「孤鳥」
規則正しい通りの両側には、規則正しく家々が立ち並ぶ、それぞれの窓は開け放たれており、バルコニーには規則正しくbirdが並んでいる、birdは均等に朝を迎える、birdはお互いを決し ....
「ございます。しかし、魔法弾を浪費することは避けたほうが良いでしょう」
「ならば……」と、エイミノアはひときわ大きなグルレッケに向かって、剣を構える。
「お前がグルレッケの{ルビ頭=かしら}か。い ....
グルレッケたちは獰猛だった。ヨランとエイミノアを食餌にしようと、
襲い掛かってくる。ここは荒野、誰に助けを求めるべくもない。
エイミノアが一頭のグルレッケに向かって斬りかかる。
しかし、群れの長 ....
ヨランが魔法弾を投じる。空が割れて、幾条かの雷が閃いた。
そして、グルレッケ数頭に向かって放たれる。
「ギャッ」という声を上げて、それらグルレッケたちは倒れた。
エイミノアは唖然とする。
....
ヨランの落ち着き払った様子に、エイミノアは苛立った。
自分にしろ、数々の戦いを経験してきている。
それなのに、このヨランの冷静さと来たらどうだ。
まるで、怖い物を目にしても物怖じしない赤子のよう ....
「rain」
雨、という現象が
印象派の庭です
水の詩集をさらさらとめくる雨音が
萌芽の眠りを妨げて
やわらかく湾曲してゆく
午後からのカーブを描いてゆきます
「あの人は、光 ....
ごめんよみんな
ありがとうみんな
どの道私も
そっちへ行くよ
それまで生きるよ
私は
バカを通り越して
パカになって
しまった
小鬼の私が泣いている
笑って ....
「奴の自負などどうでも良い」と、エイミノアは思っていた。
「奴は、ただ逃げようとしているだけではないか?」と、
ヨランからは離れたところに寝所をしつらえながら、エイミノアは思う。
「盗賊の考えな ....
ヨランは苦笑した。彼にはエイミノアには見えていないものが、
見えていたのである。それは盗賊としての本能のようなものだった。
「わたしがどこを目指しているのか、お分かりですか?」
と、ヨランはエイ ....
二〇二〇年十二月一日 「年間SF傑作選7」
きょうから、寝るまえの読書は、『年間SF傑作選7』の再読である。これは4作ほど憶えていた。バラード、ラファティ、ボブ・ショウ、バロウズの作品だっ ....
それから
100年も過ぎたような笑顔を見せた君は
振り返らなかった
ぼくたちの間には、鉄橋が
背の高い、ぼくの背よりも
ずっと、ずっと高い所にあって
ぼくたちの距離感をもってしても
届か ....
石をつつむ
壁をつたう
伸びていく
一本の蔓は
しなやかに
陽のなかを
炎と雨と風
受け止める
一粒の豆の
一つの芽が
時の ....
季節は夏から秋へと移り変わろうとしていた。
盗賊ヨランは今、旅の途上にある。
目指しているのは、ヒスフェル聖国だった。
そして、ヨランの伴としてエイミノア・ラザンが同道している。
「もう少 ....
「なんだと? お前は虹の魔法石を盗めるというのか?」
リグナロスは気色ばんだ。それに対して、ヨランは即答する。
「可能でしょう。わたしが虹色の魔法石を盗み出しても良いのですが……」
何か訳ありの ....
どんなことにも耐えられる力があるじゃないか!
と言っていた僕の心は
一回の入院で折れました
耐えられるわけあるかいや
人には耐えられない痛みがある
あとは養生あるのみ
僕そういうの ....
逸脱した想像力でかろうじていきているのかもしれない
人生にはときどき小さな推敲が必要なのかもしれない
戦いを降りた人間はミニマムのエネルギーで生命を維持する
だから村上春樹の海辺のカ ....
ノイズまじりの、
奇妙な音の群れ が内耳を通過し、
撹拌 しながら襞を、 這い回る。
声にならない
壁の向こう側 壊れた楽器たち ....
咲きすぎておもたい頭を擡げている紫陽花。ばらはとっくに咲き終えて、さっぱりと刈り込まれ、薬を撒かれる。陽をうけて広がってゆくマリーゴールド、日々草、トレニア。階段を降れば日本庭園の水場に睡蓮が浮んで、 ....
分かってるな? 奴らに取っちゃ俺たちは食料でしかない。いやそもそも食料という概念など奴らは持たない。俺たちは奴らの身体システムのオートマティックな衝動に取っての同化対象物・包摂対象物でしかない。奴らは ....
映画を観に行くとパンフレットを買う。パンフレットを買うために映画を観に行くこともある。小さい頃に家族で映画を観に行くと親が買い与えてくれていた名残りだと思う。今時パンフレット? お金もったいないじゃん ....
うちの猫と意思の疎通がなくて難渋している
トイレのそとにそそうはするしダイニングのテーブルで爪をとぐ
妻と意思の疎通がなくて難渋している
彼女にはトーマスマンの魔の山のような療養所が必要だ
....
キリがない欲望に
つきうごかされて
私は生きていくよ
ぶざまであっても
いのちだいじに
{引用=※五行歌とは、「五行で書く」ことだけがルールの、新しい詩歌です。}
二〇二〇年十一月一日 「{ルビ生贄=いけにえ}の王」
『年間SF傑作選3』の6作目は、ポール・アンダースンの「{ルビ生贄=いけにえ}の王」アメリカ人側の宇宙飛行士が生き残り、敵側に捕まった。 ....
からだのかたいわたしには瞑想の才能もないようで 腹式呼吸と胸式呼吸のちがいもつかめず
窓ガラスから射し込む光がなんにでもなれるというわたしのからだをぼんやりとさす
かたちを変えから ....
昨日いつもの爺ちゃんにあった
知り合いでもなくても知り合いみたいな人だが
やがて僕もこういう素敵な爺ちゃんになってゆきたいと
僕は自分の歴史しかわからないし
時々前後も混乱するのだが
....
人は直線ではない
多次元曲線でも証明できない
存在は無と背中合わせの実存
人は根源では人を識ることはできない
皆さんご存知のように、人類はバニーガールとそうでない人類とに分けられる。そうでない人類も時間をかけて徐々にバニーガールになっていく。それは老若男女を問わない。まあ男女を問わないってのは、これからの人間 ....
「そして、次々にその位相を変えていく」リグナロスは言葉を継ぐ。
「それが虹の結界だ。どんな魔導士でも、この結界は破れない」
リグナロスはため息をついた。ヨランは意外だ、という表情をする。
「それ ....
「時間変化する結界」と聞いただけでは、ヨランには何のことか
分からなかった。ヨランは再び、リグナロスに問いかける。
「つまりは、何が問題だと言うのでしょう?」
「お前はこの監獄に入ってきた時、何 ....
満天の星空が、朝靄の中に静かに消えてゆく。
鳥達はいつもの歌を歌い、季節の花達はその手を広げている。
誰かの魂と私の魂が共鳴しては離れてゆく。
キャンバスの淡い白色は歩き始めた娘 ....
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