が
今は静かにこわされてる
橋の向こうに
笑うひとが
いなくなったために
明日も
来ていいですか
と問いかけるのが
私の日課で
でも
獣らしきものは
月の暦の朔日のみで
あとは静かな小波のような
ほのかな思いが
引いてゆくような
満ちてくるような
....
宇宙が
ほんとうにあるとして
その一番果てに
宇宙の端から端まである
途方もなく巨大な滝が
流れ落ちているとして
そんな
宇宙の果ての滝を想像しながら
いま
おれはカ ....
水底に
動物園はあった
かつての
檻や
岩山を
そのままにして
いくつかの動物の名は
まだ読めたけれど
散り散りの記憶のように
意味を残してなかった
あなたは月に一度の ....
財布には845円しか入ってなくて
そのうち5円玉が3枚入っている。
その他には、入れっぱなしになっている
何軒かのドラッグストアのポイントカードと
特典がついているのかいないのか分から ....
はやい
から
きれて
とんでる
けしきが
ちかくの
草むら
なんて
もう
線だ
恐ろしいくらい
長い
線だ
空気が
固い
いま
どれだけ
もう
壁みたいで
い ....
よほど
苦しかったのか
あなたは
泡をはきながら
空高く水面へ
浮かんでいった
えら呼吸が
苦手なわけでは
なかったが
ときどき
疲れてくると
肺呼吸してしまう
悪い癖があ ....
梅雨の合い間に晴れた空
光が大地に降り注ぎ
静かな時の始まりか
風も涼しく穏やかに
白雲浮かぶ青い空
豊かな緑浮き立たせ
夢見る時の始まりか
心鎮まる和やかに
畑の作物採りに行 ....
真っ赤な帽子をかぶって
自転車に乗って
川沿いを走る
そのあとには
くちづけだけが残る
彼女は 詩だから
彼女は 詩だから
窓辺にアリスとかハートのクイーンを飾る
....
おやつを我慢しては 花火を買った
刹那の輝き 一瞬の煌めき
向日葵が枯れ始め 陽が落ちるのが早くなり
セミの声がヒグラシに変わる
緑の山も夕焼け色に 少しずつ染まっていく
「 ....
だからたとえば犬のように
白黒でしかものが見えていなかったとしても
濃淡の薄れゆくところ
色彩の変わるところが
あたらしく欲求がなりかわるところで
ぼくが輪郭と呼んでいた ....
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