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橋の袂から川に沿って伸びる灯り
向こうは賑やかだね、と言う
川は此方から彼方へ
花火の焼けた火薬の匂い
炎に揺れる小な提灯あかり
再び鳴き始めた虫
るりり、るりり、るりり、
ばあ ....
思い出をコーヒーにとかしながら
ゆっくり飲もう
暖かな毎日を思い出しながら
角砂糖みたいにじわりと溶け出すのを
軽く掻き交ぜながら変わっていく味を
楽しみながらゆっくりと
味わいながらゆっ ....
ゆれる景色の中で
溶け出す静かな氷
「つめたい」
そういった君の目には
小さな水たまりが出来ていた
風の穏やかな朝に
流れた大きな雲
「きれい」
そういった君の耳には
青色の耳飾 ....
ティースプーン2本が
彼の人生の全てだった
安いアルミで出来たそれは
既に古ぼけ
2本重ねてもぴったり合う事は無く
カチカチと無機質な音を鳴らした
男はそれが好きだったし
いつもポケット ....
僕は知っている。
君が誰で
どこから来て
何をしているのか
だけど
僕は知らない。
君が何を好きで
どんな事に興味を持って
どんな笑い方をするのかを
『海の中で時計は止まる』
そっと手をつなぎながら
僕ら海に泳ごう
ひと足とびに歌を口ずさんで
思い出の波にゆらぎながら
毎日君に話せなかった言葉を話そう
『羊が手を振る』
....
『うれし雨』
この雨は泣いてる雨なんかじゃない
きっとうれし雨なんだ
そうじゃなきゃいけないんだ
『何でも無い一日』
ただひざを抱えて
外を眺めていた
少し肌寒いのは
....
記憶の中でざわざわとゆれる
届かない手のひらを裏返す
もどかしい程に幼い記憶
それはいつまでも声になる事無く
心を刈り取って行く
まるで古びたロープが
音も無く千切れゆく様に
静かに
....
銀の矢が放たれる
その先には小さな少女が眠っていた
少女は目覚める事なく
永遠の眠りについた
少女として
人として
男は一生その業を背負い
償いの日々を送った
それは重く
苦しみ ....
わたしの拾った小さな小石
耳に当てると声がした
あのね
あのね
あのね
小さな声でおしゃべりするの
ささやき声ってお菓子みたい
あのね
じつ ....
太陽が沈み世界が透明になる頃
アルコールランプを消した
吸い出される琥珀は僕の記憶
人目を憚る様に
そっと吸い出されていく
吐き出す息は世界にあわせ
透明に消えていく
僕は酷 ....
目を閉じて
深くふかく
海の底に潜れば
もう何も見えません
潮騒もかもめの鳴く声も
そうして人魚の姿すら
目にする事はありません
真っ暗な海の底で
すぅっと通り過ぎる
真っ白 ....
インコが、ぴーちくちちちと鳴きます
空には大きな雲がゆっくり流れて行きます
風はまだ少し冷たいですが
日は少しずつ暖かさを増しているようです
さわわ、と風が街路樹を撫で
どこか遠くの懐かしい ....
夜中に遊園地に忍び込んだら
観覧車の箱はすっかり片付けられていた
仕方がないのでその骨を登って
遠くに浮かんだ月を見た
丁度あの下辺りだろうか
君の住む町は
風がえらく強い日で僕は
....
あなたがその手の中に包んでいる
小さな小さな光が
私に大きな勇気をくれたから
ありがとうを伝えたいの
あなたは私の見えない物を見て
少し笑いながら手を伸ばすから
私はただ
どうしたの ....
雨上がりの少しだけ雲のある空に
小鳥が二羽飛んで行きました
近くの電線にすいっと止まると
あっという間にまた、すいっと飛んで
ぴぴ、ちちぴ と鳴きました
空は青くとても澄み渡っています
私 ....
薄暗い中
あかがねに染まる朝焼けを見た
時計がさざなみ
町外れの橋が影になる
息を吐く声
電車の踊る音
タタン トタン トトン
パタン ポタン コトン
読みかけの本を閉 ....
ちゃぷり、と
月は青空のお風呂に浸かり
朝陽に白く霞んだ
今日も随分と
夜を照らしたものだと
そっと呟く
早く寝よう、と
いつも思っているのに
太陽と話し込んでしまう
長 ....
お元気ですか
少し高くなった空が
今日はなんだか優しくて
お元気ですか
ぽっかり浮かんだ雲が
とても愛らしいのです
遠回りしてのんびりと
線路沿いを歩いていると
どこからか夕飯 ....
深いねずみ色の雲の上に
薄ネズの雲は所々に白く
さらに遠い高層雲は青く浮かぶ
月の虹は丸く
流れる雲が生き物で無いと示す
止まった呼吸がすっと吐き出され
僕はこの世に帰ってくる
....
電車を待っていると
どこからか風鈴の音が聞こえてきた
チリリン
海は楽しかったな
今年は二回も行ったっけ
チリリン
花火きれいだったな
毎年見てた場所また行けるかな
チリリ ....
一・何処までも泳げるだろう
遠くに見える島を目指して泳ぎだした
泳げども辿り着けないその島は
蜃気楼なのだろうか
それでもまだ
辿り着けると信じていた
二・振り返ってはいけない
....
まだ
手を伸ばしたならば
間に合う
まだ
目を見開いたならば
見える
走れ走れ 風より早く
泳げ泳げ 魚の様に
そこに一粒の星が
光るなら
見えるなら
諦めるにはまだ ....
隣を歩いていた君の右手が
隣を歩いていた僕の左手と
ごっつんこしたから
僕らはそのままなんとなく
手を繋いで歩いた
映画を見ていた君の手が
映画を見ていた僕の手と
ごっつんこしたから ....
遠くに見える軒先の明かりは
線香花火の様に見えました
それは小さく {ルビ朱=あか}く
瞬きをする度に{ルビ滲=にじ}んで
まるで線香花火の様でした
どこかで歌う声は{ルビ囁=ささや}き ....
夕暮れの 空を見上げて ただ一人
らららと唄えば ただ一人
お星さま 夕焼け空に ただ一つ
きらりと光れば ただ一つ
田の蛙 蜩の声 ただ一つ
いつの間にやら ただ一つ
いつの間にやら ただ一人