雨が響いている
六月には刃先が疲労する
四月と五月の春の息吹に
消耗し尽くした空は
悲しくもなく泣き始める
大きな思い出は錯乱し
小さな風景はたるんでゆく
雨が谺している
六月には ....
生きていれば二十七歳
二十五歳まで生きるものよと
微笑って言ってくれる小母さんも居たけれど
十二月の空はあおくあおくあおかった
十年の月日が流れ 忘れられない
あなた以外と暮らそうなんて ....
大切な友が夢に出てきた
もうずっと会ってはいない
もうずっと遠くへ行ってしまった
友はこう言うとふと煙の様に消えて行った
あなたと過ごした日々を
あなたと見つけたものを
あなたの光を忘れな ....
曖昧なあなたの自殺願望
私はそれをタバコを吸いながら眺める
缶コーヒーのプルトップを開けて
それを差し出すあなたの瞳の色
焦げ茶色の瞳は私を見ていない
二重螺旋で作られた私とあなた
時間軸 ....
落ち葉
いちまい
小川にながれる
風が舞う夜空に
架空の黒い壁が
立ちはだかる
うずまく
星雲に生れおちる
子供たち
刹那を掻きむしる
老画家
野望にのまれ ....
梅雨の合間の晴れの日の古本屋街の地下の
スタジオの片隅のアイロン台の前の椅子の
上の手持ち無沙汰の手の中の溶けるとける
ける速さ加速するスルスル汗をかくアイス
溶けるける早く終われ割れるライテ ....
若すぎるとうもろこしは甘くない
柔らかいけど少し白い
家族の分だけひとり一本だけ
ゆっくりゆでる
その細い姿で
家族の目を全部さらい
なにも言われないで飲み込まれてった
若すぎる ....
人は生きる理由があって
生きていくのだろうか?
それとも生きる理由を
探すために生きていくのだろうか?
そんなことがわからなかった10代
生と死の間で揺れていた
精神薬を10錠飲んで
....
日が昇り、墓場に咲く花は目を覚ます
目を上げると、無数の墓達が幾つかの丘を
つくっている
頂上には十字架や仏像
数え切れぬ魂は、墓場に咲く花と
戯れる
墓場に咲く花は、死者に寄り添い
....
潰れてしまうと 痛いから
そっと撫ぜて
その固さを ゆっくりと 確かめた
指を飾る 一つの輪が
全ての作業を
じっと 見守っていた
甲斐甲斐しく
いや この場合は
まめまめしく ....
水路を覆う雪を
流れに向かって蹴り落とす
他人の家の庭に入り込み
ただうろうろしているうちに
出られなくなる
あれは 何をしているのか
せっかく死ねたのに
....
銀と灰の
やわらかな壁に囲まれた狭い通路が
縦に立てかけられた
白い布団のようなものに満ちていて
そこを通り過ぎて少し戻ると
金にかがやく部屋があるのでした
....
優しくない気持ちは
意地が悪いのではなくて
悪意の塊でもなくて
邪な捻くれたいじけた心でも
寂しい気持ちの裏返しでも
なんでもなくて
ただ素直になれない
その程度のことだったりする
....
その瞳が
悲しいよって
かたっている
しろい花のよう
その背中が
淋しいよって
泣いている
しろい月のよう
そこにいるだけで
交わっている
にじみでる
オーラ ....
半開きの口を閉じもせず
瞬きさえできず
虚ろな面持ちで空を見つめる
ソラではない
クウを見つめているのは
どこを見たいとも欲することなく
なにが見たいのかも知る由なく
目を泳がさない ....
暗闇のなかの白い砂
寄せる生ぬるい波
ぼんやりと砂の中からひかる
やってもやらなくてもよかった
いつかの課題たちが
ゆっくりと点滅している
千匹の子どもを度々生むならば
名前をつ ....
白濁した海に混濁した意識が漂う
二年漂った結果は
表面がぶよぶよした海月状の肉体
漂うままに
また、意識が突然回復する
白濁した海の彼方の水平線は
鈍色の空に溶け込んで
その先にある ....
雨。
浮かれた願いを流してしまって
蝉の声も聞えない
しんとしたスコールが窓を叩く
耳の中の狂騒。
蝸牛がのろのろとフローリングを這い
残る鈍く光る涙の跡
蝉の声が死んだ時
私 ....
誰でも自由に自販機でタバコが買えた頃、あれは15の夜だった。
わずかな金さえあればタスポなんていらない時代。
最初のタバコを吸いこんだ時の高揚感。
格好つけたがりの少年は大人との境界 ....
なにも言葉が出てきません
吐き出す時ではありません
笑顔が減ったともっぱら噂
泣き出す時ではありません
会いたい会いたい 死ぬまでずっと
あなたの素性は知りません
夢にも出ない冷たい他 ....
あなたがあの夜話そうとしたこと
わたしは聞かなかった
朝になり、あなたはこの世界からいなくなった
あなたが名前を教えてと言っていたこと
わたしは教えなかった
夜が訪れ ....
道に落ちてる動物
それを拾って育ててみたら
思った以上に大きくなって
思った以上に懐いた
でも、今はもういない
夜に月が輝き
星が瞬く
何も音がしないから
少し不安になる
ここは ....
雨の日に
道の向こうから歩いてくる
幼い娘と母親は
手を繋いだまま
せーのーせっ
の声あわせ
水溜りをひょいと{ルビ跨=また}いでいった
わたしの日常も、密かな
せーのーせっ
....
身内無し
寄る辺無し
何も無し
無しは有る
愛知らず
恋は捨て
人見知り
でも友が
夢ばかり
追うばかり
きみたちを
追うばかり
道を行く
三叉路は
いつも左
....
グレープフルーツ色のグラスを、手に
今夜はこうして夢見よう
いつかは消える、この道ならば
少々頬を赤らめて
僕は知らなかった
今・この瞬間、世界の何処かで
赤子が産声をあげ ....
金曜日に埋まる人々
金曜日が終われば必ず発掘される
だからこそ人々は
金曜日の空洞に無我夢中に埋まっていく
登りなのか下りなのか
定かでないまま坂は広がり
明度を失った空は
大地を限 ....
可能性を歪める大人が多すぎるから
傷付ける言葉も 横行するのでしょうね
見たまま ふわふわで かわいらしい と
それが 唯一の 褒め言葉で あるかの如くに
教わったでしょう
あなたが ....
時々開けられる引き戸から差し込む明かりは
身じろぎもせずに居る私にとって迷惑この上ない
引き戸ごしに聞こえてくる喧噪も静けさも
今のこの私にとってはなんら関係ない
徐々に変色してきた体に始めは ....
夜の空に入道雲が空に立っていたから
優しい湿度の空気を吸い込んで
ふうと風に流してみる
私はゆっくり星を掴んで
その温度を感じ取る
暖かさは初夏の夜風に拡散して消えていく
たばこに火をつけ ....
不公平なのやだから
公平であるのもやなんだ
あげるのが嫌いだから
嫌いをあげる
ほしくない景色が
見えてる間
ほしかったものも見えなくなって
ずっとこれが
安心の正体なんだって思っ ....
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132