絵のない文字
文字のない絵が
視界のなかを流れていく
その流れは
どんどん速くなり
この手のひらさえも
見えなくなるくらい
包んでしまう
絵のない文字
文字のない絵が
紙を飛び ....
私の胸にあいている穴に
風が吹き抜けて鳴る
すると私の奥の嵐が
またあなたをさらおうと口をあけ狂った舌を出す
今会いに来てくれないなら
すべての息の根を止めてやる
狂言
とはよく言っ ....
祖父は生きている
話しかけても反応はない
2018年1月31日の夜
病床の窓から見えている
皆既月食の様子を
リアルタイムで
語り聞かせている
復員してから今日まで
誰にも明かされ ....
空飛ぶ家の 群れのなかに棲み
扉から一歩を踏み出せずに
眼下にひろがる風と原
飛び交う家々を見つめていた
街 クレーター 街
人と原は円く分けられ
薄い緑に吹かれて ....
ああそうだ
もう戻ることはできないだろう
その温かな光に乗って運ばれていく
思い出が美しくフラッシュバックするシャワー
事と事の繋ぎ目の静かな時間
そうだここが最後の場所
しかし君は諦 ....
生きてる夢から
目覚めてみれば
そこには誰も
いないだろう
くたびれた
学校のような
薄暗い教室
寄り合う面々
それぞれの夢
彼らは目覚めて
立ち去った
夢が ....
赤黒く
異様な影を放ち
その物体は
冷たい闇に浮かぶ
それを映すこの目は
血を流すのではないかと
どんな幻想を見ることも
できるのではないかと
思えるほどの不気味さに
心を奪われ ....
霊的な事以外
妄想だったり
不確かなものだったり
そう痛感しているのに
バカさに驚いたり
怒ったりしている
オレは
バカだ
月が消える
地球の ....
木の間に覗く風景は子供の頃の思い出
溢れ落ちる春の光に
きっと明日を眺めている
春の光は淡く優しく それでも二人を包んでいる
春の光に想いを込めて
それでも景色を眺めている。
春の光に包 ....
時間がとぐろを巻いている
浮き上がった夢のあぶくたち
潤んで灯る面差しの
確かめる間もない霧散
くすんだ灰の白い
昼と夜の満ち引き
時代の蒼天を舞う鳥の糞に汚れ
それすら拭い去る ....
暖かいマンションの外から、
都会の雪化粧が見えた。
私は幸せだ。
信じられないくらい幸せだ。
幸せが怖いと誰かが言ったが、
今の私には幸せが寒い。
暖かな暖房でホカホカの部屋で ....
思いもしない場所で
記憶のかけらに偶然出会いたい
横断歩道の向こう側で手を振って
映画館の後ろの席から肩をポンと
絵画展の郷愁の絵の前で
喫茶店でコーヒー ....
寝たふりをしていたい
聞こえないふりをして
泣いてないふりして
傷ついたりしないって
強がって意地張って
頑張ってるって言い訳して
愛想笑いができないから
これでいいやって
....
壊されたあと
コンクリートの区画の名残
廊下やトイレやリビングか
なんてちいさな営みなんだ
けなげな遺跡
満月でもない月がくっきり
オリオンが真上で傾いている
....
濃い目のコーヒーを
ブラックで飲んでみる
特に目的はないけれど
そうしてみたかった
やっぱり苦くって
吐き出したくなった
我慢して飲み干して
なんともなかった顔つきで
....
煙草に火を付けてから
山盛りの灰皿に気付いた
これで今日何本目だ
いつからこうして待っていたのだろう
天井を燻す煙を見つめる
待っていたものはなんだ?
惑星と呼ばれなくなった遠い星 ....
ピースが一枚足らない
から
埋まらないパズルなんて
世界中のどこにでもあるさ
と
あの人は言った
足のねじれた椅子や
蓋の開いた頭蓋
一向に進まない
アナログ時計が
音楽に ....
カバンに詰めた記憶
ループのなかのスイッチ
そのスイッチにつけたカバン
それが書き込んだ記憶で
動き出すプログラミング
繰り返して生きている
心臓、血液、
....
足元の
靴ひもばかり気にしていたら
要らないものばかり
引きずって歩いていた
毎日
それを捨てる
ごみ箱ばかり探していたら
日々の営みを捨てそうになり
私は大きなためいきをついた
....
光に針をかざし
動かぬものを 動かそうとする
器に満ちた水
浪に囲まれた凪
動かそうとする
熱を感じること
熱を奪うこと
逃げ去ること
偽ること
緑の ....
だれかの横顔に傷ついた
曇りがちな町を変わらず今日も歩いてる
海の先では釣り糸たらして
ぼくと同じ夕陽待ちをしているんだね
明日は疲れ果てるのかな
なぐさめて欲しい
ちょっとずつ崩れていく ....
謝る暇も
謝る準備をする時間もない
時代が悪いとすればこの点だ
けれどそんな点は
いろんなかたちで各時代に存在する
曇り空
寒い朝
風なき冷たさ
雲 ....
躍動するように生命を
燃やしつくした人を前に
自分の鼓動を聞いてみる
その音に呼応して
生きている自分を確認する
彼は確かに死んでいるのだ
死んでいる魂の前で
生かされている自分を確 ....
足を踏み入れる
危険の領域ではないけれど
板張りの床に擦れる靴の裏側が
心地良い音を奏で
高級なサロンであると悟らせる
髙い天井にはシャンデリアが輝き
温かな光を放つ
厳選された招待 ....
杯から酒が溢れている
容量以上に入りはしない
さあおこぼれにあずかろう
わが同胞よアル中諸君
財布から札が溢れている
使える額など知れたもの
恵んでもらえだめなら盗め
親愛なるストリ ....
立春を待ちながら
冬を抱きしめる
いとしさに狂い惜しむ
十月にも秋を惜しんだけれど
秋は秋なのだと{ルビ悟=し}ってもいたから
立春を願いながら
冬と心中したい
できることならば秋も ....
熱を帯びた大地の上に
呼吸を繰り返す大地の上に
赤いひとつの影がある
影は、
一度爪を立てると
じわりとひろがり大きくなる
大きくなった影は足を持ち
大地を駆けていく
影から生 ....
キーツが本の中から語る
細い川の流れが、視える
道を歩くわたしの影にも
細い川の流れが、視える
時代も国も
異なる二人の間を
結ぶ
ときの川のせせらぎに
耳を澄まして歩けば
....
田畑に屋根に
素直なまでに雪降り積む
人生はトンネル
出口も入口も遠くて真っくら暗闇
田畑に屋根に
素直なまでに雪降り積む
理不尽なら理不尽を受け止めようか
....
おり紙を折った
なにを折ってもうまくは行かず
折り目と皺は増えるばかり
可燃ごみへ向かう手前
あと 一度だけ
翼はあっても翔べない鶴か
スーッと墜ちる飛行機か
色褪せて邑になった濃紺 ....
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