さわれないことば
冷えてゆくかけがえのなさ
いつもとぎれてしまうモチーフ
あたたかいスープもないテーブルでは
君の影がゆらめいてみえる
ほんとうは君の髪にふれていたかった
ゆびがい ....
切り取られた一枚の記憶が川下へ流れては沈む傍らに
日暮れを思い起こせば深く胸に刻まれた年輪の危うさ
地上より高く聳え立ち
波は大きくうねりながら目蓋を伝い近づいてくるけど
‖溜まりに浮かぶ ....
ある用事があって久しぶりに
母校の大学の図書館を訪れた帰り坂
どこかから何かを燻らしている様な
芳しいとも苦っぽいとも想える
懐かしいような想い出したくない様な
薫りが否応もなくぼく ....
なんにもいらない
もうなんにもいらない
なんにもいらない
記憶にものこらなくていい
あなたが望む証が来るなら
ぼくは存在しなくてもいい
なんにもいらない
もうなんにもいらない
なん ....
ひらり おちる
消しゴムのかす
えんぴつを研いだ時の
木の破片
真っ白なノートに書きなぐった
たくさんの言葉たちが
笑う 泣く 笑う
書いては消した 小さな唄
ちっ ....
バンドネオンの演奏を初めて生で聴いた。
黒い直方体の蛇腹を拡げたり縮ませたりしながら、
左右ともに30以上あるボタンを押して演奏するその楽器は、
習得の難しさから悪魔が発明した楽器と ....
まだ恋の列車に乗ってすらいない改札口をくぐったところ
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幼い日
五月五日
かしわもちが右手の親指にからみつく
ふわふわした髪
大きな耳
口元に大きなえくぼがあった
一瞬の喜び
木の床に ....
一代を30年で計算すると
ぼくの20代まえは600年まえ
それは室町時代のただ中で
西暦1400年前後の人々のこととなる
2を20回掛けると104万8576
だから600 ....
母の日にクッションカバーを贈った
母とはなんだろう
産み落としたひと
育てようとしたひと
いろんな種をまくひと
必要とされて欲しいひと
おもしろいひと
そのひとつひとつを私がやっている
今日
わるぐちを投げた
うまくいかない 輪投げみたいに
二度ほど
書き直してから
送信
ほどなく
私の書いたわるぐちが
白い画面に現れる
匿名の
小さな怒りだ
ああ
私 ....
確かに歳はとったよ
正直に言うなら老いたのかも知れない
からだは正直に歳月を投影する
そりゃ60年も酷使してきたんだ
無理をすれば音も挙げる
死にかけたことだってある
でもぼくの精 ....
緑摘む前世あなたは月でした
見せブラを引きちぎり八十八夜
明日葉やソースで洗う銅コイン
行く春や時間泥棒多発中
横たわる比叡拝んだ今朝の夏
外来魚釣っては捨てて夏に ....
倉庫の隅で
ひとつの闇と
もうひとつの闇が
汗をかきながら踊っている
南京錠のこじあけられる
冷徹な音をおそれ
かれらは時折、同時に
....
古本のあいだにみつけた四葉のクローバー
これをはさんだのはどんなひと
幸福をひとつ逃したのかなあ
それならかわりに僕がもらっておこうか
きみの幸福の受信感度は良好かな
太陽にはいま怪物級 ....
さくらんぼの花が咲いている
うっすら目を閉じ微笑んでいる
ソメイヨシノのような艶やかな色香はない
浮世を忘れようとその下で酒宴を張る者もいない
白く清楚なその花は
....
初夏
少年の頃
お話の木の絵を見た
広葉樹の木陰で
子供達が
眼を輝かせ
耳を傾けている
お婆さんのことば
森や草原を漂い
風に運ばれて
村や町や港や
海や諸国を巡り
....
ママ あたしはアンタが大嫌い
ママ アンタはあたしを殴って出て行った
あたしを捨てて出て行った
ママ アンタを殺したい
ママ あたしは絶望してるんだ
アンタをなぶり殺しにしたい
憎 ....
嵐の海を
さまよう
一艘の舟
なすがまま
耐えるのみ
時間が経つのを待ち
天に祈る
無事に帰れますように
次の朝港につく
灯台は一晩中
見守っていてくれた
感謝します。
....
天から光がさし
地から湯気が立つ
鳥たちの声
虫たちの息
生きている
感じている
日常を忘れ
自然に返る
敵はいない
味方もない
一人で歩く
今を生きる
少し大げさに
五月の朝を吸い込んだら
つまらない不純物など
軽々と許せてしまうくらい
気管が心地好くせせらいだ
少し控え目に
五月の朝を吐き出したら
ためらいや秘め事を
うっか ....
仮面ライダーはバッタ屋だったけど
気づかなかった 。
トンボって
身体機能の凄いこと 。
町から田んぼが消えると見えなくなった
春から夏へ、山から谷へ
なんだか損をしたようで
....
頭を掻きつつ辺りを見回しながら惚けている。
食べ滓が下顎にへばり付き、それでも平気で涎を垂らしている。
何をするでもなく、何かを考えている様子でもない
背もたれの高い椅子に、深々と腰を ....
雨上がりの傘はステッキ代わり
クルクル回してスキップすれば、水たまりにパシャリ
そして、キャッキャ、キャッキャと
もっと眼(まなこ)は開けておけ
正義が見えなくなる
しかしよく眼を開けたままでも
本当の正義が見えることはほとんどない
それはいつも虫けらのようにひとを
殺すためにでっち上げた贋物の ....
井上雄彦のスマイルを見つめていると
それがぜんぶあなたの顔に見えたのです
みんな笑いたかったんだ
できれば一緒に
みんな笑いたかったんだ
できれば何処かで
老若 ....
街には水路が流れている。有名な水路。 休日の朝、水路の東には太極拳、西には朝ヨガをする人が集まる。先日は人気ドラマのロケが行われていた。『美人三姉妹シリーズ』のサスペンスだ。この街では殺人事件が多 ....
野の花が
あんなにも
優しげに微笑むのは
きっと
手向けの花であるから
肉体を持たぬ人に
花以上に似合うものが
あるでしょうか
空腹も感じないので
食べ物はいらない
物欲も ....
運命って残酷だよな
俺のダチは雨上がりに
バイクに乗っててさ
高速の小さな水溜まりに
スリップしてバイクはフェンスに
激突してダチは投げ出されて
下の道路に飛ばされて
丁度来たトラッ ....
根付いたまま、窓硝子の曇りでわかる
明日はきっと爽やかな風が吹くでしょう
…おかあさん…と呼べなくなってしまうおふくろ
自分を愛することを捨てた 。
あなたの背中を拒否するように
....
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