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暗い夜の底から
柔膚を剥ぐように奪われた
土と草の匂いと、
家族の笑いを灯した明り
安穏な日々
を
揺さぶり壊して
一瞬が、
全てを奪った
星々をも掴 ....
公園のベンチに座っていた
そよ風が恋人のように寄り添っていた
古いノートの中で
ことばは悶えた
それとも窮屈な服を着せられて
詩がのたうち回っていたのか
その時ひとひらの蝶が
記憶に ....
坂を上りきったところには思い出が宿る。
僕は持ってきた手帳を開き、使い古した万年筆でそっと言葉を描く。
生命の継続。生命の継続。生命の継続。
三回繰り返すと不思議とその場所には新しい ....
服を脱ぎ捨てて、
皮膚を剥いで、
すべて剥ぎとる。
まだだ、
核心に触れるまでは遠すぎる。
いったいどこまで
いったいいつまで
続くのだろうか。
魂は太陽に比例 ....
皮を剥くことばかり求めて、
実の味を忘れた
林檎みたいな私の肌に、
あなたは歯をがりり立てました。
私はその痛みに歓喜し
ちいさな翼を羽ばたかせ
あなたの心のなかの
小さな ....
六月の雨が
育ち盛りのスイカをいたずらに誘う
でも、今年の梅雨は少々しつこくて
早くも冷夏の予感がした
ナスビもトウモロコシも痩せたまま太らない
繁茂するのはスイカのツルと葉っぱばかり
....
絵のない絵葉書が届く
ことばのない詩が書かれていた
ピアノソナタが雨に溶けて
コスモスはうつむき顔を覆う
山の精気が少しだけ薄められ
ものごとを前にしてふと
過去からの声に手を止めている
....
あんた証明したい
なんにも
嬉しいね卵持ってかえりなよ
釘打ってごらん釘
ぎったんばっこん傾いて
地球も発泡してら
ああ君ら目から艶墨ちろちろ流すが
猫がしどろもどろだね
あんた主張 ....
箪笥の奥深く秘められていたいくつかの小箱
おそらく母の物であろう歯の欠けた櫛に
出合ってわたしの心が波立つ
そして 夭折した兄たちの名に混じって
ボクの名が乾ききった小箱
それは ....
きみの取扱説明書をみつけた
ちょっと古びて
もう保証書もどこかへいってしまった
皮膚を剥いでゆくように
すこしずつものを整理してゆく
基本性能だけでいいのだ
死ぬまでにデフォルトの ....
ことばを吸い込むと、
身体中の血管が弾けて、
なみだになって流れていく。
そのなみだが、
地に落ちて、
灰色のキャンバスの上に落ちていく。
キャンバスの頬に
薄桃色の赤みが ....
今はもうないくだものを
ないお皿に山盛りに載せ
今はもうないお屋敷の
ないお客様に振る舞うため
両手に捧げ
運んでいく
彼女はもうない白いエプロンを着け
もうない芝生の上に
テーブ ....
痛い痛いと泣きながら
ひたすら和らげようと
体内に入り込んだ異物を
被膜で包みこむ
吐き出すことができないので
長い年月をかけて
耐えぬき
堪えぬいた苦痛を
結晶にする
海の底の ....
ある日
水槽の中で泳ぐ
熱帯魚が
テレビに映った
青い南の海をみた
こんな狭い
水槽の中では
すいすい泳げない
テレビに映った
広い海に憧れて
ここから
逃げ出そうと ....
おさなごには まず ハーモニカが あたえられる
くちびるにあたる真鍮のつめたさに
まぶたは すこし 重くなり
息を吹きかければ
こころは しだいに透けてくる
ひとつひとつの ....
光と樹木が交差する
あの夏の濃い陰りを抜けて
ヤンマゆくよ
感光した記憶の傷痕なぞり
迷える樹海の鬱蒼を越えて
ヤンマゆくよ
うすい双翅に光彩を弾き
風の流れを遡り
この目が耳 ....
貯金箱の底に
去年の赤い夏休みがある
使い切れずにとっておいて
よかった
私がいないなら、
あなたがいる。
あなたがいないから、
私がいる。
いつも時計のように
交わっては消えていった、
数秒の肌の記憶。
何度生まれ変わっても
告げられな ....
見開いた瞳が何もかも拒む時
舌が千々に裂け石となり果てる時
世界がおまえとおまえ以外に二分される時
おまえの奥深く
開く扉があり
時間の揺蕩う土地があり
虚ろな空があり 明けのような暮れの ....
ある時は弟になりました
川に流された弟の
お姉ちゃんとお父さんを励ましました
お母さんはいなかったので
お父さんは一人で子どもたちを育てました
お姉ちゃんはお嫁さんになって
....
私の父は18の時に航空兵に志願した
飛行機乗りになりたかったのだ
もちろんお国のために
命を捧げる意義を信じて
間に合っていればきっと特攻に行っただろう
出征するはずだった日の1週間 ....
夕方、
車中で左隣に座った老人に、
肩で殴られた。
私のなかで何かがメラッと揺れて、
痛い!
と両手一杯に 石をぶつけだが ....
お母さん、私ね、学校にin loveなboyが八匹もいるんだよ
金魚に餌をあげていたら
次女が後ろで不意に大きな声を出すものだから
目の前の水槽に
突然金魚が九匹飛び込んできて、
その ....
胸のファスナーを下して
白い綿毛に包まれた
幼い夢の息の根を止めて
そうして入り日の燃え落ちる
血だまりへ
交わることで違え
意味を失する言葉のように
縺れたまま ひとつの肉塊となり
....
剣のような針が
私の背中を追いかけてくる。
私は追いやられている。
70年前に首都や広島、
長崎をめちゃくちゃにした、
機銃掃射もこんな風に逃げ惑う人々を
追いやったに違い ....
台風ってだれの息
なぜみんな震わせてゆくの
台風ってだれの声
あんなに悲しそう
かたくしめたドアから
しのびよるささやき
心配なのはあなたのことと
おもいたいのはわたし
ベイビースター
ひとり部屋にうずくまって 灯りという灯りをすべて消すと
明るい世界に すっかり目が慣れていたせいで
その刹那 僕は自分の手のひらの位置すらすぐに見失った
僕はここに居ながら ....
雨なら外を見たくない
優しい人なら会いたくない
時に多すぎる感情を
いい香りの紅茶で飲み干して
心の中に吹く風は
ふうっと長い息にして吐く
なんでもない
なんでもないよ
....
二十代後半、夏の三千メートルの岩陵から墜ちた時のこと−
次から次に
岩にぶつかりながら
肉体の感覚は麻痺していく一方、
意識はより鮮明となっていく
宙を舞い墜ちながら次第、
次はあ ....
むかし、三年ほど住んでいた中都市を車でめぐる
広大な敷地にいくつもの工業団地が立ち並び
その周辺には刈り取られた田圃が季節を煽るように敷き詰められている
なつかしい名の鉄工所や、古いビルもまだあ ....
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