シャボン玉
悲しい歌とお母さんが教えてくれた
風々吹くな壊れるな
虹色に揺れながら
くるりと回って
弾けて消えた
洗濯のりを入れると壊れないよと
お父さんが教えてくれた
だからね
....
岬の白い道を歩いてゆく
突端をめざして一歩一歩
五月の空は
高らかに晴れわたっている
風が吹く
記憶が吹く
波が聴こえる
記憶が聴こえる
岬は細く長く
なかなか突端にはたどり ....
夜明け
窓から冷たい空気を
迎え入れたとき
君に恋していたことに気づく
吐く息が白く
一瞬雲になり消えていく
君のいない空の向こうに
なぜ
夏でなくて
この冬の季節に
....
叶わなかったものを
あした、と呼ぶことにした
ガラガラで出てきた白い玉
おじさんが残念でしたとティッシュをくれた
列から離れるとラッパの音が揚々と響く
真っ赤な自転車を当てた女の子は
....
もし私の子供が象だったら
鼻が長かっただろう
耳も大きかっただろう
バスにも列車にも乗れないから
歩いて港まで行き
遠くアフリカまで船で渡っただろう
サバンナに沈む夕日をいっしょに眺 ....
昔 大きな戦いがあり
そのせいで手首の骨が曲がったままついている
と祖父が言う
痛かった?
そりゃ痛いよ
(おじいちゃん人を殺したの?)
とは聞けない
昔 大きな戦いがあり
みな人を殺 ....
君は頭のごくわずかなすきまに
生温かいミルクを注ぎ込んで
僕を騙そうとする
不安な宇宙を満たすそれが
なんなのか分かったとき
君はもういなかった
君は誰?
過去進行に思いをめぐら ....
野良猫を叱るために
名前をつけた
せっかく咲いた花の匂いを
ふるびたさかなの骨で
台無しにしたからね
眠れるはずの夜は
色が薄くて
もう愛想が尽きた
昨日歩いた川べりで
....
電車はもう乗り終えた
飴の袋もからっぽ
歩き出す
足元の道はごつごつしている
日の光は花や木にばかり当たっている
ような気がする
水が飲みたい
と思った矢先に
湧き水の立て札
山深く ....
ふせた長い睫毛が
まっすぐにこっちを向いて
貫かれるんじゃないかと
どきどきした
ばかみたいだけど
向き合ってね
一定の距離を
大切にしていると
もうこんなに
こんなにせつない
....
090501
回転木馬を回す
裏側では
大変なことが起きているのも知らずに
木馬から落馬して
笑われたりしている子らの歓声
ねじが外れた
早く停止しない ....
090430
ギョッとして振り返ると
魚の目をした人たちが
疲れた顔をして
ロムを焼いたり
ICを差し込んだり
コネクターを差したり
抜 ....
落ちた数を数えるよりも
水滴の生まれた場所が知りたかった
ささやき声も空気を振動させるような
ぎりぎり均衡を保っているこの小さな空間で
破裂する寸前の風船みたいな緊張感の中
今、きみが生 ....
眩しいと思って見上げると
それぞれの吐き出す息が
ただよっているのだった。
たまったものを
ためられたものを
いっせいに解き放ちながら歩いている、と
どれが誰の息であったのか
わからなく ....
どこから始めようかと
腰に手を当てて考える
片付かない過去と
まだ空っぽの未来
どうにでもなる
なんとでもなる
自分のことは自分で決める
汚れた顔を拭いながらでも
例えば犬や猫みたいに
せめて小さい頃の姿が
あいくるしいものだったら
愛することを知れたのに
愛されることを知れたのに
子供のころから
ずうっと考えていたこと
あたし本当は
毒なん ....
駅から我が家への道の半ば
江戸時代に開基された由緒ある寺で
お通夜が営まれている
普段は併設された幼稚園の園児が
遊んだり運動したりしている地蔵堂に
祭壇が設えてあって
地域の生活 ....
ねむたくて
ぼんやりしてると
人の話聞いてるの
と雌ライオンの
妻が言うので
雄ライオンの僕は
目の前を通り過ぎていく
バスを見送って
聞いてるよと
ラ ....
そのひとが指した
暗闇に
また星座ができる
夜空の不確かさに
うなずきながら
長い髪が揺れると
それは五等星ぐらい
小さく笑うと
三等星ぐらい
月影を手に入れるために
なにもか ....
わたしの、やわらかいところは
羊水のような液体のなかで、うかんでいる
わたしの、やわらかいところは
いつもたくさんのことで、満たされていて
それをとどめておくことに疲れると、忘れてしまう
....
いつだって瞬間を見ることが出来ない
気付いたらつんと澄まして
そ知らぬ顔で頭上を照らす
なめらかな曲線で出来た満月
夜にいるにはあでやか過ぎる
汚れることを恐れていないような
きっぱり ....
090429
バナナの実をもいで
大人たちが笑う
バナナは
食べられても
痛くない振りをしている
南国の
強烈な太陽で
鍛えられているのだ
....
{引用=
(海、について
わたしが書こうとすると決まって
おとうさん、おかあさん、砂、星、アーシュリー、を書くことになる。)}
アーシュリー、
わたしがにぎる手綱からするりとぬけだし、
....
花がいままさに
ひらかれようとしていて
うたが人知れず
うたわれていても
読みかけの本の
頁がひらかれて
そのつづきが
つづかれてある言葉が
読まれようとしていても
なおもひ ....
気付いていなかった
守られていること
包まれていること
てのひらにいること
振動を感じて見上げると
電線で翼を動かす雀
池の鯉は大きく跳ねて
しぶきをきらきらと飛ばす
特別 ....
丘陵にひかる
白い壁とガラスの
その中に彼女はいて
いつもの声色で
「やあ」とほほえむ
黒い髪に白いバラ
ブーケにはビバーナムという
時の花
“ 私に娘が生まれたら
このドレスを ....
あなたが昼寝をしてしまって
その横で
すこし
泣いてしまったことは
内緒です
夢の中へ行くあなたに
「行ってらっしゃい」を
言えるようになるまで
置いてけぼりにされたような
....
サーカスのピエロが
玉乗りをしているような
安定しない足元を懸命に
バランスを取りながら問う
上手く乗れていますか
泣きそうな顔で
周りを見渡すと
拍手が返ってくるから
....
{引用=嬰子の褥
闇のひとつ奥に蠢動する白光体がたしかにあった
血に焼かれた嬰子が視えない手のひらに止まって
私の身体に続いている
いやへその緒はぜんまい状に闇に溶けて
それはもうわ ....
焼けこげてしまいそうな 夏
小さい背中で
我慢を覚えた
春のうららかだったことも忘れて
はだしの17センチに
世のなかは わからない
雲に乗れることさえ 疑わない
小さい背中 ....
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