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そらの匂いが
あじさいの花に
かぞえきれないかげを穿つとき、
虹の残り香が めをさます。
こどもじみた言いわけみたいに
するり、と
きえてしまった
あるはずだったものたち。
( ....
あなたはわたしのなかにいる
あなたの肌にはその日になると
青や緑の痣が浮かぶのだと
教えてくれた
うごかない左腕で
必死に笑ってた
じっと見つめるとちからのぬけた顔になった
それ ....
前略 いくちゃん お元気ですか?
さて、いくちゃん 突然のオープンメールでごめんないさい。
あなたは、いまでも私にとって秋田の素晴らしい女流詩人のひとりですが。メールアドレスなどをなくしてしまいま ....
中途採用の
面接試験に
落ちたから
厳正なる選考の結果
残念ながら、採用を
見送り
させていただくこととなりました
ご健勝をお祈り申し上げて
おりますと
受かったら
あ ....
つぼみふくらみ
匂わずに匂うよう
結びの前にほころんで
笑いも
泣きも
つかの間の
結びの前に散りはてる
燃えてあふれるその様を
いまは小さくしまったまま
....
錆ついて 細く小さく 縮こまった
わが古家を 見くだすような
裏の隣りは
新築された豪邸が
....
惑星をつなぐ鉄道の中継地
真空チューブが
弦のように延びている
定刻をすぎても宇宙嵐で
発車の目処はない
電気石で火をつけて
炭素を吸う
外壁で散るホログラムの桜
....
東京は聞いていたより桜がのこっていた
やはり赤茶けたものがだいぶんのぞいてはいたが
もう銀杏がつぶつぶの緑を枝にふやしていた
関西ではそれはまだだ
東京はこっちより二三日はやい ....
そして春が来て
今年も川辺の並木に
ホタルイカの花が咲いた
日中は褐色に湿り
夜になると仄かに光った
数日でホタルイカは散ってしまう
川に落ちたものは
海にたどり着き
地面 ....
飲み込んだ言葉が
胸にわだかまりの
どろりとした沼を作る
沼の中で
人に見捨てられ大きくなった亀が
悠々と泳いでいる
よく見ると
子どもを食ってふくれた金魚の尾が
ひらりひらり
....
父、母からの生に自立して
もう己自身がひとつの風土だ
と書いた北の国の詩人がいた
東京育ちのわたしにとって
風土とはどのような意味をもつのだろう
解体され ....
桜のように咲いて桜のように散った
そう言いたいのか
生きてさえいれば何度でも桜は咲くのに
敗けても焼けても国は残り桜は咲くのに
桜花よ
秘匿のために付けられたというその名
....
あなたの傘は
少し小さく
私は少し
はみ出してしまう
私は誰かの
傘を求める
心地よい
雨音を聞く
あなたの傘は
同じ角度で
いつでも
そこに咲いている
私は ....
私の決め手
それは
遺伝子を残したいと
思えるかどうか、かな
結婚を
うだうだ悩む後輩の
話を聞いた彼女の一言
そんなこと
考えたこともなかったな
なにしろ
愛読書が太宰治 ....
きのうつぼみだったあの子が
今日はもう咲いているね
満開になって
散ってゆくね
みおくるかなしさで
こわれてしまわないよう
みんなで別れをおしんでいる
はなやかなお葬式
淡いピ ....
大陸より大きな曇が
森のなかの
ただひとつ倒れた樹を見つめる
川に映る 自身を見つめる
横切る音が雨になり
小さなものを剥がす音が光になる
誰もいない国を過ぎる時
....
刎ねられた首の、落武者ヘアーの見慣れた顔がそこに在った。
所々に空いた障子の破れから庭の繁みを覗かせた薄暗い茅屋の畳のうえに
斑に変性菌類の付着した身体のない見慣れた鼠色の顔は飄々とした面持ちでご ....
詩よりも素敵な端正な言葉を
音律にのせて
たとえばジャニスは疎外をブルースにして
もうひとりのジャニスはこころの陰影をうたにする
ジムはロックの神になり
もうひとりのジムは瓶のなかの ....
ある冬の朝、飼っていた鸚哥が死んだ。
ちいさな黄色の、頬がほのかにあかい鸚哥。どのように出会ったのか思いだせない、な
ぜ、いつからここにいるのかさえわからない、物心ついたときには当たり ....
コーヒーをかき混ぜるとスプーンが何かに触れた
すくい上げると 懐かしい腕時計
そっと指でつまんで 見る――当然死んでいると思ったが
――蘇生するような
秒針の震え!
....
なだらかな丘を曲がり下る路のむこうは見えない
{引用=突き当たり 川沿いのT字路を左折する
右手には野菜や果物を売る民家が二つ三つ軒を連ね
白壁が所々すこし剥げたカフェらしき店が一軒あ ....
あなたは針で
わたしを刺していった
はたちきっかりでいったあなたの
のこしたことば
いくど読み返したことだろう
「あなたにわたしを息づかせるよ」
あなたを愛で殺してしまっただれか
....
桃をおろし金に擦りつけ
埃をかぶって臭うストローを水で洗った
プラコップの水面は穏やか
遠い南国の、夏の海の、奥の奥
レンジから元気のない食パンを取り出して
固いバターをスプーンで擦り落 ....
かじかんだ背骨に脂をめぐらせて
あなたは4℃の水底に憩う
ごちそうがなくなれば共食いもする
吹き寄せられた薄氷の庇
その下にもぐって ただ噛んでいる くつくつ
針を飲んでしまったよ
そ ....
三月の終わり静かに雪原を食むもの
山々はうたた寝
雲の枕に青い敷布
芽吹く前の樹木が苔のように覆っていた
――チャコールグレイに粉砂糖
それもあっという間に銀のしずく
いくつもの涙が一つの ....
残雪に
鴉
なにかを咥えて木の間に消え た
黒々と濡れた道の上
枯れ枝のような足を引きずる音がする
淡く暈した{ルビ空=から}の{ルビ天=そら}
惜しまず捨 ....
雪の冷たさの青の空
桜のつぼみに咲くなとわめいてる
私を殺していたあのころ
なんで
好きな人は働かなかった 家事もしなかった 絵だけ描いてた
絵は息をのむようなやさしさだったのに
....
復活した生命の息吹
秘密の花園で花を摘む乙女たち
老人は詩人を気取って歌を詠み
女は恋に焦がれて気がふれる
青に透ける瑞々しい世界
春とは若さの象徴だ
まるで天国の門前で
佇 ....
東の果てから顔を出す太陽があなたの眼の色と同じでよかった
まるくて熟れたあんずの実をとなりに並べたら、あなたとあたしは似たもの同士
果汁の一滴も、種まで残さず食べ尽くしてくれませんか
大丈夫です ....
いつも日没は反覆だった
ごみ箱に弁当の中身を捨てる
箱の中
散らばった白飯が造花のように咲き
今朝解凍された惣菜がぽろぽろと転がる
(それだけしかないから)
誰にも見つからない ....
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