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戦争を知らない世代の私にとって
原体験は高校1年の夏休み、先輩から渡された一冊の文庫本だった。
原民喜著「夏の花」
爆心地近くに居て奇跡的に生き延びた彼は
五感のすべてに焼き付いた惨状を克明に ....
人間は本能が壊れた生き物だから
自分で物語を作らないと誰も救済しないよ
淡々と生きることをくり返す
それで満足してちゃ面白くもなんともない
人間は物語を自分で造ってしか前に進めない
それ ....
空々漠々 とした
あおぞらも ちぎれるときは
わすれぐさのように 赤く鮮烈に土壌と宇宙との間で炸裂するのだ
きょうも嘘で すべてを汚染しつづけている人々の足元で 蟻は動く
死してもなお ....
乗り合わせた連中と
サイコロ振ったりカードを捲ったり
酔っぱらって歌ったり
ここで生まれた
もの心ついた頃には船の上
過去の航跡をぼんやり眺め
濃霧に満ちる行き先に目を凝らす
詳 ....
久しぶりに真夏に行った海
日焼けも化粧も忘れて
何もかもをさらけ出すように泳いだ
海育ちにとって
海自体が故郷だ
子供の頃から私を知り尽くす場所では
もう
名前すら必要ない
水にもぐれ ....
『ダイパー・ドライブやっています』
“おむつのドライブ?”
丁寧な発音
穏やかなトーンの声に
思わず立ち止まる
行きつけのスーパーの入り口
『新生児用のおむつが特に不足しています。 ....
『蝉大合唱』
夏空に響き渡る
蝉の大合唱
耳が汗かき
体感温度2℃上がる
『蝉爆弾』
マンションの外階段に
蝉が落ちていた
そっと跨いで通ろうとしたら
突然!
....
スパイスと宝石の匙で
耳を穿られる
《誰の膝が欲しい?――
頭の中から始まる旋回舞踏
透明な花びら 光彩のミスト
すぐに船内の浴槽が揺れるよう
隠れた海が押し寄せて捲れだし
突 ....
ぼくは雑巾になりたい
雑巾になって絞られたい
愛する妻の手で絞られたい
毎日毎日絞られたい
雑巾のぼくで愛する妻は
ぼくだと知らずに床を拭く
ぼくたちの日日の暮らしのために
毎日毎日 ....
気がつけば
三階席の片隅にいて
タリス・スコラーズのハーモニーに
君の耳は
空中浮遊する
悔い改めるでなく
道を求めるでもなく
真実に目覚めるはずもなく
美しさそのものとしての ....
たくさんの
本当、が
ながれていった
ぼくらは
橋のうえで
それを ながめていた
カナカナカナ
ひぐらしがないていた
家族や国を守るため
自ら志願し戦場へ行くと言うのなら
その人は行けば良い 後ろ指さされても
人殺しと罵られても
たとえ国家権力が徴兵しても
誰の血も流したくないと言うのなら
その人は拒 ....
わたしのなかの、
異質さをみつめる。
わたし自身が異質だから
何が異質なのかわからない。
硝子窓に石をぶつける。
窓に罅がはいる。
わたしのなかの
罅はなにか。
....
しがらみを肴に
また一杯
まったく酔わせてももらえないや
土色をした歳月の掌が
猫の舌のようにざらつく突起で
軟らかな思想を舐め取っていく
塩責めされた蛞蝓は
実はそっくり中身だけ
粘膜を抜け出し
逃げていた
{引用=「それは 思想 ....
いっちょまえに
子(娘)が親(母)に意見(もんく)をいう
いっちょまえに
子の方が稼ぎが多くなってきた――
一緒に道を歩いていたら
いきなり娘に腕を掴まれた
「なにするん?」
背後か ....
長い雨のレースを開けて
六月の陽射しが顏を出す
反射して散らばる子供たち
ビー玉みたいに素早く駆けて
ひとり離れて
シロツメクサを編む
首の細い少年
意識されることもなく
満ち ....
遺蹟
奈良の友人の結婚式に列席したついでに
飛鳥の遺跡を畏友のK士と巡る
石舞台
酒船石
猿石
高松塚古墳
でも駅前で立ち寄ったうどん屋の
出汁がしっかりきいて品よくかるく ....
ー「安全保障関連法案」衆院通過の日にー
医師は
腰の痛みを訴えるワタシの
積み木のような背骨のレントゲン写真見ながら言う
ここがずれていて傾く
それを正 ....
真夏の{ルビ陽炎=かげろう}揺れる
アスファルトの、先に
琥珀に輝く円い岩が
ひとつ、置かれている。
額の汗を拭って、歩く
旅人の姿は段々…近づき
数歩前で、立ち止まる。 ....
霧が湧き 雲は下り
天と地の息吹が交わり合う
噛み合わされた大地 喃語の潤い
ぱせり ぶろっこり やまのみどり
熊や鹿が嗅ぐ土の匂いが知らしめる
地脈の辿り 遠く 深く 息みて
....
こんなの詩じゃないと
お叱りを受けそうですが
まあ、いいだろう
と、寛大な心の方はご覧ください
*
小さい頃のわたしは
引っ込み思案で 恥ずかしがり屋
自分から友だちを ....
雨雲が宇宙を拭うと
夜は一層明るくなって
地上を照らす
俺には生憎
童話の様な
月や星まで届く手も
ブラシもないので
とりあえず
埃だらけの部屋の電球を磨く
少し明るくなった ....
産まれた国は戦争していた
父は軍人にしようと思ったかどうか
まるまるとした数え三歳のぼく
金モールの軍服姿
腰にサーベル 右手に千歳飴
ギラギラと輝いた眼が
見ていた未来は何色だった ....
夏はいつでもなつかしい
ここではないどこかに
いってしまった
ぼく
永遠の夏休み
こどものままで
ここではないどこかに
ずっといる
ぼく
さびしい遊びをしているようだ
家の ....
私は誰もが知っていることを知らない。
私は誰もが知らないことを知っている。
誰にもみえるものが
私には見えない。
誰にもみえないものが
私には見える。
あなたは今、
笑 ....
朝陽から刈り取って食卓に供えられた獅子の首
金色は瞬く間にとけて白い皿に蒼く翳りを残す
あるいは初めから造られなかったニケの頭部
永遠に像を持たない神聖 あらゆる問であり答え
あなたは ....
清らかな小川の流れに言葉は産まれ消えてゆく。
願いは祈りになりあの山の向こうへ放たれる。
初夏の訪れと共にやってくる想像を
使い古した手帳に書き留める。
白樺の林の中で虫たち ....
つばめはどうして
にんげんのうちなんかに巣をつくるのだろう
だれも住んでいない家にはつくらないんだってよ
わたしはひとりがすきだけど
つばめがいるからひとりじゃない
えさをはこん ....
「世界中が雨だね」って
きみが言うから
手相占いみたいに
てのひらを差し出して
白いサンダルを気にして
ひとつの傘でふたりで濡れながら
「世界中が雨だね」って
きみが言うから
....
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