愛し合うことで
この世界を美しく{ルビ汚=けが}そう
互いの内なる罪の昏さに
惹かれ合った二人だから
二人がいろいろなかたちで
抱き合うそのたびごとに
幾重にも罪は深く響き合う
二人 ....
1
必要と頷いても
近くにあっては困るらしい
それは遠くにあって
必要なときにだけお世話になる
ありがとうございました
添えたお礼と深く折り曲げた腰を上げてしまえば
あと ....
意味もなく
きみの匂いを嗅いでいる
そこには
しあわせだとかふしあわせだとか
そういう類のものは
感じられない
春先のつめたい空気の中
アイスをほおばる
その口元
きすをするのに ....
ふっくらと 光線を 中に吸い取りながら
梅が ごつごつとした 枝先に 咲いた
厳しく けなげな そのさまに なぜか
ある夏に訪れた 遠い島のことを思った
出雲の孤島の海岸には無数 ....
金持ちも
貧乏人も
健康な人も
病んでいる人も
希望に燃えている人も
絶望の淵に座り込んでいる人も
お気楽な人も
深刻な人も
白い人も
黒い人も
満たされた人も
飢えた人も
か ....
数多くの死体が目の前に散らばっていた
私は 風景を見つめていた
それは 何のためだろう
誰のためだろう
わからないけれど 街は どこにも 見えない
夜の闇の中を走っていくトラックドライバ ....
“恋心なんて、とうに忘れた”
なんて
強がらないでください
恋って
いいものですよ
人を好きになる
それは
自分を好きになることに繋がっていくから
忘れないでくださ ....
浅い日だまりが
いってん はぐれて
そこだけが
闇のようになった
おいつけないままで
見つめている
春の日の
少年のような
{画像=120318231559.jpg}
人は87年間考えて、
考えて考えて、
考えて生きていくと、
いったい何に成るのだろう。
心に硬い硬い殻を纏った
岩石にでもなるのだろ ....
春の採点
平日
ちっとも忙しくない日
じっと座っていると
時が頭上を通り越して行く
一世紀ぐらいのストライドじゃないかと
それほど風圧を受ける
目の前の原で四歳の私が
一心不乱に ....
今年もこの日がやってきた
例年と同じ農園のビニールハウス前に
イチゴ狩りに魅せられた老若男女二十数名
斜に構えたり 無言を装ったり
だが皆が高揚を隠し切れずにいるのだ
農園の主人は愛想笑 ....
山を歩いていると
深い緑に浸り
濃密な孤独感と解放感を
吸い込み吐き出す
誰もいない山道に
誰かの視線があるかと思うと
綺麗な赤いまえかけをした
苔だらけのお地蔵さんが
ところどこ ....
森林公園のなかに
それはそれは
長いすべりだいがあった
ゆるい
傾斜のそれは
すべると
ローラーが
カラカラと音をたてて
人をすべらせていく
ゆっくりと
ゆっくりと
....
震災から1年の3・11に復興を願い
仙台で行われた朗読会の前
主宰者の南ダイケンさんは
「これ、心ばかりですが・・・」と言い
直筆で「謝礼」と書いた
白い封筒を、僕に手渡した。
....
冷蔵庫の中に
悲しい思い出をしまう
それを新鮮なまま
また手に取って 眺めるために
指先で掬って 口に運ぶために
人の経験の総ては
無意識の内に求めたものだと
語る言葉があった
恐 ....
昨年わたしが二十年ぶりに、故郷の秋田に帰ってきて感じた印象は、飲食店の接客も、人々の仕事への接し方も、いい意味で「いい加減」なのである。ちゃんと暮らしを成り立たせるための時間を守りながら働 ....
{画像=120317205808.jpg}
野に集えよ
きんぽうげ
小さき
いつつの
花弁ゆらし
....
バルセロナで象を拾う
春が来ると
いつも何かを諦める
諦めたくない何かのために
火薬庫の前で
遅いランチをとった
水道を行く黒船を見て
覚えたてのように笑う
かしこい子はすばらしいと
うたうおとなたちの心理を
わたしはすりつぶして粉に
したところにたまごを入れ
ホットケーキを作りました。
とても、あまそうな山です
つぶしてみたってなにも、
仕 ....
雑種の黒い犬を飼っていた
足と耳のさきっぽが白い犬
散歩もご飯の世話もブラッシングもわたしがしてた
学校から帰ると
尻尾をふってぴょんぴょん飛びついてきて
ハッハ言いながらどこまでもつい ....
静けさが残り
(何故か見上げれば
見下ろしている)
さまよいながら求めるもの
宇宙を識るのとおなじくらい 「
人間を知るのはむずかしい 」
(意味に手をあわせ
ただ) ....
登校中の女の子と男の子が
道路を横切ろうとしている
飛び出しに供えて ブレーキに足をかける
春の陽射しの中 防寒着の子達は
車道の前に立ち止まり
急に 女の子がしゃがみこんだ
その手に ....
空の蒼い日
乾いた独房に
ひとふさの春が投げこまれる
赤錆びた格子窓の向うから
透明な一枚の手によって
そこには誰も居ないので
やがて、壁の ....
びいどろの中に
浮かぶ泡
気泡があるのは
不良品なのか
値下げの札がつけてあった
かなしい音が
とこしえに
びいどろに
刻まれた
唐草文様
ふるさとの野辺に咲く
名も ....
僕は病んでる自分を疎ましく思ったり
でもいとおしくもある
診察券にはだいぶ慣れてきたし
人間て病んでて当たり前なのかも知れない
検査着に着替えて腹部CTをとる
さ ....
あのときの週刊プロレス巻頭でまだ死に至る三沢光晴
野次られて吼える手癖の悪い犬牙は剥けども庭からは出ず
自販機の前で二択を迫られて買わぬが増えた職の無い春
外壁のトタンを鳴らす夜中の ....
空港が近い
日本の街がそこにある
繊細だ
愛しい
地震に身をふるわせ
原発に傷ついている
人口は減り
高齢者だけが増え
円高に蹂躙される
このなかで生きてゆく
壊されない
ちいさ ....
あ という間に時だけが経ってゆく
から、寝て起きるのに
生きるのが 駆けてゆく
思うことはたくさんあるのに
からだは痣跡だけをのこし
かさぶたあとはなかなか消え ず
甘ったるくし ....
朝の微睡みの中
腹に行儀良く座っている黒猫
薄く開けた眼の先には
彼女の瞳がある
夢と現うつつを行き来するうち
そのまま抜け出した僕の意識は
彼女の瞳の中に落下する
{画像=120316123953.png}
月の光が燦ざめく
まだ春浅き夜更けのこと
女が独りで死にました
誰にもみとられず
たった独りで息絶えて
時計の針は零時で止まったままに
....
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