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街角には、白い柱が一本立てられている。象牙の色のなめらかな小さな突起に覆われ、大人が手を回しても少し届かない程度に太く、もたれるのにちょうどいいへこみがいくつもあった。 手を触れると、人によっては柱 ....
スローモーションで放たれる
微細なスプレーのように
思念の粒子を空中に固定して
一粒づつていねいに色を投射してゆく
集中力を切らさないように
点と面のそれぞれに
力を加えるバランスを意識し ....
ああ
そこの
ここからそこの
すみずみまで
感じている生命よ
あなたのそこの
感覚鋭く
ときには鈍い
生命よ
わたしは悲しい
青い鳥
空は命に溢れても
この地上の
....
雪が降る
その国に
女が積もる
女
という字の形をして
組み合わさって
結晶を構築して
やがて
細い
細い
洞穴となる
思春期のこと
その奥の奥
たどり着いた先に
赤ん坊が ....
乾電池が足りない
と昨夜寝言を言ったあなたは
夢の中で久しぶりに
何を作っていたのだろう
今日は朝から雪が降ってる
あなたの故郷のように
たくさんではないけれど
もう誰も
あな ....
灰色
のカスがらせんにおりてくる
と同時にカラスがゴミ箱から食う物をうばい
尖った爪にマックの包みがひっかかり上がっていく
誰もいない閑散としたアーケードに音がすいこまれて
何も無 ....
「トイレはどこですか?」
細い目をぱちりと開き
丁寧に差し出す手のひらで
トイレの場所を教えてくれた
美術館のスーツを着た女の子
チャックをしめて
トイレから出ていくと ....
どーっちだ
これ
これと
どっちかなー
これ
これ
えっとー
んー
えーっと
も!
これ!
どっちかなー
これ
一月前に倒産した
詩学の社長の寺西さんが
事務所の布団に横たわったまま
十日前にこの世を去った
様態急変による
脳内出血であったという
三年前の「青の日」で
互いの詩を ....
私が泣いている
私が死んでしまったので
あんなに手塩にかけて育ててやったのに
小さな頃はあんなに可愛かったのに
どうしてこうもあっけない
未来がぱちんとはじけてしまう
私のいないこれからを ....
はねた、石は、
水のなかを、水を
大きく、全身でえぐり、ゆれて、水は
痛みで満ちた、が、血は、
流れずに、水のなかを、水の
深いところ、へ、
着席する、石は、
水、ではなか ....
元気ですか
そういってメールを打つと
少し
微妙な間隔で
クタクタ
風邪 ひいたみたい
って
そんなこと
聞きたいわけじゃない
∞
元気ですか
もう君もわか ....
幾度も、なんども
夢から覚めると右手にアクセルの感覚と
四天王寺から日本橋へ車線変更
遠く、象の鳴き声を聞くのです
松屋町筋へ曲がるという
思い出のような物語はいりません
ビル風に吹かれて ....
浸された水は
つめたく
ねがえりもできないほどに
なぜか凍みたまま
あの人ごとをさらって
いって
かなしい
のふちにいるあの人
たしかにいかされ、芽生え
一つの
さむさの中にい ....
図書室のソファーで
隣に座る青年が手にした
テスト勉強のノートを
ちらっと覗く
問6
「(第九)という代表曲を作曲した
音楽家は、次の内誰か答えよ。 」
....
深夜の路上に
空き缶がひとつ
ぽつりと立てて置いてあった
こおん
とけっとばしてみると
そこいらじゅうから
わああああ
と逃げてゆく子供らの声がして
にわかに恐ろしくなったものの
わ ....
背中でみず色をうたっている
こんなにも乾いているから
詩のたましいを“ふたあつ”もつ子の
みずのうた
誰もいない広場に
けやきやいちょうが積もっている
小さなひざをミルフィーユに沈める ....
どこまでも伸びていく高層ビル
の死体が落ちていた
凶器の不完全な空が
垂直に突き刺さっていた
その空は途切れ途切れに
けれど果てしなく広がっている
という噂話を
人々はこよなく愛 ....
あそこで
庭木の手入れをしているのが父です
もう随分彼は
そこから動かないので
毎日
朝夕の水遣りをするのが
私の日課です
週に一度
伸びすぎた腕や増えすぎた首の ....
切なくなるなら、その名前を呼ばなければいい。
悲しくなるなら、振り向かなければいい。
ハルシオン飲んで寝なきゃ。
ネルボン飲んで寝なきゃ。
ロヒプノール飲んで寝なきゃ。
テグレトール ....
寒風に手指をかばう
待つとも待たないともいえぬ朝まだき
冷え切った空気が
空高くから透明に降りて
ちいさな公園の
遊具に残る最後のぬくもりを絶やす
ほぅ、と湿った息を吐く
....
二十世紀らしく
賑わっていた街が
二十世紀の博物館になった
二十一世紀の街
欲しかったものは
当時の十分の一ほどの
価値で手に入る今
戦争の意味さえ
その程度のものだったらし ....
なぜ俺は岐阜の人間ではないのか
なぜ俺は島根で生まれなかったのか
三重のようなところで生まれていたらすてきな恋に生きただろう
青森で育っていれば今ごろ宮城あたりで金持ちだったかもしれない
茨城 ....
橙のかげ
古い写真みたいにかすむ
あの煙突からたちのぼる
霧のような灰が眩しい
太陽はしずみかけで
手のひらの大きさの池に浮かんでいる
死んでみたいとくちにした
動脈血のながれる ....
地面を掘り続ければブラジルに行ける
そんな話を簡単に信じる子供だった
なにひとつ疑うことなく
銀色のバケツに小さなスコップを入れて
近所の公園へと向かった
掘る場所といったら砂場に決まってい ....
お前は本当に携帯電話を携帯しているのか?
携帯されてるんじゃないのか?
俺はされてるぞ 使いこなしていたつもりが
いつしか液晶画面に溺れていた
気をつけろ 携帯はひょっとしたら酒より怖いぞ
....
わたしを囲む円周に
今あるべきものはすでに集まり
目に映る全てのものは
円周の中心にある
わたしをわたしあらしめる
蓄音機に針は落とされ
回り出 ....
海がそっとまぶたをとじる
青い響きの中
かもめは
追撃機のようにまっすぐ堕ちた
手のひらにすくう砂
ランプの芯のようにあたたかい
ぼくは見上げ
あたたかいのは君の手だと知る
浮 ....
ねこがいなくなった
遊びに行ってると思っていたのに
帰ってこなくなった
家族はみんな心配した
一週間経っても帰ってこなくて
保健所にも連絡した
交番にも連絡した
近所の人にも話した
....
夜明け前
海を望む寂れた町の小さな駅から
各駅停車の その車両は出発する
ゆっくりと少しずつ 速度を早めながら
私の全てとも言える寂れた町から遠ざかっていく
流れる景色が一定の早さで ....
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