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青空は生物の息ではないかしら
すてきというまえのうっとりとした
それから
ミルクの入ったガラスのコップをおとして
わってしまった時の悲しみのしみる
それからまた
ごちそうさまという ....
「 ほころびる時 」
宇宙の襞目にある 水のこころ
器をえらばず しん透し いのちを潤す
真空において純粋回帰する単音
貴殿の耳にこだまする
(覚めることのない果実を。
遠いま ....
おもいでの形見
私にとってこれは
変わらないことのひとつ
ここには風は吹いてこないけれど
ほがらかなひだまりがぽうっとしている
いつまでも
微笑する宇宙のふちで。
私の子午線 ....
予報は雨
(真昼)
あらがえないの
この時計の刻む
奥底からきこえる声には
自性が宿っているのだから
茫洋として連なっている先へ
零時の胎動しているのは不在
の影が失わ ....
朝日影にふくまれた わたくしの陰影が
ありのままの白い骨格で
よるべなく
この家に嫁いで来たのです。
その
わたくしが、
わたくしであるが故に、
わたくしを焼べねばなりません。
そ ....
かえるところがあるのならば、それでいい)
お葬式
カラスが黒く はばたいて
おひとりですか、と
月へ笑う
いいえ
あたしは迷子です、と
黒く燃える
火へ手紙を焼べた
....
ブルーベリージャムの あまずっぱい朝に
「お早う」と言って
庭へ目をやる
すっと口許に手をそえ
ちいさな欠伸
すこし涙がじんわり
(うつむいて)
すっと小さな海をふちどる
縁側でやんわ ....
お人形と
お気に入りの
絵本を
雲間で
読み終り
障子に透ける
西日の淡く
映るところへ
夢想の焦点残照と
お散歩?
お部屋をくるぐる旋回
お話をお人形のお早うへ
あな ....
朝の空気の
光に濡れた
清々しい香気に、
私の五感はしとしとと沈み{ルビ水面=みなも}をみあげる重く熟した金属の愁い。
空間をよぎる
不透明な視線は、
無知な陽炎となってさえずり虚空を ....
{引用=小鳥のあおいへ}
君の目の
レモンのかおりするかたちで青い輪にふちどられた高く清んでいる空
少女だった
君は、
妻になり
母になり
私の恋人でもあって
今日、{ ....
ひとつ道を歩いている。
ひとつ道で立ち止まる。
ひとつ道で振り返る。
やはり、ひとつ道を歩くことにする。
なくしものはない。
はじめからもっていなければ
なくそうはずもない。
....
うすい鎖骨の層をすべり落ちるひとつの円く欠けた球体
それが、
あら
早いのね
雲はしびれて そろそろ雨の匂い
届かなかったのね
手を伸ばしても 反射する灰色の空気を泳ぐ
稚魚の透けた ....
いつのことでしたか
忘れてしまいましたが
絶句したその無言の先に
あの日がちらついていたのは、確かです
日溜りの微笑む
静けさのなか
涙は花ひそめ
無表情に泣いていました
それはか ....
魔法瓶に夜空をみたし
ほの明りの朝、遠足に出かけた
あいさつをしたら
光の丘で
化石だった風が
重く熟して
翼となった
種子
小さく{ルビ瞬=まばた}きをすれば
霧散している光へ ....
三日月を笑う
瞳の奥には
最果ての傷がひそむ
傷つくことをおそれて
前へ進めるのか
団地の裏の
十字路を
青やかな銀河の右旋系
空き地の{ルビ草原=くさはら}に影が伸びる夕景
....
(今日の日付をつぶやく)
灯台の未来
石段の螺旋をおりていく
水平線はかすかに騒めき湾曲している唇だ
防波堤を渡り
砂浜へと呼吸を滑らせる
ヨットの帆は風に膨らみ
反転した星のように ....
ひっそりとした雨で
灰色に染まる
視線までも
{ルビ一色=ひといろ}に濡れる
雨垂れに
声が
くっきりと響く
そっと
ちらつく姿に重さを重ね
落ちる雫に映りこむ
吐息は熱く
....
一歩一歩沈む
沈む
さ迷う森のあなたに
黒く湿った土が香り
白日夢の欠けた月が
まあるく青ざめて眠る
白む指先で
鼓動にふれる声が
ふるえて腐蝕へ沈む
をんなは
なぜか黙り ....
うちあけることは、むつかしい
しろながすくじらが
{ルビ吼=ほ}えるとき
わたしは
ちいさく「え」と鳴く
しろつめくさが
幸せを茂らせるとき
わたしは
亡霊とかけ落ちする
....