salco

四月
夜来の雨が軒を叩いて
やんだかと思うと強まって
千の靴音を撒き散らすと
再たふと空のどこかに引っ込んで
猫のように耳を澄まして
南の果てから吹く風の
雄々しい声を聞くようで

涼しい目の
海水に濡れた髪を垂らした
熱い体の
長く硬い腕にサーフボードを抱えた
エゴイストの
艶やかな胸から吐き出す一杯の
疾走の叫び
遥か常夏の炎天から洋上を遡上し
女達の髪という髪、頬という頬
首筋という首筋、腹という腹を
なぶって行く哄笑の風

だから私も眠れない
雨飛沫の歓喜の嬌声が
うねって悶える彼女らの愚かしい熱情が
棺の中まで降り注ぐから


自由詩Copyright salco 2013-04-07 23:26:49縦
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