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夏にだけあらわれる
小径の奥に
ひっそりとした場所
そこにやわらかな墓標がひとつ
あたりを囲む緑のざわめきの中に
なぜかいつも感じる
揺籃の気配
その中には多分 壊れた玩具の ....
君が「孤独」と名づけた場所
そのさらに奥に
小さな部屋がある
くすんだ象牙色の壁紙
いくつかの黒ずんだ木の棚
そこには本 小函 硝子壜
円い置時計 何処かの土産といった風情の
人形や ....
翼が生えてきた 日に日に大きく育って
ゆく けれどそれは 誰にも見えない 私自らにも
見えない なぜならそれは 私の内側へと
生えていたから 見えはしないけれど ただ
たしかにそれは 翼である ....
夜がやってきて
水槽を満たす
僕らは語りあう
想い出を あるいは
それに似た何かを
僕が君が僕が忘れないように
君が僕が君が忘れないように
水槽の中
青や緑にゆれるもの
....
遊歩しよう
忘れられた花園を
青ざめた果樹園を
影色の桟橋を
空中に漂う墓標たちのあいだを
谺たちが棲む迷宮を
天使の翼のうえを
玩具箱の中を
空へと伸びつづける孤塔の尖端を
傷だら ....
雨に囲まれた待合室に坐っている
だいぶ長いこといる気もするし
そうでない気もする
入ってくる人もいる
出てゆく人もいる
以前もここで
待っていたことがあるような気もするし
ないような気も ....
その岸辺へとおりてゆくがいい
そこには優美な灰色の小舟と
一人の天使とが待つだろう
天使に導かれるまま
小舟に乗るがいい
舟底の{ルビ褥=しとね}に横たわるがいい
天使の接吻が
双つ ....
わたしはわたしの中に
夜を溜める
そしてその夜を醸してゆく
深くなるように
やわらかくなるように
わたしはわたしの身体に
花を鳥を
風を月を沁みこませる
わたしの中の夜が
やさし ....
博物館に愛の標本が並んでいる
眺めているとわかるのは
愛というものはおそろしく多様だったらしいということだ
まっすぐなのも歪んだのもある
美しいのも醜いのもある
透きとおったのも濁ったのもあ ....
幾何学模様の闇が重なる
夜の底に
ひそやかに灯る青白い共犯
夜が明けて
其処に残されているのは
誰にも読み解けない証拠だけ
誰もが息を呑む
美しい証拠だけ
夜の中心に置かれた
玻璃の器の中で
微光を放っているのは
誰にも問われることのなかった
ひとつの答えである
そらの珊瑚さんの塔野夏子さんおすすめリスト
(11)
タイトル
投稿者
カテゴリ
Point
日付
やわらかな墓標
-
塔野夏子
自由詩
11*
24-7-21
小さな部屋にて
-
塔野夏子
自由詩
11*
23-7-29
内_翼
-
塔野夏子
自由詩
10*
23-3-19
水_槽
-
塔野夏子
自由詩
4*
21-6-9
遊歩療法
-
塔野夏子
自由詩
10*
17-10-19
雨に囲まれた待合室
-
塔野夏子
自由詩
10*
17-6-25
眠りの天使
-
塔野夏子
自由詩
7+*
15-1-15
夜を溜める
-
塔野夏子
自由詩
18*
13-6-1
愛の標本
-
塔野夏子
自由詩
5*
13-1-27
名のない罪
-
塔野夏子
自由詩
5*
12-12-3
He_said
-
塔野夏子
自由詩
9*
12-10-9
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