すべてのおすすめ
気難しい顔で、本を読んでいた
犬が
ニッと笑った。
――それには訳がある。
犬の気難しさより
笑いの
その意味の落差のほうが
カクッと おもしろかったのであり
....
どこからどこまでを少女と呼ぶのか
それは自分の幼年をさかのぼる程度でしか知らない
だとしてもだ
あの病院で出会ったのはたしかに少女だった
「会った」というより「会ってしまった」
そう ....
無数の傷のついたフライパンで
三枚のベーコンを焼いている
その男はただの大人だった
円周率を小数点以下八桁まで記憶し
足指のひとつに水虫をわずらう
....
あおい空の向こう側
彼岸のかなたに届くまで
大きく大きく手をふって
元気です、と
あなたにすべて ....
高い高いをされてる時が
一番高い時だった
何よりも誇らしい時だった
もう僕を持ち上げられない父が
故郷に帰る段取りを心配している
ぶつぶつとうわ言のように
出鱈目な記憶を繋ぎ合 ....
爪先まで宇宙
きみは阿片を吸ったことはある?
もちろんないよね当たり前だよね
ぼく?
答える必要はある?
答えて欲しい眼だね
香港でね一度だけ
でも阿片窟に辿り着くまでは
大変だったしお金も遣 ....
鳥はなぜ逃げない
足下に 跳ね回る
逃げないが 近寄らない
近寄らないのに 逃げもしない
小さな雀
鳥は なぜ逃げる
逃げるのに また舞 ....
息子が帰り支度をするのを見つめながら先生からきょうの息子の様子を聞いていた。
お礼を言って先生にぼくは微笑み保育園を出た。
ぼくは笑顔をよくほめられる。あるとき仲間に黒人であることの利点を ....
雪に埋もれたまま青く影を落とし
家々は俯き黙祷する
気まぐれにも陽が歩み寄れば
眩い反射が盲目への道標
抱擁されるまま
冷え切った頬が温もり
辺りに耳が開かれるころ
頭の後方 梢 ....
古いデパートの舞台裏、
職員用通路の片隅に、
忘れられかけた物置がある。
狭く、薄暗いその部屋には、
用済みになった小道具が。
埃をかぶったハンガー、
古い ....
過去にとらわれた方は、遠い目をしてはります
未来にとらわれた方も、遠い目をしてはります
そして現在にとらわれた方は、白昼夢をみてはります
冬がひきこもっていた
クローゼットを開け放ち
ハンガーにヒヤシンス
春のドレスが花ひらくを待つ
頼りなげな薄手 ....
ぼくには、ない
その欠片すら、ない
それが不幸なのか
幸福なのかも分からない
あなたにはあるだろうか
なにかに殉じるものが
あなたにはあるだろうか
猫が転ぶとき
そこには道路と猫とわたしがあって
あたかもおのおの一番遠いもの同士のよう
二月にふる雪はぴらぴらとして細かく
手のひらにのせるまもなくとけ消えてしまう
ひとひらひとひら ....
咲きかけの花が
枯れてしまったよ
風に吹かれたか
人に摘まれたか
はたまた
養分が足りなかったか
僕にはわからないが
それでも
悲しくなるのは
僕も
咲きかけているからなの ....
何処よりも早く
咲く花を見たくて
何処よりも早く
鳴く鳥を見たくて
僕ののどちんこは
大陸から張り出して
しょっぱい声で
波を歌い続けている
賑やかな言葉は
トンネルの闇 ....
親はいないのか
捨てられたのか
たかいのか
ふかいのか
風がきつい
まぶしい
今日の空
ひとのかたちで
風に捨てられて
おまえは
なんていう名の雲か
太郎か、次郎か
花子か、雪 ....
あなたの胸に、耳をつける。
はらはらと
降りつもる、ゆき。
さいげんなく現れる、ぶあつい雪片。
あなたにふれた手のひらが、やはらかく折り重なり
何層にもなってゐる。
ぼくのも、知らないひと ....
月が満ちて満ちて音楽がこぼれる
0次元
面積を持たない点は哀しくて
あられのようにパラパラと降りそそぐだろう
なんのうえに
1次元
線虫となった哀しみはのたうちまわって
それでも面積を持てない
2次元
....
死んだ魚の隣で
ビニールの袋の中で
スケルトンな体をくねらせて
白魚は泳ぐ
その臓器の あまやかなピンク色は
ゆるされている時間の刹那を泳ぐ
なにやら虚無からの出立や ....
あなたは眼の前で
ひとがひとに殺される所を視たことがありますか
ぼくは一度だけあります
そこはサイゴンの中央広場でした
それは公開処刑でした
若い女性で南軍からベトコンのスパイとして
....
G7先進7カ国の
時間給会議が
本日AM5:00
高田馬場駅前に
停められた
トラックの荷台で
行われた
各国の代表者は
一日目の議題
これから始まる
長野県でのダム工事の
時給 ....
移転先で埋めた柿の種子が
いつのまにか幹を伸ばし梢を広げながら
ウラノスにすなおな想いを秘めて
真夏には緑陰の王者を自負し
ボレアスにもざわめきを甘受 ....
パラシュートをテーブルに括りつけて
父が天国に行く練習をしている
深緑色のグレープフルーツを剥いたりして
僕は君ともう少し深刻な話をしたい
すべてがシンメトリーになれば
人 ....
「途上にある者」
われわれはあなたへ向かっている
神よ、あるいは名も無い者よ
あるいは不在の者よ
古代の人間が考えた神話の神々
もうお呼びじゃない
怒りの神、復讐の神、審判する ....
ねえ みんな聞いてよ
昨日も行ったんだけど
今日も行くの
大きな病院に
朝食抜きなのに
思わず食べそうになって
あわてたわ
とりあえず薬は飲まなくちゃ
メイクする気にもなれず
....
小さな水たまり
暗い冬空を映して
薄氷が張っている
メリ…メリ…メリ…
靴底で踏みつける
ヒビが広がる鈍い音
囚われた心と身体
メリ…メリ…メリ…
....
自分や自分の愛する人が
明日隕石に当たって命を落とすとは
恐らく誰も思わないだろう
だから
いつも通り私達は
目の前の人にお休みを言って
今日という日を
当たり前のように見送る
あ ....
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