すべてのおすすめ
嘆息の理由なら他にある
豊満な月に耐えきれず包み紙を脱がせただろう
子供みたいにあちこち汚して
今日がその日ならと狼みたいに祈ったね
誰かのせいだと言うのなら
それはわたしのせい(玄関前の犬 ....
貴方の声が
虫のように耳もとにささやき
私の皮膚を穿孔して
血管の中に染み込むと
私の血流はさざめき
体の奥に蝋燭を灯すのです
貴方のだらしのない頬杖も
まとわりつく体臭も
すべてが私 ....
時の過ぎるのを忘れ
畦道にしゃがみ
ひらく瞬間を待っていた
山の向こうに月が姿を現すころ
何かが限界をむかえるように
耐えていたがくが
プツリと裂けて
薄黄色い花びらが
ふるふる ....
どこから、どこまでが
いのちなのか
そんなの、訊ねられても
わかんないよね
ましてや、人生なんて
いつから、どこまでだなんて
微妙だからさ
わかんないよね
考えるのもアホらしくって ....
朝目が覚めて
いつもないてる
パンをかじって
いつもないてる
なきながら
運転している
なきながら
朝礼している
音楽聴いて
いつもないてる
シャガールを見て
いつもないてる
....
ベランダを覆いつくすケヤキの枝に
キジバトの巣がある
朝六時
キジバトの鳴き声で眼が醒める
ジュウイチジニキテクダサイ
ジュウイチジニキテクダサイ
十一時に?
どこへ?
夢 ....
古いガラスのように蒼ざめて鳴り響く
――あれは なに?
掌の海から跳ねる両目を失くした魚
それは
テノヒラ 温かすぎる子供のテノヒラで
....
草葉に風の足音
夏の光の深い底で焼かれる虫たち
夜に置き忘れられた
艶やかな目に乾いた夢が映り込む
生と死の歯車が柔らかく噛み合って
素早く回転する
濃厚で豊満な匂 ....
太陽の匂いが漂うんです
懐かしいあの土手沿いの道の一画に
両手から
はみだしてしまう大きさの
おおきな亀裂のあるトマト
とうさんが ....
埃っぽい一日が暮れかける
ゆくあてもない想いが影といっしょに夕闇に溶けて行く
ちっぽけな哀しみを手のひらで転がして
ため息にも似たつぶやきを繰り返す
幼い頃母に背を押されるようにして嫌 ....
大海原に浮かぶ月
足元の砂に
ちりちり打ち寄せる
光の欠片
溶液になった
クラゲの悲しみ
強いひとにも
朗らかなひとにも
悲しみはある
それは弱さでも
やま ....
神話が語らない
占いの及ばない
誰の願いも届かない
遥か遠く
暗く冷たい空白に
在って
在るからこそ放出する
己の核から外へ外へと溢れ
続け 続けて
やがて尽き果てた
非在の残像
....
わたしの死角をひとひらの蝶が往きつ戻りつしていた
目の前に広がる森の少し分け入った辺り木漏れ日にあ
やされながら成熟した木々の裾に纏わるつややかな若
木の葉は森の外観とは対照的で光を透かして淡く ....
ぼくのきらいなキミの中に映像や声がたくさんはいってくる瞬間にたちあいたい
そんなキミをとりまいている勝手なワイファイに一緒にざけんじゃねーぞと叫び
そのときおとずれる眠気や無気力や無遠慮な刺激とか ....
コンビニのドアが開き
ひらひら舞い出たモンシロチョウ
誰も見てはいない
光は雨みたいに激しく額を打ち鳴らし
影はつま先から滾々と湧き出している
こんな日だ
わけもなく後ろから刺され ....
ちっちゃなちっちゃな苛立ちが
筍みたいに
地表に
尖った芽を出したかと思うと
みるみる
大きく育ちはじめて
考えないようにしようと思っても
忘れようとしてもてがつけられない勢いで
肥大 ....
足音は足跡から乖離する
帯びた意味を秘めたまま
けむりのように漠然と白い
地球を見上げる朝に
ちぎられた円環のビーズ
偶然が描いたあなたの星座を
子猫がシャッフルする
無邪気さと予感の熱 ....
ハーネスを付けた老犬が
散歩している
ヨタヨタと…
仔犬の頃から
遊びあった犬
散歩中に私を見つけると
尻尾を回し飛びついてきたのだが
「マリリン」呼んでみる
近寄ってこない
....
悔しくて、悔しくて、悔しくて、
何度も、何度も、キスをする。
かなしくて、かなしくて、かなしくて、
いつまでも、いつまでも、抱きしめる。
別れが近づいていることが、
わかればわかるほど、 ....
いきなり冷水を浴びせられ
置かれた境遇に気づく
昨日まで笑いあっていた人々が
一歩退く
仕方無い
自分はそちら側でなくて良かったと
誰もが胸を撫で下ろしている
私に向けられる
さり ....
あの日を境にわたしの中から
わたしがいなくなり
半透明な海月になった
荒ぶる海流に叩きつけられ
なす術もなく右へ左へ
痛みとともに流され続けた ....
見えなかったものが見える
ふくらんで
ふくらんでほどけ
ふわり ひらく
ゐろかおりかたちあまく
風に光にとけて
そらを渡るもの
ほそい弦で触れながら
匂やかな{ルビ詩=うた}の足跡をた ....
夕食を採り
ぼくは二時間ほど浅い眠りに沈んだ
眼が覚めるとすでに妻は眠りに就いていた
割れた中指の爪先が気になって
パチリ パチリと
爪切りを使う
独りの時間
消えかけた夢を少し ....
若い頃は良かった
なんて言わない
思わない
今が一番
いつだって
これからだって
とかなんとか言ってみても
こんな春のいい陽気に
年頃の娘たちが
きれいな足を惜しげもなくさら ....
頻繁に人にであうでもない
この生活にあまり不満はないのだ
ベランダの脇の雑草がどう伸びようと
有る意味僕のそとの世界のできごと
疲れている意識もなるべく解消しようと
優しい母や鬼嫁も ....
「思春期」
疎ましく膨らんで
悩ましく弾けて
狂おしく奔って
暑苦しく押し黙って
思春期なのか
四月は変拍子
狼狽える前髪で
躊躇う指先で
彷徨う吐息で
蹌踉め ....
【無口】
山高帽の男の顔は見えないが
どこにでもある石を缶詰のように
開けようとしている
男にだけにわかる匂いを閉じ込めたのは
誰なのか
日記帳の文字の旧字体が
机 ....
ハイバックの助手席じゃあ
帽子のツバが すこしむずかしい
すこし雨滴のあとの残る車窓から見える景色は
映写機のように枠のある動画
だけれども携帯の電池なんて いらないよ
幸運にも にわかに咲 ....
木のかけらと
あたたかい水が
午後と夜の境いめに
蒼い浪となり流れ込む
錆は子らの名をくちずさみ
鉱は荒れ野に伏している
陽を転がす指や指
流れの内に華やいでいる ....
百均で買ってきた
ミニチュアの黒いうさぎは
手のひらに載せて
選りすぐろうにも
どれもみな
哀しくなるほど同じ顔
同じ姿勢同じ表情
どうしてこんなに正確に
大量生産できるのか
まるで ....
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