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わたしがうさぎだった頃
この世は赤いもやがかかっていた
花びら一枚にも手が届かないので
うつむいてありの行列を眺めるしかなかった
わたしがひなどりだった頃
飛び立ちたくて仕方がなかっ ....
虹の行方を尋ねましたね
庭に駆け出す小さな足で
あれは、たしか夏の終わり
まだ見ぬ向こうに触れたくて
尻尾はそのたび凛と鳴り
その頃わたしはまだ
羽ばたき空飛ぶネコでした
....
宵闇に包まれた路地に建つ
戸建住宅の玄関前に
一匹
猫が座っている
しゃんと背筋を伸ばして
正面を見据えて
その確固たる存在感を
僕は
しげしげ見ながら
通り過ぎる
どこ吹く風とい ....
厳かなガラス窓は空気を揺さぶり
ついで昼間の光が皮肉まじりに照らしたので
塵と埃の谷間 誰も知らない村から
ささやき交わしたり毛を伸ばしたり
微生物の営みが浮かび上がった
まだかすかに漂うス ....
地平線がかぎざぎに囲われた東京を
中央線のガラス窓からのぞいて
ビルたちの壁面は薄黄緑に光る
水の色をしたいろんな影が長くのびて
フラットな装置のように空が広がる
鳥の群れがばらまかれ
ペ ....
{引用=
{ルビ錘=おもり}によって、わたしの外側の水位は上昇し、その先のどこにもふちはなく、溢れることができないままの記憶を、てのひらですくっては、こぼして、すくっては、こぼす、そうやって衰 ....
父が釣りに連れてってくれた
それから数日後か
数ヵ月後か
数年後なのか
忘れてしまったけれど
近所のおじさんか
同級生か
はたまたいもしない
兄なのか
とんびなのか
カ ....
昨日より冷たい君の
手を引いて
坂道を上る
君の腕が肩から
肩から抜けてしまわないように
そっと引いて上る
途中、誰がつくったのか知らないけれど
昔からある赤茶けた工業地帯が
....
大腸と小腸の図を見ると
蛙の卵を思い出す
むにゅむにゅむにゅりと蠢くような
細くて長い透明うんこの中に
いくつものタピオカ
多分ねじればソーセージ
ゆでればカリッと言うのかね
蛙は何歳 ....
地平線の彼方に大きな夕日が沈む
地平線の見える大地など、僕の住んでいる街には無いのに。
無いのだが、地平線を僕達は確かに感じとることができる
感じ取ることができるので
僕は地平線に向かって ....
木枯らしがからからと乾いた音を立てる
あらゆるものの輪郭がくっきりと描かれ
移り変わる季節への感傷に浸りたいのに
冷えた手は無意識のうちに摩擦を起こし
細胞の根元から発信される欲求を満たそうと ....
旅の列車に乗り
ふと車窓の空を見上げたら
日輪の周りにあらわれた
大きい虹の輪
アルプスの頭上に広がる
いちめんの空が
車窓の僕に
何かを云っている気がした
仮にアレがアレだとしたら
意外に簡単に理解ができる
とどかなかった物は
隣の席に座っていた
綺麗な世界をみたいなら
とりあえず待って帰ってきたら
おかえりなさいとく ....
魔法なんかじゃないよ
君はそっけない顔をして言う
そのきれいな指先で操られて
形を変えていくものを茫然として見つめ
そんなしなやかな指裁きはできないと
溜め息を吐く
魔法の呪文は ....
俺は俺から逃げられない
俺は俺の夢から逃げられない
俺は俺の愛から逃げられない
この逃げられなさから逃げられない
けど逃げようとしている
俺は彷徨う
俺=彷徨う
行き方がわ ....
一面に垂れこめる月から
頬笑んだ顔が落ちてきて
ここには
僕をつなぎとめるものなんかない
つぎの船を渡って
みんなみんな行ってしまうよ
指をからませながら
だけど母さん
僕に世界をくれ ....
手紙を出しました
開くと記憶をなくすという
日々の行いをこなしてると
白くなる
ああ、今よんでるんだな
洗濯物をたたみ終えたとき
私が誰かわからなくなった
静かに笑って横になる
わたくしの脳みそにぺたぺたぺたぺた増殖していくものたちは、伸びる鼻を持っているので、わたくしの脳みその中でその長い鼻を自由に絡めているのですよ。
わたくしの脳みそがそうしてどんどん絡まるのです。 ....
夏のそらばかりが 身をせめる
南風の吠ゆる 島の岬に
母のかたみの 赤い櫛で
髪を梳く
罪を乞うでなく
罰をあがなう 身にもあらず
まばゆく うれしそうに
紺碧色に待つ 海 ....
アメリカを好んだ
わたしから
アメリカを除くと
わたしだけが残った
アメリカが
わたしなのではなかった
フロリダも
シスコも
ロスも
わたしが好む何かではなくて
それは ....
{引用=
ひだまりにいる幽霊は追憶
見つめているのは幸福の面影
黄金に香る金木犀の花
抜ける青空
ひだまりにいる幽霊は憧憬
秋の透明な輪郭の中に浮かびあがって
冬の始まりの風が
....
{引用=走って
走って
狼に追いつかれないように
走って
走って
森の奥へ奥へと
走って
走って
走って!}
「森の奥へは決して行っちゃいけないよ
おまえのような若い ....
昨日と今日は同じだと嘆くひとは
今日が今日のままであることを願っている。
自覚のない矛盾がそのひとを支える。
空の星
足もとの雑草
キーボードの上の埃
なにひとつ
昨日と同じではない ....
低気圧は急速に発達しながら
日本海を進んでいるんだという
静岡県では
注意報ではなく警報が出ているんだと
アナウンサーはいう
こんなに激しい雨
全部洗い流せばいい
泥、花、
眉 ....
土地を買って鉄路を敷き
そのまわりを開発して
定時には人々を詰めこんで運んでみようか
地域密着でありながら
こんなダイナミックなビジネスはない
しかも電車は車より8倍エコ ....
猫が浮かんでいた
足跡は
浜辺には残っていなかった
腹が膨らんで
それでバランスを保っていた
その下に
エメラルドの群れが
見え隠れする
猫の首は
だらしなく折れ曲がり
海底を ....
量子力学のパラドックスに「シュレーディンガーの猫」というものがある
じつは原子爆弾もコンピュータも
シュレーディンガーさんの方程式で動いているらしい(多分)
入門書を何度読み返してみても
一向 ....
飯能市街を抜けて山間へ
僕の運転する車は
滑らかに進んでいく
しだいに狭まる谷を抜けると
山間の集落が現れる
カヌー工房とか
材木屋とか
しゃれたパン屋とか
横目に見ながら ....
{引用=夜の階段を下りて
一階はとっくに海に沈んでいったので
その、密やかな貝を避けながら
水の中につま先をいれる
どこまでも透明な
水晶を重ねて束ねて作った
深海は 魚を飲み込む
....
(この世界にうまれなかったすべての記号たちに
琥珀色した光りが届いたなら――)
/星が瞬きも忘れて
/死を視ている
世界の空が薄い琥珀のように潤み始めた頃には残された ....
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