淡雪は炎のように降りつもりきみの素肌の灼熱を知る
凍蝶の滑り落ちゆく黒髪にかかる吐息は結晶化して
性愛の天を凌いで伸びる蔓 凌霄花は空にまみれ ....
ぼくはまだいちご泥棒と眠りたい置き忘れたものばかりの園で
衝動を積み上げていく指先に梶井のレモンわたしのオレンジ
気だるさはインクに滲み水底の青い散文髪に絡まる
....
*一時限目 数学*
美しき微分/麗しき積分/淫らな糖分=知性の所望するもの<睡蓮たちの睡魔
無限の輪っか((エタニティー=ハニーディップ×2))
を、黒板の隅に小さく描く
カリカリカ ....
隣のビルに向かって叫ぶ
レモン!
酸味を含んだ飛沫が
届くといいと思って
レモン!
屋上で
柵に手をかけて
レモン!
箱詰めにしたレモンを
宅急便で送ってお ....
たんぽぽの綿毛とんでゆく
私がふーっと吹いたから
可愛い茎を
一番上の引き出しに入れて
鍵をかけるんだ
それでも
引越しのときに
机は置いてきた
砂だらけの空き家に
春はきら ....
冷たいゆびで
摘まんだ雪は
わずかにかなしい方へと傾斜し
山裾の町は
湖の名前で呼ぶと
青い空の下で黙って
わたしの声を聞いている
凍った坂の途中から
見渡すと
連なる峰の稜 ....
夏の縁側に腰かけて
入道雲が真っ青な空に湧き上がるのを
見ている
背後の部屋は暗くて
ひんやりとしていて
もらい物の生菓子を食べようと
手を伸ばした瞬間
チリリ
(一陣 ....
軽い足取り
幼い照り返し
蹴飛ばしながら
進む
シャツの袖まくり
緑のさざなみ
産毛を立てながら
泳ぐ
弾む呼吸
迷走神経の舗道
気取りながら
急ぐ
....
青空
もういいかい
まあだだよ
雲さん かくれんぼ
鬼さん こちら
とう かぞえるよ
お日さま ひとりぼっち
あか鬼さん
夕がた 来たら
たき火もするよ
....
朝、目が覚めたら
右の手のひらがチクンとした
キップだった
日付はちょうど1年前の今日
行き先は書いていなかった
チクン
今度は胸が痛かった
その日付を忘れるはずがない
忘れら ....
すべてはこのバスの中で完結している
ふとそんな言葉が頭を横切る
雨はもうじきあがるだろう
そうして所在無さげに
手すりの傘だけが残るのだろう
老人は窓と小説を交互に眺める
後ろのどこか ....
ゆびさきで
おそるおそるふれた
ぎんいろのフルートにうつる
じぶんがはずかしくて
おと
おとをかなでるなんて
ぼくにはできないだろうとおもった
くちびるをあてても
....
小さく咳をして
教室に吸い込まれる
革靴だけが吸い込まれずに
僕のいない廊下に取り残される
「大学の勉強などいったい何になるか」
これは本質的な問いなので歓迎されない
チョークで汚れた ....
太陽という名を持つその花は
光の輪郭を持っていて
「笑って」
と、ほほえみかけてくるのです
大切なものを失って
すべてを噛み殺して
悲しみよりも深くたたずむその人の
かすかな ....
筆先に
少しついた水を
ふりはらえば
雨もあがった
かならずそこに
たどりつける
ゆびがいたくても
ほほがしくしくしても
なんて濁った川
を体は流れている
発信しつづけ ....
愛という字を
上手に書けないまま
この年齢になってしまった
心が大きくはみ出したり
小さく遠慮して
収まってしまったり
愛という字は難しい
昨日久しぶりに電話し ....
九十まで生きたいとか言っていた姉が
今は七十でいいみたいだ
介護を受けれるか受けれないか
ボーダーラインの老人たちの調査をするのが姉の仕事だ
老人は環境をかえるとすぐにボケてしまうらしい
だ ....
片付けすら
進んでいない最後の夜
チキンラーメン
食い尽くし
財布の中身
使い果たし
片付けすら
進んでいない最後の夜
最後の孤独を思い返す
雨が降って
外にも出れず
盗まれ ....
人生の軽さを言いながら人生の重みを感じさ
せる。
そんな境地に僕もいつか辿り着けるの
だろうか。
ノイズとスクラッチとギターとピ
アノと正弦波とドラムとベースとライムのよ
....
ひざ小僧
どこの小僧か知らないけれど
みんなが知ってるひざ小僧
スカートの下でかくれんぼしてる
いやらしいなぁ
だけどね
転んだときに一番傷つく
ひざ小僧
私を助けてくれるから
....
見分けのつかない昨日と今日の間に
安物の叫びをはさんで
思いっきり口に押し込むのが
朝の儀式
律義なレタスと陽気なマスタードの間に
上品に叫びをはさんで
耳まで残さずに食べるのが
....
上澄みをそっとすくう
余分なものはなく
柔らかくしなやかで
手のひらからさらさらとこぼれる
太陽の光で酸素を作り
葉は濃緑を強める
表面の細い産毛には
小さな雫が張り付いている
....
猫がのびをするように
舌を出して
髪を風に翳して
眠るうちに
世界の大半が嘘に染まって
太陽さえもイミテーションになってしまう
午後に於ける
2時00分と云うものは
ひときわ ....
小さな巻貝の奥に
灯りがともる
小さな海の人が
書き物をしている
波から聞いた話を
青いインクでしたためる
書き終えると
小さくてごく薄い紙片を
丁寧にたたみ
小さな封筒に入れて
....
風の中のミィ
押し潰されそうな
小さな体を
必死に支える
可憐な笑顔
憶えているかな
丸く小さな影
ただ泣いていた
小学校の下駄箱を
風の中のミィ
一瞬でアイド ....
生きることは
漂流することだ
海路は
はっきりと見えるものではなくて
だから時々迷ってしまったり
沈んでしまいそうになる
大波にさらわれたら
口からぷくぷくと細かな泡を吐き出し
....
鉄棒に細い両腕とあごを重ねて
校庭の向こう岸に
風が波になって集まるのを
見ていた
帰り道の友達は
黒い袖をはためかせ
くるくると帽子を回しながら
林の陰へ消えていった
頼りな ....
090504
なつはきぬ
木綿では叱られます
正確には
木綿では嫌われます
そんなこと言って笑わせる人が居て
昔芸者だったとか
おめかけさん ....
私の小鳥が死んだ
何度か獣医さんに診てもらったりしたけど
これが胸騒ぎなのだろうか
部屋の錠を開けるのももどかしく逆光に沈む鳥かごへ駆け寄れば
初夏の陽射しのなかで彼は小さな亡骸と化していた
....
金色をつかもうとして
手足をばたつかせていたら
きみはぽつり
ゆきがふってるよ、
と言った
確かに頬には雫があって
ほてった身体を冷やしていく
雪が降っているのは恐らく
ずっと奥の ....
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