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ましろい壁に伏せた顔を
100数えて振り向くと
そこは360°静まり返った
今日という日の地平だった
いつのまにか鬼になっていたぼくは
今から探さなきゃならない
閉ざさ ....
老婆は
朝市で売れ残った
5本の胡瓜のうち4本を
田んぼの用水路に捨てた
4本のうち1本を
散歩中の老爺が川で拾った
老婆のきょうだいの老爺は
翌日老婆と一緒に
ふたり仲良く胡瓜を
....
ティースプーン2本が
彼の人生の全てだった
安いアルミで出来たそれは
既に古ぼけ
2本重ねてもぴったり合う事は無く
カチカチと無機質な音を鳴らした
男はそれが好きだったし
いつもポケット ....
銀色のケトルが鳴く
耐え切れずに
もう
私はおしまいだよ と
あらん限りの
声をあげて
鳴く
鳴き狂う
誰か止めて止めて止めて
さもないと
さもないと?
ひざを抱 ....
きみはコーラを飲み干せない
柴犬のジョンは鳴けない
そしてぼくは笑わない
3つ揃うと
「不幸」
ができた
きらきら光る
「不幸」
だった
....
九十六だった大叔父が暑さに耐えかねてとうとう往生したのが3年前の8月4日。
「もうちょっと前にいってくれりゃあ、初盆も今年すまかいたのに」と、葬式と三日七日と盆と忌明けがごちゃごちゃにきちまった夏 ....
休日は家から出ない
出たとしても郵便受けどまり
別に外が恐いわけじゃない
ただ武装をするのがめんどくさいだけ
流れてく日常を身体で感じることもなく
失っていく若さに一瞥をくれてやることも ....
1年前の物干し竿がボキボキ折れたため
線香立てに刺し
バスタオルを半年前の乾麺にかけると
「向いてないですから」
一瞬で職場放棄され
シフトに二つ穴が開き
洗濯機が運ぶ ....
寝る前に、一日が終わる前に、鳥が死ぬ話を書こうとしたが、鳥の死ぬ姿を見たことがないので手が止まった。鳥の死体はいくらでも見てきたが、鳥の死ぬ瞬間は見たことがない。いつでもどこでも鳥は死に続けているの ....
「気楽」を抱き締めた
精一杯に、一生懸命に
「矛盾」が貼りついてきたので
えいや、と払い落としてごみ袋に入れる
これはもえるごみだろうか、と
湿った「疑い」が落ちてきたので
とりあえず床を ....
そう、あんなところを抜けてゆくんだ。
寝ぼけた猫に道を訊いたってだめだよ、
古いゴミ箱の脇にいるちっぽけな蜘蛛、
テレビの後ろの埃にまみれたカマドウマ、
そんなやつらだって実は道を知らないんだ ....
海へ倒れる曇を見ている
曇から生まれる鳥を見ている
降りそそぐかけらと水の柱と
波をついばむ音を見ている
道の上の羽と屍肉
夜になる曇
夜になる曇
羽と共に降りる曇
....
瞬きをすると虹が溢れてしまう目があるので
笑うと発音しないPを吐いてしまう口があるので
まだ誰にも褒められたことのない君が
冷蔵庫に自分の耳を並べている
僕は機関車と同じ匂いの ....
海の動物になりたかった
海に行きたかった
底の方で
脊髄が列車のように並んで
色のない海老が
乗客のようにじっとしている
マリンスノーの中
錆びてしまいたかった
潮を ....
AM4時
揺れ動く時間に
プレゼントを食べました
オレンジのろうそくに
渇望して
溶けていく 温もりの
輪に入って
暖をとろうとしたのです
舵を 探しました
一人乗り ....
{ルビ霞=かすみ}のかかる朝
交差点を横切る車の窓に
雲間から射す
日が光った
( 冬の澄んだ路上に浮かぶ
( かたまった光の残照
次の瞬間
「通りゃんせ」の唄は流 ....
とても遠いところに
家族がいる
つまり今は
一人で暮らしている
自分以外にしない
呼吸の音を
耳をそばだてて
一人聞いている
父も母も
兄弟も姉妹も
そして友さえも
....
ぬばたまの闇の髪持てる乙女よ
汝が思ひ出の道をたどれ
我が元に来たれ我が元に戻れ
汝に相応しき唯一つの生を求めよ
漆黒の夜の瞳持てる乙女よ
我が娘らと楽しき鳥屋に宿れ
我が娘らと唄ひ踊 ....
機関車が吐いた雲が
今日はめずらしく
空になっている
そのはるか上層部で
空はやわらかく
諧調をなして
やがて海が広がっている
海は黙ったまま
何も言わずに
ただ海であろうと ....
妻との空
コーヒーハウス
霜月の昼
コロッケ・ピラフ
翻る女さざめく
雰囲気になじむ
美術館
妻と二人
平山郁夫語りあい
笑い声
あれは女だ
アサヒスーパ ....
いつもなら
真横から朝日を浴びる時間に
ライトを点灯させた車が
飛抹をあげて通り過ぎていく
ふいに
まだ夢が続いているような
不安にかられる
クレーンを折り曲げた重機が
ごうごうと ....
母は
今も悔やんでいる
父が逝き
毎日
毎日
こんなにも悲しいのに
泣けないのはなぜだろう、
と
私もそうだ
父の
いるべきそのあたり
ふすまを背にした
低い食卓
....
街角には、白い柱が一本立てられている。象牙の色のなめらかな小さな突起に覆われ、大人が手を回しても少し届かない程度に太く、もたれるのにちょうどいいへこみがいくつもあった。 手を触れると、人によっては柱 ....
スローモーションで放たれる
微細なスプレーのように
思念の粒子を空中に固定して
一粒づつていねいに色を投射してゆく
集中力を切らさないように
点と面のそれぞれに
力を加えるバランスを意識し ....
ああ
そこの
ここからそこの
すみずみまで
感じている生命よ
あなたのそこの
感覚鋭く
ときには鈍い
生命よ
わたしは悲しい
青い鳥
空は命に溢れても
この地上の
....
雪が降る
その国に
女が積もる
女
という字の形をして
組み合わさって
結晶を構築して
やがて
細い
細い
洞穴となる
思春期のこと
その奥の奥
たどり着いた先に
赤ん坊が ....
乾電池が足りない
と昨夜寝言を言ったあなたは
夢の中で久しぶりに
何を作っていたのだろう
今日は朝から雪が降ってる
あなたの故郷のように
たくさんではないけれど
もう誰も
あな ....
灰色
のカスがらせんにおりてくる
と同時にカラスがゴミ箱から食う物をうばい
尖った爪にマックの包みがひっかかり上がっていく
誰もいない閑散としたアーケードに音がすいこまれて
何も無 ....
「トイレはどこですか?」
細い目をぱちりと開き
丁寧に差し出す手のひらで
トイレの場所を教えてくれた
美術館のスーツを着た女の子
チャックをしめて
トイレから出ていくと ....
どーっちだ
これ
これと
どっちかなー
これ
これ
えっとー
んー
えーっと
も!
これ!
どっちかなー
これ
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