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或る 雨の朝
しぶきに打たれる鋪道の
流れる水の勢いを 感じながら
あなたを久しぶりに思った
夏の始めの山は緑だから
美しいし
君は 緑の年 ....
波が かすかに鳴りながら
ふともらした悔いのことばを
嘲笑う
そう 確かに
人を愛したことを悔いるなんて
つまらないことだった
憶い出させてください
....
ふしあわせ というものが
とくに こころ美しく
あたまのするどい ひとに
みいる のでしょうか
はんぶん いろづいた林檎の
つめたい甘酸っぱさを
あなたは こころ ....
お湯を沸かしながら
まだ眠い気だるさには
モカブレンドのドリップコーヒー
昨夕スーパーの陳列棚に一袋だけ
お買い得商品のプライスで残っていた
この一杯の 目覚めが心地良い
....
ある女が 酒房に惹かれ
やかましいその片隅に
毎夜坐っていた
沈んだ目が時折光る時
女はカリカリと氷をかみ砕き
強い酒に挑んでいる様に見えた
何日かすぎた頃
....
暗闇の中には沢山の物語がある
パリの老いた靴作りが
ハンチングを傾けてかぶっているのは
むかし街の女に
とても粋だわ と口笛を吹かれたからという話
それでそ ....
変な 顔の子だった
くしゃみをした犬の子の様だと人が笑った
その子が 二十歳をすぎて
段々と美しくなって来た
笑う時、口許に愛嬌がある
と人が言った
いや 目もとが ....
その視線はどこを見るでもなく
誰を みるでもなく
そして何に
留まるでもない
体になじむポロシャツと
洗いざらしな作業ズボン姿のおじさん
きっとシルバー人材センターか ....