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   随分昔のことだが山里の学校で疎開児童をやっていたとき
   先生は教えてくれた
   「いいか、熊に出合ったら息を止めて死んだ振りするんだぞ」

レントゲン撮影技師はオシャベリ好きで
 ....
ハーネスを付けた老犬が
散歩している
ヨタヨタと…

仔犬の頃から
遊びあった犬
散歩中に私を見つけると
尻尾を回し飛びついてきたのだが

「マリリン」呼んでみる
近寄ってこない
 ....
大根一本 一〇〇円
ステーキ肉一パック 二、〇〇〇円

畑から引っこ抜いたばかりだという
昨日まで大地に守られていた命
まだ十分に死んだとはいえない一つの命 一〇〇円
高いのか 安いの ....
花粉も埃も取り去った無菌室で
くらしていますが
危険はどこかに潜んでいて
いつも隙をうかがっているのです

みがききぬかれた手すりが
不思議なことに
摩擦をなくしていたり
すべらないゴ ....
白い都会の硬い土塁の中
あなたが灯をかかげれば
わたしは虹を灯す

遙かなやまの森の中でも
あなたが歌えば
わたしもさえずる

海の彼方の小さな島で
あなたが跳ねれば
こころは ....
目をつむると見えるものがあった

遠くの山頂に輝く光
道は途中で草むらに隠れ
どこまで続いているか見えないけれど
どこかに沢が有り
林間に小道が有り
小動物の通る道など
きっと到達する ....
書きたくないねえ
なんだか 自分の死を待つようで

あんたが死んだ後の片付けだと
どうすりゃいいか分からんってか
死んでから見張っていられるでもなし
とやかく言うたかて

訃報を出すと ....
夕陽は波の音を残して
海と空の混沌に溶けていく
松の梢から昼の光が消えると
ぼくの中で映像がうずきはじめる

 時を忘れて遊んでいたぼくらに
 夕餉を告げる母の声がとどくとき
 一日 ....
前に体重がかかっていますね
と 足型調べる靴屋さん

胸は反らせているはずなんだが
と わたし

町中を歩いて
ウインドウに映るわがすがた横目で眺めれば
なんと言うことだ
前屈みでせ ....
少年は決意した
高校生になったら
皆の前で
自分の言葉でしゃべると
そのために
今の学校からは誰も受けない高校を
選ぶのだと
例え面接があろうとも
はっきりものを言うと
緘黙していた ....
閉め切った窓のすき間を
すり抜けた時報のチャイムが
昼寝のベッドへ潜り込み
勝者を確信していた私の手が
上げられる前に目を覚まさせる
惜しいことをした

確かに戦っていたのだ
始め ....
山椒はけなげな樹だ
人に若芽を摘まれ
実を横取りされても
再び芽を出し花をつける

山椒は優しい樹だ
青葉に隠して
揚羽の幼虫を育て
幼虫に臭いをすり込ませ
ああこの臭い
幼虫はこ ....
今 冷静に考えればおかしなことは幾つもあった
学生服のボタンが陶器に替わったのは良いとしても
疎開先の山村に棲む父の従兄の大工小屋で
兵隊さんたちが材木を使って
角形の潜望鏡のようなものを ....
夕陽に向かって走っていた電車が停まった。長い間揺られていた人々は立ち上がった。この先には もうレールはなかった。が 旅が終わったのではない。
ここからは ひとり 自分の足で歩く始発駅でもあった。過去 ....
今日も
野菜といっしょに売られる
店員の呼び声に包み込まれて
行儀良く並んだ大根の色つやを見比べ
身長と体重を確かめているあなた

 それは昨日  
 あなたから延びた手が
 子宮にし ....
       ー年を取るとはこういうことか7ー

若者よ ズボンをはくとき
ベッドに腰掛けなくても履けるか

家中の者が畳の上で生活していた頃から
立って履くのが常だった
布団の上で寝転 ....
箪笥の奥深く秘められていたいくつかの小箱
おそらく母の物であろう歯の欠けた櫛に
出合ってわたしの心が波立つ

そして 夭折した兄たちの名に混じって
ボクの名が乾ききった小箱

それは ....
超現代詩は 聞かせるようにつぶやけば出来ます
下手に表現技法とか 文法とかにこだわると
情(こころ)がそがれます

超現代…
はて 現代を超えると何時の時代になるのでしょう
近頃 宇宙 ....
ー「安全保障関連法案」衆院通過の日にー

医師は
腰の痛みを訴えるワタシの
積み木のような背骨のレントゲン写真見ながら言う
 
  ここがずれていて傾く
  それを正 ....
産まれた国は戦争していた
父は軍人にしようと思ったかどうか
まるまるとした数え三歳のぼく
金モールの軍服姿 
腰にサーベル 右手に千歳飴
ギラギラと輝いた眼が
見ていた未来は何色だった ....
   ―歩いていたのは七〇年前―

