黒幕
ただのみきや

強盗が脅迫と力で奪いとった「それ」を
詐欺師は嘘と手管でまんまと横取りした
だが翌朝には消えている泥棒に入られて
泥棒は「それ」を盗品ブローカーの処へ持って行くが 
二束三文の代物だと言うブローカーもまた詐欺師だ
ボロ儲けした詐欺師のもとへ包丁を持った別の強盗が来る
強盗は奪った「それ」を抱え一目散で家の金庫へ
次の日金庫は空っぽ凄腕の泥棒の仕業だ
こんなことが繰り返されて一向に「それ」は戻らない
「それ」に真の価値があるかどうかは怪しいが
「それ」は悪い奴らに人気があるようだ
「それ」は奴らに運ばれて三千世界を巡っている
「それ」が何であるか どんな姿なのか
「それ」は書き終えるまでは未定の最後の一行
「それ」はもともと一人の詩人のものだが彼こそ
悪い奴らを影で操る黒幕だ



                 《黒幕:2015年10月11日》







自由詩 黒幕 Copyright ただのみきや 2015-10-14 19:01:49
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