海に向かつて
杉菜 晃

南極で王樣ペンギンを見たよ。
王樣は一人 いや一匹だけかと
思つてゐたら
何匹もゐたよ。
何千何萬のペンギンが
みんな王樣なんだ。
王樣の王樣がゐるわけぢやない。
みんな同じ王樣なんだ。
名前が王樣ペンギンなんだから
どうしようもないんだ。

その王樣たちが揃つて海の方を
向いて立つてゐる。
王樣が揃ひもそろつて
みんな海のはうを向いて
待つてゐるんだ。
避難民が救ひを待つみたいに。

そこにぽつんと機影が現れる。
ジエツト機は見る見る迫つてくる。
あつといふ間に目の前に來てゐる。
頭上を通過するときは大変だ。
ずつと眼で追つていつて放さ
ないものだから
みな後ろにぶつ倒れるんだ。
水搔きのある足を天に向けて
いつせいに王樣がぶつ倒れるんだ。

もしそれを
上から?樣が見てゐたら
?樣のはうがぶつ倒れるね きつと。


未詩・独白 海に向かつて Copyright 杉菜 晃 2006-06-04 10:31:33
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