にわか雨が遠ざかったあとの 特別な においがして
草むらの開花のそぶりは どれもこれも霧の中
足にからむ露を 蹴散らしなから
花畑を駆けぬけると 遠い山は ぐっと近くなり
鬱蒼 ....
小さなガラス壜の中は海
群青のさざなみでゆらめく
海をコレクションする女は
孤独であるけれども
絶望的に孤独ではなかった
本当の海まで
もはや歩いていくことは不可能
この部屋から出る ....
「カリヨン」
乱太郎
さっきまでの淋しさは
何処に
さっきまでのうっとう ....
失った
後悔を
追いかける
俺は無常
無くなった
腹減った
飯を食う
俺は無常
虫が湧く
無視をする
虫になる
俺は無常
情熱に
蓋をする
莫迦になる
俺は無 ....
雨の降りはじめる 特別な においがして
猫のヒゲがゆれる
森の虫が 鳴いて その余韻の先で
おこめのたける匂いは
のりしろのにおい
やま と たに を
のりづけしようと ....
薄暮に出現する影は
限りなく
薄い
太陽が西に消え
その魔力から
逃れた
サターンが
息を吹き返す
何処へ
行くのですか?
柊の赤い実が
真面目な顔して
問う
ええ、この ....
ベイビー
あたしのことをそう呼んだのは
最初の飼い主だった
本当の名前はコインロッカーベイビー
長い名前はめんどうなので
いつしかベイビーになっただけ
生まれてすぐ
まだ眼も開い ....
感覚を駆って
熱と湿度が飛び交って
ふたつの身体を高めていく
星間飛行の鈍色の船体が
故郷の水を恋しがって
恒星の配列をなぞるように
五感が跳ねて
目を閉じているのに ....
折り紙
あなたは何を折りますか?
折り鶴
空へ飛ばしませんか?
紙を折れば線がつく
たとえば人生が一枚の紙であったなら
線の数を讃え合いましょう
紙を広げれば最初からやり直せる
....
空を朱に染め、
太陽が堕ちる
キミを失う世界で
僕は怯えている
絵空事の未来描いてた
瞳閉じたまま崖を行くような
愚かで自由な旅路
繋いだ手の熱があれば
何も怖くなかっ ....
宇宙国銀河太陽三丁目地球日本師走なう。
癒されて励まされてるひだまりのような笑顔にそっとありがとう
太陽をたっぷり吸った綿布団幸せもっと増やす気がして
冬の朝鍋の湯気にて温まり「 ....
現実を超えた現実を生きている
尖頭恐怖症の男が言う
僕は丸い世界に住みたいのに
なぜか
角度がせまってくるんだ
君のその細い指さえ
心臓をつら抜く槍になる
空から降る雨さえ
脳 ....
指関節をなんど曲げても
言葉がどこにあるか
わからない
人類の要素のひとつ わたくしも
紙とペンで書いた言葉を 今は ....
今日の議題は今日の空! 昨日でもなく明日でもなく
誰にでも優しい男がいたけれどこの空みたいと思えばよかった
命って一人がひとつ持ってます持ってる間は生きています
病室の四角い窓が今朝 ....
舗石の下には砂
自由の下には旗
投げつけられた火炎瓶
怒号、
硝煙、
五月革命のパリ
嘘つきアルベール
誰しもあなたのことをそう呼んだ
真実ばかりじゃ息がつまっちまう
たまには嘘 ....
目が覚めたらやっぱりおっちゃんやった おっちゃん
ひとりやったら泣いちゃう おっちゃん
そんなおっちゃん、やさしいしたってやー
「平和な時代のこの国に
生まれたことを感謝しましょう」
先生は言うけれど
教室の陰惨ないじめを知っちゃいない
もしくは知っても知らんぷり
そのうち開き直ってふざけてるだけだとすり替える
次 ....
今週から急に冬になったねって
君とかわした週末朝のメール
今年のクリスマスプレゼントは何にしようって
とつぜん焦る気持ちになったけど
それを考えることがすごくすごく嬉しくて
寒い朝に心が ....
グラウンド・ゼロに何が建つのか
私は知らない
おそらく
洒落たショッピングセンターと
御影石のモニュメント
原爆ドームを見上げると
青空が見える
ドームの小ささを
私たちは ....
私とあなたのこれからを
たとえるなら広い広い海であり
小さな舟であっても
きっと二人なら渡ってゆける
嵐に巻き込まれ
高波にあおられて
突然の海流に流されても
きっと私たちは離れずに ....
男の話
浅くなった眠りの中で
蹄の音がしていた
となりで眠っていると思った男が
雌の鹿だといった
森の
そんな においのする男だった
神さんの住むという深山の
山間 ....
久しぶりにジブリ映画を映画館で観た。この夏封切りの
「コクリコ坂から」。急遽予定が変更になり、時間に余裕
が出来たからだ。当初は他の洋画を観るつもりだったが、
ちょうど良い時間帯のものがなく、期 ....
【さっぱり】
さっぱりとした後味のタイカレー そんな男になりたい私
【至】
舌肥えた彼女の心掴むため腕によりかけ至高のメニュー
【寿】
寿の文字が遠くへ消えていく おひとりさまに慣れ ....
朝ひとつ
文鳥を買う
老朽の小鳥店で囀るけたたましさに呆然として
毱のような歪んだ標(まと)を見上げた
アクリルを
内側を
痛めつけながら悲鳴(いのち)は
雛たちから剥 ....
夜風が強く吹いています
あなたの町でも風は強いですか
月が外灯よりも明るいです
あなたの町でも月は明るいですか
木々が夜風に鳴っています
ぼくを風がなぶっています
....
三月の
まだ、少し肌寒い日
人々のざわめきが
どこか他人事のように響く朝
駅へと続く道を僕が
いつも通りに歩いていると
巨大なエスカレーターが
青空に ....
雨粒になれたら いいね
自分が固い存在だと
地面に激突する!って思った瞬間に
身を竦めちゃったりして
その後で
心まで 竦んじゃったりして
ついでに
目も閉じちゃったりする ....
並列運転でのろのろと自転車をこぐ
パーマのとれかかったあなたの髪を
ふやけた空が切り取ってる
あなたは時々私の二の腕をつまみ
ニヤリと笑ってみせた
季節は無情にも過ぎていくというが
そ ....
ゴルフ場は途中ガスで煙った
灰色のガスで出来た建物に四方を占拠されたみたいになった
キャディーさんに方向だけ教えて貰ってその建物に打ち込む
ボールがちいさな点になってガスのなかに消え ....
夕暮れは知らないうちにやって来る
ブラインド越しの窓の外
夜空が突然落ちてくる
ビルの谷間の一角の
ボーッと灯る明りの主は
どこから湧いたかおでんやの
屋台が見える路地裏に
勤め帰り ....
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