すべてのおすすめ
黒いしるくはっとの彼は
遠い過去から訪れた
謎の旅人
呆けたように、宙を見る
彼の目線のその先は――
昔々のサーカス小屋
観客席を埋め尽くす
鰯の面した人々は
小さい口をぽかん ....
わたしは海の月
波間を漂うお月様の影です
仲間があなた達を刺すこともありますが
JAWSほどの脅威でもないので許してやってください
ときどきあなたがたの住む都市という
人工世界を ....
言葉のたりない夕ぐれは
悲しみばかりが増すようで
いのりが言葉にのらないんだ
あたらしい朝でも来れば
疲れはとれて涙はかわいて
たぶん大切なこと思い出すよ
駐輪 ....
あなたの腕と私の脚が
幾何学的に重なって
ミルフィーユ様態の発熱体となる
右腕の先から頭を伸ばせば
男の背中ごし 悠々と輝る月が見えた
まるでこの土から派生して生い茂った多肉植物のよう
....
青い血と、黒い血―白い血
すべてが、交ざりあって
赤い血
深い沼のよどみは
美しい湖よりも信じられる
汚れた水面のしたに
隠れたものの数 ....
藤は支えが欲しかった
己が生きて行くための
桜は藤を必要としなかった
だが支える力は持っていた
今では一本の木のように
鬱蒼と密にからみ合うが
異なる性を持つもの同士
時を違 ....
くたびれた我が身に
赤い旗がいくつも立つ
宣告は容赦なくて不要物に
なる日もとおくはない
息子達のために生きているつもりでも
やつらからはなんの音信もなくて
CSN&Y
ぼくたち ....
あなたは、ぼくじゃない
ぼくは、あなたじゃない
でも、わかりあえないわけじゃない
デスクに投げ出されたままのボールペンが
扇情的なひとことを書きたがってる
牛乳で流し込んだコーン・フレークの糖分が漂ってるあいだ
チェアーの背もたれに身体を預けて ....
先の大戦で
どんな人たちが
どんなふうに死んでいったのか
少し
思ってみるだけで
集団的自衛権を行使可能にすることに
賛成とは
私には言えなくなる
自国が攻撃されていなくても
....
右、右、右、もうちょっと左、
あふれだす切実
あのひかり
かなしみ
ほこりやにおい
おんなが語り出す
床の間の水仙までが冷たく見えたお正月
馬鹿もいたろう ....
人間といったところで
革袋に詰め込まれ
骨に抱えられた
一本の管
京都に丸善がまだあった頃
....
おとなになれなかったこどもは
おとなロボットに乗った
大きくて頑丈 パワーがあって
こどもには持てない武器をたくさん搭載していた
こうしておとなロボットは戦場へ出て行った
いったい誰がおとな ....
何年も前の事だけど
「紀伊国屋なう」というメールを
貴方がくれた
その時は
電車に6時間も揺られなければ
紀伊国屋のあるその街へ行けない土地に
住んでいたから
「今その町に私がいれば、
....
ガードレールの内側に
くくりつけられた花束
それに向って手を合わせる
初老の女性がいた
先日、その場所で
交通事故があったことを
私は知っている
バイクとワゴン車の衝突で
事故 ....
そうだったよね
くねっとすること
ぺとっとして もぞもぞして
変な感じがそのうち分からなくなる
それって変態じゃない?
とわたしが言うと
とてもすまなそうな顔をしながら
胸に ....
渋谷文化村ミュージアムをくだって
H&Mを左に見ながら
道玄坂下へ至るあたり
雑多な国籍の若者や
清掃するおじさんや僕のような納品車
いつものスリムな店長は
つけまばっちりのかわい ....
窓の傷がその数の分だけ
月日を遡らせる
傷の向こうの青空は
ヒトの体温に近い温度を
眼球に投影させようとする
手に触れる距離に 砂が
あるといい
砂の付着した手で
窓の傷をなぞる
....
冷たい石の陰に身をひそめる蜥蜴
葉の裏で翅を休めるクロアゲハのように
公園から木影のはみ出している場所へ
車をすっと 滑り込ませる
小柄な老女が日傘をさし
現場作業員の日焼けした顔の向こ ....
さかなの匂うまちから 黒い袋を抱えて
私は電車の座席にすわっている
黒い袋をおさえて
乗客の視線が私の膝の上に集まっている
おさえても おさえても 黒いゴミ袋が飛び跳ねるのだ
まだ生きている ....
君は猫舌だから
猫語しか話せない
だから大抵話が通じず
そのせいでこれまでも
ずいぶん痛い目にあってきた
けれどどうだろう
それでも頑として
猫語を話すことをやめなかったら
次第に話の ....
零をさがした朝に目が覚めると
太陽がたったひとり寂しそうで
誰もがこどくを噛みしめ針の痛さに怯える
ことばの痛みを恐れる
決して優しいことではないけれど
幼い頃何も知らずに踏みつ ....
いつの間にか
誰かに訴えたくなってる
自分は幸せだと
いつの間にか
誰かに言い訳したくなってる
自分は悪くないと
愚かなことだ
もしそれが本当なら
誰に伝える必要があるだ ....
僕にみずみずしいコップ一杯の朝をくれないか
活力に満ちた生みたての卵のような生命を
天のフックから吊るされたマリオネットのように
きょういちにちを微笑んで過ごしたいから
おはよう
僕のベットの隣に君がいる
肉と皮を蒸発させた君がいる
地上に置いていった骨だけの君がいる
ろうそくの炎が揺らめいている
数本の線香のか細い煙が揺らめいている
僕の ....
ちょっとした異性の情けに
心が前を向き
元気になって意気上がり
意気上がり
浮かれ心の有頂天
天に昇れば
あとは 落下
後ろを見ては 沈む心
取り巻く人の
心を上目遣いに覗き込み ....
パンツが脱げない
言葉からパンツが脱げない
たった一枚なのに
揺るがないものが揺らぐ
仕方のないこと
ありのままを見ているつもりで
水鏡に映った姿を見ているから
冷やかな風にさざなみ
優しい陽射しに微笑み
自らの夢を重ね映して
時を凍らせた写真 ....
なんてことない日常の中
雑踏の中で立ち止まり
ふいに海を見たいと思う
頭の片隅に描く海の底
一切の音がやむ
胸のどこかが きゅっと痛んだ
我にかえって
荷物を持ちかえ
また ....
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