狂った時計
レタス


洋紅色の巨大な貨物船は
少年たちの掌から分泌される
蜘蛛の糸を張りめぐらせられ
少しづつ浜辺へと曳かれていた

隆々とした筋肉質な船員達はビールを酌み交わし
吠えたり
笑ったり
歌ったり

遠くで
はしゃいでいる少年たちを歓迎するかのように
船員達はたまに頬笑んでいた

少年たちの目論見など毛先ほども気にしていない

巨大な船体は一時間に1㎜の速度で引きずられてゆく
少年たちには時間が数千年も余っていて

船員達は明日を知ることも無かった

少年と船員の時計は全く違う世界で造られた物で
ゼリーと鋼のような歯車を知る者などなく
船員達は酒に酔い
少年たちは糸を引き続けていた

やがて
巨大な船は浜辺に打ち揚げられ
洋紅色の貨物船と船員達は
少年たちの手によって解体された


自由詩 狂った時計 Copyright レタス 2015-10-14 20:13:10
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