前方は霧に閉ざされて
先導する人は見えない
が 上空に山の頂が透け
笛の音は聞こえる

山の頂き
そは 蜃気楼か 実象か
先導する者は知っていると ....
あなたを焼く炎は
煙さえ立てることなく
空に消えて

後には
黒枠の中で
ほほえむあなただけが
残っている
  
空に
光りの砂 
さざめき

大地に広がる
夏草の波
 ....
熱帯夜に
惑わされて腐乱した睡眠から
止め処なく垂れ流れるゲルは
黒い卵を内包していた

寝息が言葉に染まって
過去の幻像を描くとき

醗酵したゲルは悪臭を放って
野を枯らし 街 ....
家を背負っているのではない
としても
先祖代々の戒名が殻に閉じ込められ
捨てることなど出来無い重み

ああ
家を捨てたナメクジよ
お前は…
人間といったところで
革袋に詰め込まれ
骨に抱えられた
一本の管
ちょっとした異性の情けに
心が前を向き
元気になって意気上がり
意気上がり
浮かれ心の有頂天

天に昇れば
あとは 落下
後ろを見ては 沈む心
取り巻く人の
心を上目遣いに覗き込み ....
中学生になってはじめて学校へ行った日
いくつかの坂道を登り下りし
いくつかの集落を抜けてたどり着く

坂道は辛かったが 
ところどころに桜が花をつけていて
気分は悪くなかった

集落は ....
疲れた顔で見舞いに来ないでほしい

わたしの看護のために
あなたを育てたのでは無い

あなたはあなたの生き方で
社会の仕事を果たさねばならない
それがあなたの人生

わたしの看護が加 ....
まだ若い老人であったころ
同僚と紅葉の山麓へドライブ旅行にでかけた
秋空のもと 静かな集落を抜けるとき
前方遙かに 背をかがめた人が横切るのを見た
同僚はスピードをやや落として言う
「老人は ....
祭り太鼓の音があちこちの集落から
田面に流れ出すと
こどもたちたちは宿題も魚取りもすっかり忘れて
祭半纏をはおって祭宿に駆けつけ 
出迎える獅子頭を連れ出して
集落内を練り歩く 

ぼく ....
そらの珊瑚さんのイナエさんおすすめリスト(143)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
死語と愚痴- イナエ自由詩8*16-9-13
犬眠る、そして_ー歳を取るとはこういうことか23- イナエ自由詩15*16-6-23
命の値段- イナエ自由詩10+*16-2-26
塀の中が生きる世界の全てだとしても- イナエ自由詩16*16-2-15
あなたに- イナエ自由詩16*16-2-2
「目をつむると」_ー歳を取るとはこういうことか(9)ー_- イナエ自由詩16*16-1-25
遺書?- イナエ自由詩11*15-12-10
夕焼けの海- イナエ自由詩14*15-12-5
前屈み_ー歳を取るとはこういうことか8ー- イナエ自由詩15*15-11-27
少年は決意した- イナエ自由詩7*15-11-25
未完のまま- イナエ自由詩11*15-11-8
山椒は優しい樹だ- イナエ自由詩15*15-10-30
【HSM参加作品】狂気の時代- イナエ自由詩14*15-10-24
終着駅- イナエ自由詩17*15-10-12
日常- イナエ自由詩9*15-10-8
物を両手には持たないで- イナエ自由詩21*15-9-22
臍帯- イナエ自由詩22*15-9-2
超…- イナエ自由詩13*15-8-20
積み木- イナエ自由詩8*15-7-17
サーベルと千歳飴- イナエ自由詩10*15-7-14
「ハメルーンの笛」に曳かれて- イナエ自由詩11*15-6-28
夏草- イナエ自由詩21*15-6-20
夜空を夢が流れて- イナエ自由詩12*15-6-14
カタツムリ- イナエ自由詩18*15-6-8
人間といったところで- イナエ自由詩11*15-5-31
こころころころころがって- イナエ自由詩15*15-5-25
戦慄- イナエ自由詩12*15-5-19
娘よ- イナエ自由詩16+*15-5-11
年を取る取るとはこういうことかー振り返るー- イナエ自由詩11*15-5-5
村祭と従妹- イナエ自由詩7*15-5-3

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