風の谷に住む
男の子
金色の髪を靡かせて
裸で馬に跨がって
誇らしげに
手を上げる
ぷうちん
ぷうちん
お顔のシワは
伸ばせても
心のシワは伸ばせない
ぷうちん
ぷうちん
一 ....
哀しく透明な孤独が
身を捩るようにして
この荒野に佇む
彼は永遠に無縁だろう
この世界という謎に包まれ
ひたすら無縁だろう
やがて
青く輝く巨大なこの星が
漆黒の宇宙に呑まれるとき ....
花は
花としての言葉を失い
季節もまた色を失う
渡し損ねた言葉があるように
雨もまた
流れてゆくのだろう
春の窓辺を飾るもの
無言の結露
人見知りの鳥たち
か細い茎の名前の知らな ....
あたたかな
日の光が降り注ぐ
静謐な午後
夢の感触を追いながら
夢の輪郭を確かめながら
眩しく輝く光源に従い
浅い夢見に入っていく
遠い日々、震える記憶
ひとり見つめる
疼く胸の ....
9カ月になった君は人間の芽である。これまで可能性としての種であった君は複雑に発達することによりついに芽として外界の光を吸収し始めた。君の眼はもっとも愛しい人ともっとも恐ろしい人を瞬時に見分ける。君の手 ....
乾いた
水の匂い
漂う
この夜陰
窓辺に寄れば
雨は
降っていた
孤独を透明に濡らし
雨
季節は一巡りし
春
私は感じる、
春の雨
遥かな
空の高みを
ひかりの ....
肩甲骨
と彼は呟いたが
そこから話はどこへも進まず
木管の音が間抜けに溢れる
さっき沸かした湯が
冷めていく
嗚呼、
髭。
1950年ごろ x線フィルムを利用して
東欧の街中では 海賊版レコードが
出回っていたらしい
「淡谷のり子」のもあったという
山育ちなので 傷は自分で嘗めて治した
月がしだいに瘦せ細り また少しずつ太るのを
薄目を開けて時々見ながら
朽ちた倒木の根元の洞に潜り込み
飲まず食わずで幾晩も
痛みは知りません 傷つい ....
この優しい
光の午後
すべては許され
ひのひかりに弾けて
緩やかな斜面を
ゆっくり転がっていく
孤独を受け容れ
決して消えない罪を受け止め
独りの魂が
身軽になり
柔かな陽射 ....
好きな人に
逢いたくなる
星はいつだって
幻想的な夜を
私にくれる
薄日の街道を歩いて行く
太陽は見えない
ずっとずっと歩いて行く
薄日の白んだ街道を
堆積した時がまた一時解き放たれる
鳴り響くサイレンのなかで
哀しく蒼白に
踊る子どもたちは
ガラ ....
そしてヒトは何万年もの間争いをしている。
そして
銀河の岸では鬼たちが歌を歌っている。
そして
星々の亡骸に
花を供えて
ひとつひとつの星に
黙礼をしていく鬼たち
そして
失われた
....
二〇一九年八月一日 「人生は物語って、よく言うけど」
物語を白紙にしていく作業が
ほんとうの人生なのかも
って思った。
さっき、マイミクのコメントを読んで
ふと、そう思った。 ....
いろんなニュースを聞く
いろんな中継映像を見る
忘れてはいけないことや
今すぐ自分の心に問いかけなければいけないこと
がある
そのために歩きださなければいけないこと
がある
そんな日 ....
澄んで淡くやさしい光に照らされた
円いちゃぶ台の上にノートを広げ
パイロット社製の「ドクターグリップ」シャーペンで
詩を書いている。
詩を書いているといっても
これが詩なのかどうか
作者が ....
気がつけば、
懐かしい歌が僕のなかに流れていた。
昔、よく聴いていたんだった、
J-Pop なんて生まれていない、時代の頃。
一つの恋が終わり、
その残り香にさよならを告げる ....
夕べの夢に旅立つとき
私たちが寝床に置き忘れたもの
微かな哀しみと柔かな吐息と
それから
それは長い道のりでした
今振りかえりみれば
沢山の思い遣りと共感と
それから
....
この手で
さまざまな善いこともしてきたししている
この手で
いろいろな悪いこともしてきたししている
この手は
何をしたいのだろう
パンチ?それとも握手
私はこの手と共に生きてきたし生 ....
日ののぼる前の空には雲黒く飛んでちぎれる約束は今
{引用=角川『短歌』2022年 3月号分「角川歌壇」にて
福島泰樹先生選 谷岡亜紀先生選 佳作
水原紫苑先生選 秀逸}
神の彩色を手真似て画書く
老いたのかどうでもよい気持ちが勝る
反省して坐する
くすり四錠呑んで炬燵にもぐりこむ
日記帳から一日をはじめます
熱したミルクを口にして
チョコレートをひとかけ
ミルクはチョコになっている
チョコはミルクになっている
君たちはマシになっている
君たちは外に広がる
これまでにあった よかった ....
「泣いてるの?」
「うん泣けるほど美味しいんだよコレ
絶対に飲むって“覚悟”して来たんだから」
「大袈裟だなぁスイーツ女子は」
彼とは社内恋愛で
私から恋を告げた
いつか散らねば ....
ねこが
しみこんでいる路地
空がきれいだ
電線が微かにたわんで
ビルのむこうまでみえる
わたしたちが死んでいくのがみえる
会いたい人とか
まずいない
そんな僕に
会いたいと言う
君の気持ちは
どんなにか
ねっとりと
魅力的に
映っているのか
知るすべもない
僕はといえば
僕には毎日
会って ....
朝カーテンを開くと
庭が白く化粧していた
年に数回の雪も
大人になれば心躍ることもない
道を歩けば
広がる雪雲は
遠方では地に届いていると
信じられるほどに
低く伸びている
モノトー ....
僕たちはそれぞれ違う重さを抱えて同じ言葉を求めて
普遍は真理とはイコールではないにしても難儀な旅をするのだろう
愛したものの破片を集めてはならないのだと想う
戻らないものの再生には魔術が必要 ....
朝、起きる前の布団の足下に
ダウン症児の息子が入ってきて
妻がぱちりと、写真をとる
頭上の壁には
ミレーの「晩鐘」
(一日の労働を終えた夫婦の祈り)
窓から朝日をそそがれて
....
かつて、見たことのないような夕暮れに
わたしたちは影の、点描画にされてゆく
その横を、すり抜けるものがある
宴の、終焉を迎えようとしている
冷めきった夫婦間を
取り繕うように動くものが、 ....
灰色の空から
雪が降ってくる
雪に混ざって
はるか上空から
白い羽が一枚
音もなく
落ちてきては
動かなくなった
猫の上に
とどまった
それを目撃したおれは胸の前で
....
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